
【イベントレポート】追加予算を投下する「攻め」のタイミングはいつ?選ばれ続ける存在づくりで実現する脱・新規リード依存
BtoB Marketing Academy Conference 2025「リード獲得の選択と集中」で視聴者に好評だったセッションのイベントレポートをお送りします!
本記事では「選ばれ続ける存在づくり」をテーマにした、エキサイト株式会社 大熊氏とナイル株式会社 岸氏によるパネルディスカッションの内容を、当日モデレーターを担当したferret Oneマーケティング部マネージャー見山よりお届けします。
お好きな時間に視聴いただけるオンデマンド配信も行っています。お申込みを逃してしまったけどこれから見たいという方はぜひお気軽にご視聴ください!
登壇者プロフィール

エキサイト株式会社 執行役員
大熊 勇樹 氏
デザイン会社、ベンチャー企業にて主に新規事業部門での役員経験を経て、2021年4月エキサイトに入社し、執行役員就任。
入社後にSaaS/DX事業部を立ち上げ、2年で4プロダクトリリースを行う。事業責任者を兼務している【FanGrowth(ファングロース)】では、現在リリース2年で1400社のマーケターコミュニティを構築し、組織拡大をしている。

ナイル株式会社 執行役員
岸 穂太佳 氏
大学を卒業後、2014年にナイル株式会社に新卒として入社。Webマーケティングのコンサルタントを経て営業職に異動。営業マネージャーに昇格しコロナ禍でキャンセルが続く中立て直しを行ない新規受注でYoY150%の実際をあげる。
その後、セールスだけでなくマーケティング組織の統括も行ない2022年に執行役員に就任。就任後、事業を30%成長させ50名の組織を100名まで拡大。
まず本編の前に...


セッションの本編に入る前に、「KPIも施策も新規リード頼みになってしまっている...と悩んでいる方」と視聴者へ反応を求めたところ、泣けるスタンプが多数寄せられていました。
従来のリード獲得手法は限界を迎えているのか?
多くのBtoB企業が直面するマーケティング3つの課題
大熊氏は「結構今、マーケ大変だなって思ってます」と率直に切り出しました。
自社のインハウスマーケも見ているという大熊氏が提示したのは、3つの主要課題です。
- CPA(顧客獲得単価)の高騰
- ハウスリストはあるが商談数に限界がある
- マーケティングと営業の分業による弊害
「30,000件のハウスリストがあっても、商談のトップラインはハウスリストの伸びと比例して伸びていかない」
岸氏も即座に反応します。
「伸びないですね。うちもそうです」
リストを増やしても、ISを増員しても、獲得効率は上がらない
――多くの企業が直面する現実が、ここで共有されました。
コンテンツ飽和とAIの到来
Webで見かけるコンテンツは、クリエイティブも素敵で内容も面白そうだが、「どっかで見たことあるような系のコンテンツ」が増えている。
さらに、情報収集の際に検索ではなくAIを使うケースが増えており、従来のリード獲得施策がクリックされなくなってきているといいます。
コンテンツを増やしてもクリックがされない...マーケターとしては辛い現実です。
大熊氏は続けます。
「これはいわゆるカスタマージャーニーの簡易版なんですが、左側の赤枠内"認知"と"理解"のところに課題が強くなっている感じですよね」

一方、ナイルの岸氏は、SEOへのAI影響についてデータを示します。
「従来型のSEO、特にknowクエリでの流入は減少しています。しかし、検索エンジンがオワコンというわけではありません」
岸氏が示したデータによると、AIで情報収集した後、裏付け情報や詳細を調べる際には依然として検索エンジンが使われています。

つまり今後対策すべきは、独自の情報、正確な情報、自社の知見をどれだけ出せるかであると、大熊氏と岸氏は盛り上がります。

実際、わたしも情報収集するときは最初は広くAIに聞いて、ある程度まで情報を絞ってからピンポイントでサイトに一次情報を見に行くようになりました。
とはいえ、あくまでこれは比較検討層になってからの話なので、先ほど課題にあがっていた"認知"と"理解"の部分はどう乗り越えていけば...
パルス型カスタマージャーニーへの対応が必須
大熊氏が提示したのが「パルス型」という考え方です。
顧客は直線的に商談まで進むのではなく、一度興味を持った後に谷(=離脱期間)が来る。
その後、予算確保、課題の顕在化など社内でのコンペリングイベントが発生したときに再度検索して戻ってくる。――このカスタマージャーニーへの対応がポイントになります。

