適切なマーケティングプロセスとは?事例で学ぶ設計方法
マーケティングを自社で始めようと思ったとき、何から手をつければいいのか迷ったことはありませんか?
そんなときに役立つのが「マーケティングプロセス」です。この手順をもとに調査や分析を進めれば、適切なマーケティング戦略や施策が見えてきます。
この記事では、マーケティングプロセスの具体的な流れをわかりやすく解説します。
また、BtoBビジネスの場合、一般的なBtoCビジネスとは異なる独自のプロセスが必要です。記事の後半では、BtoBビジネスに特化したマーケティングプロセスについても詳しくご紹介します。
マーケティング戦略や施策にお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください!
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マーケティングプロセスとは?
マーケティングプロセスとは、マーケティング戦略を立案し実行するまでの一連のプロセスのことです。市場調査を行い、自社商品やサービスの位置づけを検討、価格やプロモーション方法選定を行います。
マーケティングプロセスは、主に戦略立案プロセスと戦術的プロセスのフェーズに分かれています。
- 戦略立案:市場分析/セグメンテーション(市場細分化)
- 戦術:ターゲティング/ポジショニング/マーケティングミックス/実行と評価
まず戦略立案プロセスで商品を投入する先を調査し、戦術プロセスでは調査した市場の中でどのように勝ち抜いていくか設計していきます。
マーケティングプロセスの流れ【基本編】
まずはマーケティングプロセスの全体の流れをざっくり把握しましょう。
- 市場分析
- セグメンテーション
- ターゲティング
- ポジショニング
- マーケティングミックス
- 実行と評価
1つ目は「市場分析」です。ここでは自社の現状を調査し、強みを洗い出していきます。
次に「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の3つのステップ、いわゆるSTP分析を進めます。競合が多い中で、自社がどんな商品やサービスを提供し、どのように顧客企業にアプローチすべきかを明確にします。マーケティング戦略を立てるフェーズです。
その後は、「マーケティングミックス」で戦略を実現するための具体的な施策を検討します。
最後に「実行と評価」では、PDCAサイクルを回しながら施策を実行し、評価・改善を重ねていきます。
では、これらのステップを順に具体的に見ていきましょう!
マーケティングプロセス①市場分析
市場分析を行うことで、自社の立ち位置を業界内外からしっかり把握することで、製品やサービスの強みを見つけられます。
市場分析には、フレームワークを活用するのがおすすめです。特に「SWOT分析」「PEST分析」「3C分析」はよく使われる手法です。これらを1つだけでなく組み合わせて使うことで、市場をより深く理解でき、自社に最適な戦略を見つけやすくなります。
PEST分析
PEST分析は、Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)という4つの視点から外部環境を調査します。現在から将来にかけて自社にどのような影響があるかを把握・予測する手法です。外部環境の変化を幅広く理解したい場合に役立ちます。
関連記事:PEST分析の実践方法やポイントは?BtoB事業別の事例やフレームワークテンプレも紹介
3C分析
3C分析は、外部環境として、Customer(顧客)・Competitor(競合)、内部環境としてCompany(自社)の3つの観点から市場を調査します。外部環境と内部環境を同時に分析できるシンプルなフレームワークで、初心者にも取り組みやすい点が特徴です。
もし調査に割けるリソースが限られている場合は、3C分析だけでも取り組んでいただくのがおすすめです。
関連記事:3C分析とは?すぐに実践できる手順を下準備から解説
SWOT分析
SWOT分析は、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)という4つの視点から自社を取り巻く社会・市場を分析します。
さらに、各要素を掛け合わせる「クロスSWOT分析」を行うことで、具体的な戦略を立案することが可能です。たとえば、強みを活かして機会を最大化する戦略や、弱みを克服し脅威に対処する施策を検討できます。
