BtoBサイトのABテスト、成果を出すための注意点は?
サイト改善の手法としてよく用いられるABテスト。広告クリエイティブ、LP、CTAなど、どちらを選択したら効果的か迷う場面で「データを元にした判断」が可能になります。
しかし、BtoBのABテストはBtoCとは異なる注意点があるので、同じつもりで実施すると上手くいかないことも。この記事では、BtoBサイトでABテストを上手に活用するための心構えや注意点を解説していきます。
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ABテストとは
ABテストとは、AパターンとBパターンの2種類を用意し、どちらがより成果を挙げられるかを期間を区切って検証するテスト手法です。
Webマーケティングでは、「トップページのキャッチコピーはどちらが離脱率が低いか」「どちらの広告バナーが流入数が多いか」「どちらの入力フォームがCVRが高いか」などを判断するためによく用いられます。
BtoBのABテストを実践する前に知っておきたいこと
BtoBサイトでは、ABテストをやりにくいケースが多い
実際のユーザー行動をサイト改善に反映させられるABテストは、非常に有効なテストです。しかしBtoBサイトでABテストをする際にまず理解しておきたいのが、「そもそもBtoBサイトはABテストをやりにくいケースが多い」ということ。
一般的にBtoBサイトはBtoCと比較してターゲットの絶対数が少なく、サイトのセッション数も少なくなります。諸説ありますが、一般的に統計的な信頼度が担保できる最低限のサンプル数が400だと言われています。ABテストの場合2パターンを比較するので、最低でも400×2=800のサンプルがほしいところです。
セッション数が多ければ短期間で必要なデータが集まりますが、セッション数が少ないBtoBサイトではサンプル数を集めるのに時間がかかります。このため、短期間でPDCAを回すことができないのです。
BtoBのABテストの対象は、重要度の高いページに絞る
セッション数を増やすために「広告出稿してセッション数を増やす」「テスト期間を伸ばす」という選択肢もあります。しかし、広告出稿する場合はその分の広告費がかかりますし、期間を伸ばすとその間に状況が変わってテスト結果に影響したり適切な比較ができなかったりする可能性が高まります。
BtoBサイトでABテストをする場合は、本当に必要な検証なのか、その改善によってCVRに大きく影響する可能性があるのかを見極め、重要度の高い箇所のみテスト対象にすることをおすすめします。
例えば、「サイト全体のカラーイメージが全く違う」「LPのキャッチコピーや訴求メッセージの切り口が違う」といった大きな差がある場合はABテストを行う意味があります。しかし「ボタンの色を少し変えました」程度の変更では、改善幅が小さく有意差が出ない可能性もあります。
特にサンプル数を確保するために広告出稿が必要になる場合は、「かかったコストと効果が見合わない」という事態にならないよう、本当にABテストを実施するべきかを適切に判断していきましょう。
BtoBサイトのABテストはどの箇所で優先的に行うべきか
ここまででお伝えした通り、アクセス数が少ないBtoBサイトはテスト箇所を慎重に選ばなければなりません。テスト箇所を選ぶ際のポイントは、セッション数の多さとCVへの近さです。
サイトの中でも多くの人が訪れるページや、CVに直結する部分のテストは、改善した場合の成果への影響度が高く、たとえ広告予算を使ってもペイする可能性が高まります。
以下で、具体的にどのような場所をABテストで検証すればいいのかを紹介します。
LP(ランディングページ)のファーストビュー
主にリスティングやディスプレイ広告の誘導先として使うLP(ランディングページ)は、比較的トラフィックも集めやすくCVRの変化も見やすいため、ABテストが有効です。
まずテスト対象にしたいのが、改善インパクトが大きいファーストビュー(ページをスクロールせずに目に入る範囲の部分)です。
ポイントは、まずメインビジュアル(キービジュアル)、次に文言、の順番でテストしていくこと。載せる文言は変えずに画像や配置などのビジュアルに変化を加えたパターンをいくつか作成し、最も離脱率が低く、CVRが高いものをテストで選びます。次に、メインビジュアルは固定してキャッチコピーなどの文言を変えたパターンでテストします。
最も効果が高かったキャッチコピーに合わせてページ全体の訴求内容を微調整すれば、LPのCVRはABテスト実施前と比較してかなり改善されるでしょう。
CTAバナーのデザイン
▲CTAバナーの例
CVに近い部分であるCTAバナーもテスト対象として有効です。CTAのクリック率が高まれば、セッション数を増やすことなくCVを増やせます。
