BtoBの広告 出稿する際のポイントは?ターゲット設定や媒体の選び方を解説
BtoBの製品やサービスの広告を出稿する場合、まず考えなくてはいけないことは何でしょうか。
それは「どのような人・企業をターゲットとするか」と「広告の種類や媒体は何にするか」です。これらを検討する際の考え方と、広告形態や媒体の種類を解説します。
解説をするのはこの人!
小竹泰誠(こたけやすまさ)
株式会社ベーシック SaaS事業部 マーケティンググループ
大手インターネット広告代理店にて広告出稿の運用に携わる。2017年に株式会社ベーシックへ入社。ferret OneのWeb広告/ソーシャルメディア/メールなどのマーケティング施策の他、コンテンツライティング・編集まで幅広く行う。
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BtoBにおける広告出稿とは?ターゲット層の考え方とBtoCとの違い
小竹:広告出稿にあたって最初に考えなければならないことは、「どのような人・企業をターゲットにするか」。ここでは広告のターゲットを以下の3つの層に分けて考えます。
1.潜在層 = 課題は抱えているがはっきりと認識していない、または漠然とした悩みを抱えているがソリューションを知らない(探そうとしていない)層
例)日常生活でいえば…… → 「今日は暑いな…」(喉がカラカラなことに気付いていない)
2.準顕在層 = 課題を解決したいというニーズはあるが、具体的な解決策は明確になっていない層
例)日常生活でいえば…… → 「喉が渇いたから何か飲み物を飲もうかな」
3.顕在層 = 課題の解決方針が明確になっていて、具体的な製品やサービスの検討に入っている層
例)日常生活でいえば…… → 「冷たい炭酸飲料を飲もう!○○ソーダにしようかな」
BtoBとBtoCではターゲットに違いがある
小竹:BtoCでは、準顕在~顕在層をターゲットとした広告出稿が圧倒的に多く見られます。
上記の飲み物の例でいえば、潜在層をターゲットとした「そこのアナタ、もしかして喉が渇いていませんか?」というようなニーズを掘り起こす広告はあまり見られません。「後味スッキリ!夏限定○○ソーダ」のように商品をダイレクトにPRにするものがほとんどです。
一方BtoBでは、準顕在・顕在層だけではなく潜在層もターゲットとし、3つの層それぞれへ向けて広告を打っていきます。
喉が渇いたときには飲み物を飲めばよいということを知らない人はあまりいませんが、BtoBだと、例えば「自社の業務効率が上がらないときにどうしたらよいか」を知らない人(=潜在層)がたくさんいるからです。
そして、同じ製品・サービスの広告でも、顧客の検討度合いによってアプローチが変わります。以下で具体的に解説します。
「潜在」段階のターゲットへの訴求イメージ
<発信すべきメッセージ>
潜在層のターゲットへ向けては、漠然とした課題感に気付かせるためのメッセージを発信します。「なんだか不便だ」「なんだか上手くいかなくてモヤモヤする」という状態の人に対して、「それはこういう課題があるからではないですか?」と提示するイメージです。
<メッセージの例>
「マーケティング業務のオペレーションに追われて、重要なことに時間を使えてないのでは?」
「中途採用のコスト、年収の1/3は高いと思いませんか?」
<CTA>
ホワイトペーパーダウンロードなど、ハードルの低いもの。
<出稿対象>
記事広告やタイアップ広告など、幅広い層が目にするもの。
「準顕在」段階のターゲットへの訴求イメージ
<発信すべきメッセージ>
課題に対して「この方法で解決して現状をこのように変えたい!」という欲求を明確化させるメッセージを発信します。たとえば、「暑い」という課題を抱えたターゲットに対して「上着を脱ぐ」「冷たい飲み物を飲む」「冷房を入れる」などのさまざまなソリューションが考えられる中で、自社が提供するソリューションを課題解決の具体策として想起してもらうイメージです。
<メッセージの例>
「マーケティング業務を効率化して、重要な戦略立案や分析にもっと時間を使おう」
「ダイレクトリクルーティングを導入して、中途採用のコストを半分以下にしませんか?」
※太字部分がソリューションに当たります。
<CTA>
ホワイトペーパー、メルマガ登録、サービス資料請求など
<出稿対象>
記事広告・タイアップ広告、リスティング、ターゲットが見ている媒体の純広告枠
「顕在」段階のターゲットへの訴求イメージ
<発信すべきメッセージ>
特定の製品・サービスの訴求メッセージを発信します。課題に対するソリューションとしてバイネーム(名指し)で社名やサービス名を想起してもらうことが目的です。自社サービスを導入した場合のメリットを具体的な数字や客観的な評価を交えて提示します。
<メッセージの例>
「このマーケティング効率化ツールを使えば、戦略立案・改善に時間を使えて売上がアップします」
「ダイレクトリクルーティングなら▲▲!◯円で◯人の採用に成功した事例も!」
<CTA>
お問い合わせ、デモ、無料トライアル、サービス資料請求など。多少ハードルが高くてもこちらからのアクションが起こしやすく案件化につながりやすいものを設定します。
<出稿対象>
サービス比較メディア、指名ワードでのリスティングなど、検討段階に入っているターゲットが利用しそうなもの