関連記事:【図解&テンプレ付き】SWOT分析とは? 時代遅れにならないやり方を事例を踏まえ解説
マーケティングプロセス②セグメンテーション(STP分析)
セグメンテーションとは、自社商品やサービスの対象となる市場に存在する顧客を、ニーズや特性等に応じて細分化することです。狙うべき市場を選定するための基礎固めになります。
一般的な切り口としては、行動変数・人口動態変数・地理的変数・心理的変数があります。
行動変数 (ビヘイビア変数) |
商品・サービス利用の経験有無、利用頻度や回数別に分ける 商品・サービス購入に至るまでのプロセス別に分ける 商品・サービス購入時のベネフィット別に分ける |
人口動態変数 (デモグラフィック変数) |
企業の人数、資本金、売上規模別に分ける 企業の担当者・購買者の年齢や役職、決済権の有無別に分ける |
地理的変数 (ジオグラフィック変数) |
企業の本拠地、店舗がある地域別に分ける |
心理的変数 (サイコグラフィック変数) |
商品・サービス購入時の購買動機別に分ける 顧客企業が抱えている悩み別に分ける 企業側の購買方針別に分ける |
関連記事:顧客セグメントとは?マーケティング成功に欠かせない分類の方法やポイント
マーケティングプロセス③ターゲティング(STP分析)
ターゲティングとは、セグメンテーションした市場の中で、どの市場に絞るべきなのかを定めることです。
例えば「東京都に本社がある100名以上営業在籍する企業」「1か月以内にサービスに関する問い合わせがあった」「堅い社風である」などです。
市場を選定する際には、細分化された市場の中から、「規模が大きく、成長が期待できる分野」であることに加え、「競合が少なく、顧客企業のニーズが高い」セグメントを見極めることが重要になります。
マーケティングプロセス④ポジショニング(STP分析)
ポジショニングとは、競合他社の中で自社がどのような立ち位置をとるべきかを決めることを指します。見込み顧客に、自社の商品やサービスが他社とどう違うのかをわかりやすく伝えるとともに、競合よりも優れている点をしっかり示すことが大切です。
そのためには、競合の状況を調査し、「ポジショニングマップ」を作成して、自社の商品やサービスの位置づけを明確にしましょう。ポジショニングマップを作成することで、自社商品やサービスの訴求していくべき強みがはっきりと見えてきます。
関連記事:STP分析とは?BtoBでの分析方法と便利なワークシート
マーケティングプロセス⑤マーケティングミックス
マーケティングミックスとは、実行する戦略を練る際に使用するフレームワークのことです。マーケティング施策の要素を組み合わせて行います。
BtoBのマーケティングミックスの代表的なフレームワークは「4P分析」と「4C分析」です。
自社商品やサービスに対して4P分析を行い、さらに顧客視点の4C分析も加えることで、マーケティング戦略を立てた上で、具体的にどのような施策でお客様へアプローチをするのかを考えることができます。
関連記事:マーケティングミックスとは?実例から活用方法までゼロから解説
4P分析
4P分析とは、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販促)観点の分析です。
どのような特徴の製品を、いくらに設定し、どのように流通させ、どのような販促を行うか、という観点で戦略を組み立てます。
関連記事:4P分析とは?進め方とBtoBでの業態別の事例を解説
4C分析
4C分析とは、Customer Value(提供価値)・Cost(顧客が支払うコスト)・Convenience(入手難易度・利便性)・Communication(顧客とのコミュニケーション)の観点での分析です。
自社商品やサービスを顧客サイドからの目線で分析することで、より顧客への浸透力が上がります。顧客目線の市場分析でニーズを把握することで、顧客満足度が向上します。
関連記事:4C分析とは? 4P分析・3C分析・SWOT分析との違い
KPIツリー
施策が決まったら、KPIツリーを作成しましょう。
KPIとは、事業目標をクリアするために設定する重要業績評価指標です。
最終ゴールであるKGI(重要目標達成指標)を明確に設定しておき、そのためのプロセスに対して評価指標を設定することで定量的な評価が可能になります。
KPIを決めるためのワークシートをご用意しております。
使い方とワークシートはこちら!