ABテストを実施する場合、LPと同じく最初にビジュアル、次に文言、の順にやっていくと効率的です。
設置するCTAの種類
CTAのバナーデザインではなく、そもそもCTAの種類を変更するのも数字への影響が大きい施策。例えば、「お問い合わせ」と「サービス資料請求」の2種類のCTAでABテストをしてみるなどです。
一般的に、問い合わせよりも資料請求のほうがハードルは低く、CVR(コンバージョン率)は高くなりやすいです。特定の事柄に対して文章での返信を要求する問い合わせと、資料を送ってもらう(あるいはダウンロードする)だけの資料請求では、意味合い、検討度合いが違うというのは感覚的にもおわかりいただけるでしょう。
ただし、ここで注意したいのは、CV以降の数値の変化です。CVRだけではなく、それぞれのCTAでCVした人のアポ率や受注率を必ず確認しましょう。
上の例でいうと、「資料請求」のCTAの方がCVRが高く、しかも受注率は「問い合わせ」の場合と変わらないならば、CTAを「資料請求」にした方が成果につながると判断できます。しかし、「資料請求」にした場合のCVRは高くてもその後の受注率が大きく下がるようならば、CVRが低くてもCTAは「お問い合わせ」にしたほうがよいでしょう。
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「PVを増やさずにCVを増やす秘策!BtoBサイトのCTA設計の重要施策まとめ」
ABテストを実施するときのポイント
最後に、BtoBサイトに限らずABテストを実施する際に気をつけたい点をご紹介します。ここまででお伝えしてきたBtoB特有の注意点と併せて、理解していただければ幸いです。
1. 変更する箇所は1つだけに絞る
正確にテストするためには、AとBのパターンで変更する箇所を1つに絞らなくてはなりません。複数箇所を同時に変更してしまうと原因と結果の因果関係がわからなくなってしまいます。一箇所ずつ仮説検証を繰り返しながら小さな改善を積み上げていくことが、大きな改善に繋がります。
ABテストの一種として同時に複数の要素を変更する「多変量テスト」というものもありますが、トラフィックが少ないBtoBサイトで実施するのはかなり難しいため、おすすめできません。
2. テストはLPかトップページを優先
テスト箇所の例でもご紹介していますが、基本的にABテストの対象はセッション数が多いページを優先するべきです。
どのページからABテストを実施するか迷った場合、多くのサイトで最もセッション数が集まるトップページか、広告の遷移先になっているLPからテストし改善すると、サイト全体のパフォーマンス向上につながります。
3. ABテストの目的と仮説を明確にする
ABテストに限らず、テストは何らかの仮説に基づいて、その仮説が正しいかどうかを検証するために行われます。仮説を立てずになんとなくAとBのパターンを用意しただけでは、適切に改善をすることができません。
仮説に基づいてAとBのパターンを用意したら、テストの目的を明確にします。ABテストで比較するべき数値が「離脱率」なのか、「CVR」なのか、「特定のページへの遷移率」なのかは、仮説の内容によって異なるはずです。
4. 流入するユーザーの条件はできるだけ揃える
BtoBサイトでは難易度が高いケースも多いですが、ABテストの対象とするユーザーの条件はできる限り揃えるのが望ましいです。例えばキーワード検索から流入したユーザーと広告から流入したユーザーでは、必要とする情報や関心を持つポイントが異なります。
同じ広告でも、ディスプレイ広告とリスティング広告ではユーザーの属性が異なる場合があります。この差はABテストの結果にも反映されてしまうのです。
可能ならば、ユーザーの属性に合わせてテストパターンを出し分けましょう。それが難しい場合は、ディスプレイ広告とリスティング広告のLPを別にしてユーザーが混在しないようにするなどの工夫が必要です。
5. 有意差が出なければ次のテストに移る
ABテストを実施しても、パターンAとパターンBの間で統計的に有意な差がないと出るケースもあります。これはやむを得ないことなので、より深く分析し、新たな仮説を立ててパターンを作成し、次のテストを実施していきましょう。
まとめ
今回は、BtoBにおけるABテストの注意点と活用のポイントを解説しました。
ターゲットの絶対数の少ないBtoBではABテストが行いにくく、判断に迷う全ての箇所でABテストを行えるわけではありません。テスト箇所はごく重要な箇所に絞る必要があります。
セッション数を増やすための広告費用も加味した上で、成果へのインパクトと必要なコストのバランスを考慮して、どこをテストするべきなのかを判断していきましょう。
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