Q. | お客さん側は商談するつもりなかったとしても、「一旦商談してみてもいいかな」みたいな行動変容を起こすにはどんなことできますか |
|---|---|
A. | 岸氏:潜在的にこれから相談したいけどまだいいタイミングなのかっていう風に悩まれてるお客さんも結構多いかなと思ってて。うちは無料相談などの切り口で、入り口のハードルを下げることもしています。ただ私たちもどこまで受けるかっていうところは悩みますね、正直。 大熊氏:商談っていう言葉を使わずに時間を取りにいくことは、テクニカルな営業スキルとしてはあるかなと思っているのと、やっぱり事例コンテンツが強いですね。 |
営業と事前に連携して入口のハードルを下げに行く手法もあれば、事例コンテンツで態度変容を促すという手法。
一般的・汎用的な情報は調べればAIが教えてくれる。だからこそ、「人」や「生の事例」といった調べてもわからない情報の価値があがっているという会話で、セッションが深まっていきます。
続けて大熊氏は、顧客の購買行動を3つのパスに分類しました。
- ファストパス: 即決する顧客
- サクセスパス: 段階的に検討を進める顧客
- 迂回パス: 興味を持った後、一度離脱し、再度戻ってくる顧客

「今までのマーケティングは、基本的にサクセスパス前提で組まれているケースが多い。コンテンツをちゃんと当てていれば、ユーザーのファネルがどんどん上がっていくという、ちょっと幻想に近い形が増えている」
しかし実際には、迂回パスのユーザーが圧倒的に増えているのが現状で、ここがまさにパルス型のカスタマージャーニーへの変化が求められる背景です。
選ばれ続ける存在になるための具体的施策
2社特有の取り組み
エキサイトは、ウェビナー支援プラットフォーム「FanGrowth」を展開する中で、マーケター向けコミュニティ「FanGrowth Mate」を立ち上げました。現在、会員数は約1,400名に達しています。
ナイルでは、2023年からYouTubeチャンネルの運用を開始。25年11月現在では約340本の動画を公開しています。


実は、わたしも「FanGrowth Mate」のコミュニティユーザーかつ、YouTubeチャンネル「ナイルTV」の登録者として日々お世話になっています!
エキサイト:コミュニティという選択の背景
「先ほどご質問いただいた内容と付随するんですけれども」と大熊氏が切り出します。
エキサイトがコミュニティを立ち上げた背景には、先ほどのパルス型の顧客行動への対応がありました。
「売り込みじゃなく、FanGrowthのコンテンツは自然と見に行きたくなるよね!と思ってもらえるブランディングが取れるか。という考え方でやっています」

ここで視聴者の方から追加でご質問が。
Q. | コミュニティを検討しているんですが、担当者に属人化させない仕組みはありますか? |
|---|---|
A. | 大熊氏:僕も散々失敗してきてまして。そもそもコミュニティ運営自体が属人化しやすいですっていう話かと。 なので、自社だけで運用しないっていうのが非常に大きなポイントだと思っています。 ーー実際にコミュニティでは「アンバサダー制度」を導入。FanGrowthの契約有無に関わらず、発信力のあるマーケター約11名を他社から選定し、その方々が率先して投稿する環境を構築した。 |
ナイル:YouTubeで長期戦略
現在、ショート動画を含めて約340本の動画を公開しているナイル。重要なのは、短期の売上や問い合わせを目標にしていないという点です。

Youtubeを始めた理由として岸氏は「ユーザー目線に立ったときに、テキストだけじゃなく動画でわかりやすく伝えていくことが大事だと思った」と語ります。
「メディアが好きな方が、より深く知ってもらうためのタッチポイントとして作った。最初から売上をベースに作っていたわけではなかった」
まさに新規リード頼みとは逆行する、長期施策として捉えているようです。
最初のKPIは「本数」のみ
「最初はオンボーディングで、一定数ボリュームを入れないとワークしない。だからYouTube施策は長期で見ていました。最初の1年ぐらいは本当に本数しか見てなかったですね」
その後、ホワイトペーパーダウンロードなどを目標に設定していったものの、初期は気長に取り組む姿勢が重要でした。