→自社のマーケティング目標を決められるKPI設定シート
関連記事:BtoBマーケティングにおける「KPI設計」とは?フェーズごとの具体例を紹介
マーケティングプロセス⑥実行と評価
ここまでのマーケティングプロセスで設定した施策を、実行して評価するプロセスです。実際に設計した戦略を実行してみて、良し悪しを判断するのではなく、プロセス⑤で設計したKPIツリーに基づいて施策を評価しましょう。
プロセスの中での課題や問題点を発見し、改善策をうっていきます。
マーケティングプロセスにあてはめて評価することで、課題や問題点の適切な把握が可能です。KPIからPDCAをまわすことで、市場把握および施策の最適化が行えます。
「R-STP-MM-I-C」の観点から考えるマーケティングプロセス
マーケティングプロセスには、上記で解説した6つに分けるやり方以外にフィリップ・コトラー氏が提唱した「R-STP-MM-I-C」という5つに分ける手法もあります。
- プロセス① R:Research 調査・分析
- プロセス② STP:セグメンテーション+ターゲティング+ポジショニング
- プロセス③ MM:マーケティングミックス
- プロセス④ I:Implementation 実行
- プロセス⑤ C:Control 管理
プロセス②までが戦略プロセス、③以降が戦術プロセスです。
STPでは、マーケティングの要となる「自社が」「誰に対し」「どのような価値を」「どうやって提供するか」が明確になります。マーケティング活動にあまりリソースを割けない組織や中小企業にとって、STPは非常に重要な役割を果たします。最小限の労力で成果の最大化に繋がるからです。
そして、マーケティングミックスで実行手法の組み立てを行い、その後に実行および評価を実施します。
つまり、「R-STP-MM-I-C」は先に解説した基本の6ステップとやっていることは同じです。
この最後のステップをImplementationとControlのふたつに分けることで、マーケティングで注力すべき評価と次につなげる改善へフォーカスしているといえます。
BtoBとBtoCのマーケティングプロセスの違い
BtoBビジネスの場合も、基本的なマーケティングプロセスは同じ流れです。しかしBtoBビジネスの場合は、購買プロセスがBtoCビジネスと異なるという点に注意しましょう。
BtoBビジネスとBtoCビジネスの違い
BtoBビジネスとBtoCビジネスの違いは、上記の表の通りです。
BtoBビジネスは、企業が顧客となるため費用対効果や企業の信頼性など多くのことを考慮しなければならず、しかも購入までの手続きも多くあり、時間がかかります。
BtoCビジネスは、消費者個人が顧客となるため、感情や気分で購入することもあり、すぐに購入につながります。
関連記事:【5分でわかる】BtoBビジネスとは?BtoCとの違いをわかりやすく解説
BtoBビジネスのマーケティングプロセスの注意点
BtoBビジネスは、次のようなステップがあり、購入までのリードタイムが長くなります。
- 集客から見込み顧客を獲得
- 見込み顧客をナーチャリング
- 商談
さらに担当者と決裁権保持者が異なる場合や、検討から承認までに複数の段階を踏む必要がある場合が大半です。
そのためマーケティングプロセスの中に、「購入プロセス」を加味しなくてはなりません。
BtoBビジネスのマーケティングプロセスのコツ
分析では、顧客を個人ではなく「企業」でとらえ、業界全体を把握する必要があります。
販促・広告では、イベントやセミナーの開催も効果的な手段です。「集客」「見込み顧客獲得」「ナーチャリング」「商談」のそれぞれに対してKPIを設定すれば、より適切な評価判断が可能になるでしょう。
一方、詳細なKPIを追うことは、人的負担に直結します。BtoBのマーケティングを実行する上で人的コストを割けない場合、MAツールやSFAツールを活用して、業務の自動化に取り組むのもひとつの手段です。
戦略と戦術を明確化することで、マーケティングツールの有効度が上がってくるでしょう。
関連記事:BtoBマーケティングとは?マーケターが教えるBtoCとの違いと成功事例
マーケティングプロセスを例を交えて解説【実践編】
「マーケティングプロセスの基本は分かったけれど、実際の現場でどう進めればいいのか分からない」という方のために、架空の企業を例にとりながら、一連の流れを具体的に解説します。
ここでは、BtoB向けの教育研修サービスを提供する企業を例として取り上げます。
1. 市場分析
3C分析を行い、自社の現状、競合他社、ターゲット市場のニーズを調査しましょう。
(合わせてPEST分析やSWOT分析を行っていただくとより解像度をあげられるので、ベターですが、例では3C分析のみで進めます)