BtoB企業の広告出稿先パターン
小竹:次に、BtoBの広告出向先のパターンをご紹介します。自社のサービス形態やターゲットの属性によって使い分けてください。
PPC広告(Pay Per Click広告)
PPC広告はPay Per Click広告の略で、1回クリックされるごとに広告料金が発生するWeb広告の総称です。クリックされた際に料金が発生するので、基本的に広告を掲載しただけでは料金がかかりません。1クリックごとの課金のほかに、表示された回数に応じた課金(CPM課金)を選べる場合もあります。
リスティング広告と混同されがちですが、PPC広告=リスティング広告ではなく、PPC広告の中の一形態がリスティング広告です。以降で詳しく説明します。
リスティング(検索連動型)広告
ユーザーが検索エンジンでキーワード検索をした際、キーワードに応じて検索結果に表示される広告です。キーワードによって1クリックごとの料金が異なり、人気のあるキーワードは高額になります。
ディスプレイ広告
Webサイトのサイドバーやオンライン記事の下部などに表示される広告です。検索結果ではなくコンテンツ自体に広告が表示されるのがリスティング広告との違いです。一度自社サイトから離脱したユーザーに対し、行動を追跡して他サイトで広告を表示させることで再訪を促すリターゲティング広告もここに含まれます。
(ディスプレイ広告の例)
SNS広告
FacebookやTwitter、InstagramなどのSNS上に表示される広告です。SNS内でのユーザーの興味・関心によって表示される広告が変化します。
(facebook広告の例)
記事広告・タイアップ広告
メディアと提携し、自社サービスの宣伝のために記事を制作、掲載してもらう広告です。記事中に必ず(Ad)や(広告)のように広告であることを明記する必要があります。ニュースサイトや情報系Webメディアなどのデジタル媒体でも、新聞や雑誌などのアナログ媒体でも、どちらでも利用できる手法です。
BtoBメディアの純広告枠
メディアが用意している広告欄に自社広告を掲載してもらう手法です。これもデジタル/アナログどちらでも利用できます。
交通広告
電車内の中吊り広告やラッピング車両など、交通媒体を利用した広告です。駅構内に掲載される広告も含みます。電車やバスに比べてタクシーは決裁権を持つ人物が利用する確率が高いので、タクシー後部座席の動画広告は決裁者の認知を獲得する手段として有効です。
BtoBの広告出稿先の選び方・考えるべきポイント
小竹:ここまで紹介してきただけでも、Webサイトや検索結果ページなどのデジタル媒体から新聞や雑誌などのアナログ媒体までさまざまな広告出稿先があります。自社の広告をどこに出したらよいか、どうやって選べばよいのでしょうか。
基本的にはターゲットに合わせて出稿先を選びますが、その際に考えるべきポイントは以下の2点です。
潜在・顕在・準顕在のどの段階にいるターゲットが多いか
冒頭でお伝えしたとおり、BtoBでは潜在・準顕在・顕在の各層へ向けて広告を展開します。自社サービスであれば、その中でどの段階にいるターゲットが多いのかを考えてみましょう。
- 新しい概念を扱っているのでまだ潜在的な課題に気付いていないターゲットが多いのか。
- 一般的にそこそこ課題が認知されていて、準顕在段階にいる人が多いのか。
- すでにある程度サービスの知名度があり、顕在段階にいる人が多いのか。
潜在層のターゲットが多い場合は、幅広い属性の人が目にする可能性にある媒体を選びます。潜在層は積極的に情報収集をしていないので、検索結果や情報サイトまでたどり着いていないことが多いからです。
逆に顕在層が多いならば、具体的な検討段階に入っているターゲットが集まりそうな広告出稿を優先します。サービス比較メディア、指名ワードでのリスティングなどです。
聞き取り調査でターゲットの情報接触スタイルを知る
効果がでる出稿先を効率的に選ぶためには、ターゲットを知ることが重要です。そのためにはターゲット自身に聞くのが一番です。
既存顧客がいる場合は直接聞けばいいですし、ターゲットに近い属性の人が集まるコミュニティで情報収集するのもひとつの手です。普段どんな媒体で情報収集をしているか、どのSNSを利用しているかなど、ターゲットの情報接触スタイルを把握しておきましょう。
より多くのターゲットが情報収集をしている媒体を出稿先に選ぶことで、あまり成果がでない出稿を未然に防げます。業界の年齢層やITリテラシーによってはWeb広告よりもオフライン広告が効果的な場合もあるので、決めつけで判断せずにターゲットへの理解を深めましょう。
まとめ:ターゲットの段階や見ている媒体に合わせた広告出稿を
BtoBの広告は潜在・準顕在・顕在と幅広い層をターゲットとします。どの層にはどのような広告を展開すればよいのかを確認して、ターゲット層に合った広告を出稿しましょう。
広告媒体はターゲット層の情報接触スタイルに合わせて選択します。ここはWebメディアなのでWeb広告を考えている読者の方が多いかもしれません。しかしターゲットによってはオフライン広告が有効な場合もあるので、ターゲットの解像度を高めるための事前調査が重要です。
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