導入事例の書き方は? 効果とは? よくある10の疑問
「導入事例」は、BtoBのサイトに欠かせないコンテンツです。商品・サービスを導入した顧客が活用している様子を紹介し、サイトを見てくださっている方の検討度合いを引き上げます。
ただ、はじめて導入事例を作る際は、何から始めていいか迷うことも多いはず。
「うちのサイトでも導入事例を作りたい」と思われている担当者の方のために、よくある疑問にお答えします。
解説をするのはこの人!
株式会社ベーシック SaaS事業部 マーケティング部 マネージャー
河村 和紀(かわむら かずき)新卒で入った外資系人材紹介会社から、創業期の株式会社ベーシックに転職。サイト運用・商品企画・新規事業立ち上げなどに幅広く携わるなか、イチから手掛けたイベントが、累計来場者数70,000人を超える日本最大級の規模に成長。社長のムチャ振りで担当することになったBtoBセミナーは、今や開催200回以上を数え、気が付けば月に何度も登壇する日々を送っている。
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導入事例とは?
導入事例とは、商品・サービスを導入した顧客が活用している様子を紹介するものです。商品・サービスを導入しようか迷っている見込み顧客にとって、有効なコンテンツとなります。
BtoBサイトで最も読まれているコンテンツは「機能紹介」と「導入事例」と言われます。実際に、ferret Oneのサイトでもよく見られているページは「機能紹介」「導入事例」「料金・プラン」のページです。
導入事例には、どんな効果があるの?
導入事例の効果は、大きく2つあります。
- 具体的なイメージがしやすくなること
- 信頼感が増すこと
商品・サービスの購入を検討している顧客は、「自社の課題・ニーズに合っているか」を判断するための情報を求めています。導入事例で紹介される実際のユーザーの声は、客観的で信頼性の高い情報として受け入れやすいのです。
これらの効果は、2つの立場の人へ有効に働きます。
A.現場担当者(サービスを探し、自らサイトを訪れている)
B.Aの上司
Aの現場担当者が導入事例を見ることで「問い合わせ」へのモチベーションが上がり、CVRの向上につながることが期待できます。
またBtoBビジネスの場合、商品・サービスを導入する前に必ず「稟議」が必要です。その際には、上司であるBさんへの説得材料として、導入事例を提示してもらえる可能性が高いです。結果として、検討期間の短縮・受注率UPにもつながります。
どんな導入事例をそろえればいい?
ターゲット顧客に似た「業界、業種、規模感(社員数)、課題感」の企業をそろえていきましょう。
ネームバリューのある大手企業が導入している場合、自社の導入事例として紹介することでサービスの信頼感が増します。ただし、導入事例で紹介されているのが大手企業ばかりだと「この商品・サービスは大手向きなんだ、中小企業は対象外なんだ」と思われてしまう可能性もあります。
ブランディングとしての大手企業の事例と、ターゲット企業がイメージしやすい事例をバランスよく掲載しましょう。
導入事例として掲載するのに、最適な顧客とは?
先ほどの質問では「バランスが大事」とお伝えしました。その中でも、導入事例として掲載するのに最適な事例とは、どんなものでしょうか?
最も理想的なのは、ターゲット企業の中で「業界No.1と言われる、企業の成功事例」です。
導入事例と言われるものは、2パターンあります。
- 導入した直後の「導入した理由」を紹介するもの
- 導入してしばらく経過した後の「導入した成果」を紹介するもの
成功事例は2のパターンに当たります。
1のパターンでも、「具体的なイメージがしやすくなる」「信頼感が増す」といった導入事例の効果は期待できますが、2の方が説得力は上です。
2のパターンは、成果が出てからの掲載になるので少し時間はかかるかもしれませんが、ターゲット企業にとって最も魅力的な事例になるのは間違いないので、ピカピカに磨きこんだ内容で掲載したいですね。
導入事例のよくある構成とは?
導入事例の構成パターンは、ざっくりと分けると
- 決まった質問で構成されるテンプレート形式のもの
- 自由なインタビュー形式のもの
があります。
ferret Oneとしては、まずはテンプレート形式での作成をオススメします。一番の理由は、ユーザーが複数の事例を見たときに「見比べやすい」からです。導入事例は、知りたい情報が分かりやすく整理されていることが最も大切です。
また、インタビュー形式はインタビュー対象の知名度・そして何よりライターの力量によって、コンテンツの出来栄えが左右されます。そのため、事例作成になれるまではテンプレートに沿って作成しましょう。
ferret Oneでは、以下のフォーマットで事例を構成しています。
1.導入した直後の「導入した理由」を紹介するもの
- 企業情報・企業ロゴ
- 取材対象者:氏名・所属部署・役職・役割など
- ferret One導入前の課題
- ferret One導入の決め手(機能、特長、コスト、対応など)
- ferret Oneを使ってやりたいこと
2.導入してしばらく経過した後の「導入した成果」を紹介するもの
- 企業情報・企業ロゴ
- 取材対象者:氏名・所属部署・役職・役割など
- ferret One導入前の課題
- ferret One導入の決め手
- 導入後に得られた効果(Before/After で○%の工数削減など、数字も交えて)
- 導入時〜現在に至るまでの使用感
- 今後の方針・目標(他部門への展開、機能拡張など)
Before/Afterは、「よくなった」といった曖昧な表現ではなく、出来る限り数字で結果を見せるようにしましょう。
導入事例の一覧ページはどんな構成がいい?