自社の現状分析(Company:自社) DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのスキル研修を提供している。 既存顧客は中小企業が多い。 強みはオンラインで受講可能な柔軟性と、実務に直結するカリキュラム。オンライン対応なので他社よりも安価で提供可能。しかし、認知度が低く、受講者数が伸び悩んでいる。 市場環境の把握(Customer:顧客・市場) DXが進む中、企業では社員のデジタルスキル向上が重要課題となっている。 競合分析(Competitor:競合) 一方で、無料または低価格のオンライン学習プラットフォームも人気を集めている。ただし、口コミを見ると、質はいまいちのようだ。 |
2. セグメンテーション(STP分析)
「1. 市場分析」で調査した市場をいくつかのグループに分け、それぞれの特徴を把握しましょう。
ここでは、企業規模とDX推進度、予算感でセグメント分けしました。
Aセグメント Bセグメント 中堅企業〜大手企業、DX専門のチームがあり、専門的なスキル研修が必要。予算は確保できている。 Cセグメント スタートアップ、初期段階の社員教育に力を入れたい。予算は企業によって幅がある。 |
3. ターゲティング(STP分析)
自社が最も効果的にアプローチできるセグメントを選定しましょう。
「1. 市場分析」で明確にした自社サービスの強みが響きそうなターゲットを見つけます。
ターゲット例
中小企業(Aセグメント)をメインターゲットに設定。このセグメントはDX推進に悩んでおり、コスト効率の良いオンライン研修サービスを求めていると考えられる。
|
4. ポジショニング(STP分析)
ターゲット顧客に対し、自社の価値をどのように伝えるかを明確化します。
競合他社の状況と比較しつつ、自社の良さが際立つ「強み」を見つけましょう。
ポジショニング戦略 「中小企業のDX推進を支援するオンライン研修サービス」かつ「実務に直結するカリキュラムを提供している」という点を打ち出し、差別化を図る。 |
5. マーケティングミックス
4P分析(企業視点)と4C分析(顧客視点)を組み合わせ、具体的な施策を検討します。施策が決まったら、それそれの目標を立てていきます。
4P分析(企業視点) Product(製品) Price(価格) Place(流通) Promotion(販促) |
4C分析(顧客視点)
Customer Value(提供価値) Cost(顧客が支払うコスト) Convenience(利便性) Communication(顧客とのコミュニケーション) |
KPIとKGI KGIを売り上げ目標1,200万円/月として、受注数、案件化数、商談化数、リード数、Webサイトの訪問数をKPIとして設定。 |
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6.実行と評価
PDCAサイクルを回しながら施策を実行し、改善を図ります。ここでは例としてSEO施策についての実行・評価についてやってみます。
実行 施策内容 ターゲットキーワード(例: 「中小企業 DX 研修」「DX オンライン研修」)での検索順位上位を目指す。月5本の記事新規作成またはリライトし、検索結果での順位をモニタリングしながら適宜修正を行う。 目標 月のセッション数4,150、リード数83件(CV率2%) |
評価 結果 改善 |
このように、最後には施策ごとに「6.実行と評価」を実施し、改善していきます。また、戦略や目標自体が誤っていたということもありますので、施策全体を見ることも重要です。
マーケティングプロセス活用による事例
マーケティングプロセスの活用事例も見ていきましょう。
SchoolDude社
米国、カナダ、ヨーロッパ、中東、オーストラリアの6,000以上もの教育機関向けに管理機能ソリューションを導入しているSchool Dude社。細かなセグメンテーションを元に高等教育機関へ独自のコンテンツを展開します。
MAツールを活用し、ターゲット別に応じたコンテンツを表示することで、ウェビナーや年次ユーザーカンファレンス獲得に成功しました。誰に、どのような価値を、どうやって届けるのかを明確化したことで、成果に繋がった事例です。
参照元:https://jp.marketo.com/content/marketing-strategy.html
株式会社OREC
株式会社ORECは、年商136億円を誇る農業機械メーカーです。農家の不満や細かなニーズに寄り添う超顧客志向により、国内シェア40%超を実現しました。
製品の展示だけでなく、農業や食に関するイベントやセミナー・交流会を開催し、徹底的に顧客のニーズを把握。市場を調査し、ニーズに合致した商品開発・適切な手段で提供を行うことで成功した事例です。
参照元:https://www.tanabekeiei.co.jp/t/fcc_magazine/2019/post-421.html
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