コミュニティもYouTubeも、流行りだからと安易に考え単発にやるのではなく、まずは目的を明確に。そして継続することがセットで必要ですね。
経営視点:長期施策へのマーケティング投資判断
実際には、短期で成果を求められるBtoBマーケターも多いなか、短期では測れない価値を2人はどう評価しているのか気になります。
設計された長期施策に費用対効果は求めない
見山の投げかけに大熊氏の答えは明快でした。
「基本的には岸さんと全く同じで、コミュニティというものに対して費用対効果は求めてないんですよ。ただ、求めてないだけになると当然ROASは測れなくなるんで、投資判断って難しいじゃないですか」
そこで立てた仮説は、コミュニティをやることで既存の刈り取り型施策のすべてのパイプラインが向上するというものでした。
岸氏が述べた「より深く知ってもらうためのタッチポイント」というYouTubeの目的とも合致します。
続けて岸氏も、「売上は見ていなかったものの、製作コストは厳密に管理していました」と。
はじめは外注しながら制作プロセスを掴み、徐々に内製化して制作コストを下げ、継続できる運用体制・コストに最適化をしていったと述べた。
まず何から始めるべきか?両社が勧める第一歩

やりたくても、コミュニティもYouTubeもすぐできるものではない...
関係構築をするために、まずやるなら何がおすすめなのか?
率直に伺ってみました。
関係構築の第一歩は、ウェビナーがおすすめ
大熊氏の答えはシンプルでした。
「なるべくお金をかけずに、独自性が高いコンテンツを自社でどれだけ作れるかが大事。ウェビナーがいいと思っています。」
「コミュニティをいきなり作るのはハードルが高い。まず、ウェビナーを月に2回程度発信する。そこで反響が出たら、コンテンツをコミュニティ化していくのが良いのではないでしょうか」
岸氏も同様にウェビナーを推奨。特に共催ウェビナーが効果的と述べます。
「コストと集客が大変。共催先と一緒に組むことで、お互い協力して集客ができる」
ウェビナーは、自社サービスをPRする場ではなく、自分たちのノウハウを披露する場。
「今までは自分たちのノウハウが外に流れるのが嫌だという方も多かったが、今それが逆に機会創出になってくる時代」
まとめ:顧客に選ばれ続けるために必要なこと
セッションの最後、それぞれからサマリーが語られました。
エキサイト 大熊氏
- 迂回パスを前提にする
- 刈り取り型と育成型の両立
- AIとパーソナライズ化への対応
ナイル 岸氏
- AIの影響度を見極める
- 独自知見を惜しみなく出す
- プロダクト強化とセットで考える
AIの影響に一喜一憂するのではなく、「どんなコンテンツが顧客にとっての価値なのか」を考え、これまでも必要とされてきていたことをより緻密にやっていく必要があるかもしれませんね。
いますぐコミュニティやYouTubeができない方でも、自社の事例コンテンツを再定義して作る、ウェビナーでまずは顧客の反応を確認する、ユーザーファーストなWebサイトやブログにするなど、ぜひ取り組んでみてください。
編集後記

朝一番のセッションにも関わらず、登壇者だけでなく視聴者の皆さんが一体となって作り上げていく空気感が印象的でした。
「新規リード依存から脱却したい」という、多くの企業が抱える課題に対して、エキサイトとナイルの両社が示したのは、派手に見えて、実は地道な施策でした。
コミュニティ、YouTube、ユーザーファーストなWebサイト――どれも地道に、長期的に、顧客との関係性を築いていく取り組みです。
「最初1年ぐらいは本当に本数しか見てなかった」という岸氏の言葉。「コミュニティというものに対して費用対効果は求めてない」という大熊氏の言葉。
短期的な成果を求められるマーケティングの現場で、それでも長期的な視点を持ち続けることの難しさと、そして大切さを感じました。
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