導入事例記事をまとめる「導入事例一覧ページ」にも、工夫すべきポイントがあります。
事例の数が多い場合は、目当ての事例がすぐに見つけられるようにフィルター機能が必要です。業種・業態・規模感・課題などで検索できるとよいでしょう。
ですが、事例がそれほど多くない場合は「課題別グループ」などに分けて見せるのがオススメです。なぜなら、検索してもヒットしない可能性が高く、その際には「自分が知りたい事例はない」と判断され、ユーザーのページ離脱に繋がるからです。
ポイントは、初めて導入事例一覧を訪れたユーザーが、自社に近い事例を見つけやすい構成かどうかです。
導入事例を依頼するときの方法は?
導入事例の掲載を依頼する場合、こちらが期待すること、聞きたい内容を明確に伝えることが重要です。
実際に、ferret Oneでどのような依頼をしているのか、メールのサンプル文面をご紹介します。
〇〇株式会社
△△様
お世話になっております。ferret Oneの◇◇と申します。
ferret Oneをご利用いただきありがとうございます。
このたび、弊社のサービスサイトにて、貴社の事例を掲載させていただきたく、ご連絡いたしました。
下記の内容でお話をお聞かせいただきたく思っております。
どうぞよろしくお願い申しあげます。
■ 掲載場所
ferret Oneサービスサイト 導入事例ページ
https://ferret-one.com/cases
その他、ブログ、ランディングページなどに掲載させていただく場合もございます。
■ 内容
・貴社の事業内容とご担当者の役割について
・ferret One導入前の課題(Webサイト制作の課題・マーケティングの課題)
・ferret One導入の決め手
・ferret Oneを使ってやりたいこと
■取材チーム
〇〇、〇〇の〇名でお伺いいたします。
■日時
以下より、ご都合の良い日程をお知らせいただければ幸いです
●月●日(●)●時~●時
●月●日(●)●時~●時
●月●日(●)●時~●時
●月●日(●)●時~●時
※予定時間は1時間
■対談場所
御社にお伺いいたします。
※当日は、インタビュー中のお写真を撮らせていただきます。
何卒よろしくお願いいたします。
写真撮影を想定していないこともあるので、撮影する場合は事前にお伝えしておきましょう。
導入事例はどんなときに見られる?
導入事例が見られるのは、商品・サービスの検討後期が一般的です。ホワイトペーパー・ノウハウ集をダウンロードして興味を持った顧客が、その後に事例を見てさらに検討度合いを高め、サービス資料請求・お問い合わせに至るようなパターンです。
また、お問い合わせをした担当者が稟議を上げるにあたって、上司から「うちと同じ業界の企業って導入しているの?」と聞かれることはよくあります。このタイミングで、上司への説得材料として導入事例が紹介されるパターンも多いです。
導入事例を作ったら、どう活用すればいい?
導入事例を作ったあとの活用方法は
- サイトに掲載
- メルマガで配信
- SNSで広告配信
- プレスリリースで配信
- 営業資料に掲載
など、さまざまです。
サイトに掲載
サイトに訪れた見込み顧客が事例を目にすることで、検討度合いを上げることが期待できます。ただし、サイトに掲載しても、導入事例単体ではSEOに強くないので、オーガニックでの流入増加は期待できません。多くの見込み顧客に見てもらえるように、サイト以外の媒体へ横展開をしていきましょう。
メルマガで配信
導入事例のメール配信は一般的な取り組みのひとつですが、実は「お問い合わせ」といったCV自体はあまり期待できません。
なぜなら
- 事例ページは、お問い合わせを促すLPのような構成にはなっていないので訴求力が弱い
- 事例に反応するのは検討後期の人なので、絶対数が少ない
からです。
絶対数が少ないところに、訴求力が弱いコンテンツを配信しているので、CV自体は期待できませんが、「既存リードの掘り起こしシグナル」としては非常に有効です。
具体的には、CVの手前の「導入事例を読んだ」というアクションをMAツールで拾い、インサイドセールスがコールするような体制が組めるのであれば、有望な顧客を見つけ出せる可能性はあります。
SNSで広告配信
事例に反応するのは検討後期の人で絶対数が少ないため、広告配信してもCPAが高くなりがちです。
過去、ferret Oneでの失敗談があります。
事例集をダウンロードさせる広告を回していましたが、他のホワイトペーパーと比べてCPAが3倍、にもかかわらずアポ率はホワイトペーパーと同程度でした。ホワイトペーパーと事例集を同じターゲットに向けて出していたので、獲得しにくい事例集の方がCPAが高いのは、今考えると当然ですね。広告を出すのであれば、検討段階が進んだ人に絞って配信するのがよいでしょう。
他社では、「有名企業の事例」をホワイトペーパー代わりにして広告を回している例もあります。
プレスリリースで配信
有名企業が導入した場合は、プレスリリースとしても配信しましょう。同じような大企業リードを取れる可能性があります。
営業資料に掲載
検討段階が進んた人向け、という意味では営業資料に掲載する、営業担当から紹介してもらうのが最も刺さりやすいルートです。
導入事例はどんどん増やしたほうがいいの?
導入事例は、数が増えるほどCV数が増えるものでもありません。
- 具体的なイメージがしやすくなること
- 信頼感が増すこと
に寄与していれば、数が少なくてもその目的は果たせています。
導入事例をどんどん増やしていくよりは、まずは一旦「課題別グループ」に分けられる程度の数を揃え、大手企業が導入した場合や、ペルソナに近い企業が導入した場合に事例を増やしていく、というやり方がよいでしょう。