BtoBサイトのEFOで、コンバージョン率だけを見てはいけない理由
EFOとは「Entry Form Optimization|エントリーフォーム最適化」のことです。入力フォームのコンバージョン率(CVR)を高める施策全般を、EFOと呼びます。
この記事では、BtoB企業がWebサイトのEFOを実施する場合のポイントや改善例・注意点などを、弊社のWebマーケティングツール「ferret One」の事例とともに解説します。
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BtoBのEFOのポイント、BtoCとどう違う?
EFOのノウハウは多く出回っていますが、その多くが主にBtoC企業に向けられたものです。EFOのベースの考え方は変わらないものの、BtoBとBtoCのマーケティングは特性が異なり、それらを理解した上で実践しなければ、少し的はずれな施策を打ってしまいかねません。ここでは、事前に理解しておきたい、BtoBマーケティングのEFOのポイントをご紹介します。
1. 法人に関する情報を入力してもらう必要がある
BtoBのエントリーフォームでは、フォームに入力しているユーザー個人の情報だけでなく、その人が所属する法人の情報を入力してもらわなければなりません。
法人に関する情報とは、具体的に以下のようなものです。
<BtoBのエントリーフォームで特徴的な項目例>
- 役職
- 所属部署
- 企業規模
- 予算
- 課題感
- 会社(サービス)のURL
これらの全てを記入してもらわなければいけないということではありませんが、問い合わせ後の営業活動にあたって重要になる項目はいれておくことをおすすめします。
例えば会社(サービス)のURLなどは検索すれば見つかりますが、同じ企業内で複数事業がある場合などは、導入対象サービスのURLを事前に聞いておけると、その後のやり取りがスムーズです。
従業員数によって対象となる商品ラインナップが変わるようなサービスであれば、企業規模などが重要な情報になるかもしれません。
商品特性を加味して、エントリーフォームに必要な項目を決めていきましょう。
2. エントリーフォームの項目は、他部署と連携して調整する
マーケティング部門だけでEFO施策を完結させられないのも、BtoBの特徴です。BtoCの場合、基本的に「エントリーフォームからのCV=売上」ですので、CVRを高めれば高めるほど、成果に繋がります。
しかしBtoBは、CV後に商談のステップを挟んだ上で受注となることがほとんど。WebサイトのCVRを上げるだけでは必ずしも成果にはならないのです。
例えば、エントリーフォームの入力項目数を限界まで減らしてCVRを高められたとしても、その後の商談化率や受注率が下がってしまうと全体の効率は悪化する可能性があります。
しかし、だからといって営業が事前に知りたい情報をエントリーフォームに盛り込んで項目数を増やすとCVRが下がり、そもそものリード数が足りなくなってしまうかもしれません。
BtoC CVR × 客単価 = 売上
BtoB CVR × アポ率 × 案件化率 × 受注率 × 案件単価 = 売上
※BtoBの方が、CVから売上までの変数が多い
基本的に、CVRと案件化率はトレードオフになりやすいもの。マーケティング部門とセールス部門(さらに場合によっては継続率を高めるカスタマーサクセス部門)の間のバランスを取りながら、最も効率的な数字を出せる項目数、内容を探っていくことが重要です。
サービス全体のKGIを見据え、関係する部署と連携してフィードバックをもらいながら、フォームを最適化していく。これがBtoBマーケティングのEFOの重要ポイントなのです。
3. 問い合わせ後の対応までを含めて設計する
BtoBでは、CVの後にインサイドセールスや営業がお客様に直接アプローチすることになります。この、「問い合わせに誰が対応するのか」「どんなタイミングでアプローチするのか」などの体制を整えるのも、EFOの一部と考えたほうがいいでしょう。
一般的に、CVしたリードへの対応は早ければ早いほどいいとされています。できれば問い合わせから5分以内、遅くとも1時間以内には顧客に接触したいところです。ただ、「ホワイトペーパーダウンロード」のようなライトなCVであれば、すぐに架電しなくてもいいケースもあります。
問い合わせ後数時間以内に架電する、ホットリードは優先順位を高めるなど、セールス(インサイドセールス)の問い合わせへの対応方法やスピードまでを最適化することで、成果を最大化していきましょう。
BtoBマーケティングのEFO施策、具体例
ここからは、具体的なEFO施策の例を見ていきましょう。
EFOを実践している事例として、ferret Oneのケースをご紹介します。
入力項目についてのEFO
エントリーフォーム入力項目数を減らす
EFOの基本であり効果も高いのが、入力項目数を減らすことです。「知れたらうれしい」という理由で企業規模や業種、担当者の職種・役職など多くの入力項目を設けていた場合、重要度の低い項目から削ってみましょう。
入力項目数を変えながらテストし、必要な情報とCVRのバランスがいい項目数を探っていきます。
「項目を減らしたらCVRは上がる」というのは明らかではありますが、どれくらい変化があるのかを見るために、ferret Oneで実験したことがあります。
試した項目数の最小は「3項目」。問い合わせではなく、ナーチャリングを前提とするライトなリード獲得で試しました。
エントリーフォームの入力項目数を3つに絞ったところ、CVRは約1.5倍、リード獲得数も増加。これらの数字だけを見れば、やはり項目数を減らすのは効果があるということがわかりました。
<当時の入力項目>
- 氏名
- メールアドレス
- 会社名
ただ、先にお伝えしたように、入力項目数を限界まで減らしてCVRを高められたとしても、その後の商談化率や受注率が下がってしまっては本末転倒です。
その後、項目を増やしたり入れ替えたりしながらベストな状態を模索し、現在の入力項目数は8個に落ち着いています。
<現在の入力項目>
- 氏名
- メールアドレス
- 電話番号
- 会社名
- 運営サイトのURL
- ビジネスモデル(選択式)
- 具体的なお悩み(フリーテキスト)
追加してよかった項目、意味がなかった項目
さまざまな入力項目、入力方式を試してわかった、「入れてよかった項目」と「あまり意味がなかった項目」もお伝えしたいと思います。
まずあまり意味なかったのが、選択式の「お悩み」です。選択式の場合、並び順が上のものに回答が偏る傾向があり、電話でヒアリングしてみると選択された悩みとは別のニーズを持っていることがわかることも結構ありました。
よく読まずに適当に選んでしまったり、そもそも自分の課題感を言語化できていなくて選びにくいと感じたりするのだと思われます。
逆に入れてよかったのが、フリーテキストの「お悩み」です。必須項目にしていないので空欄でも送信できますが、意外と記載してくれる方も多く、営業アプローチにも役立ちます。現在もこの項目はフォームに残しています。
入力項目数をテストする際の注意点
こういった検証をする場合は、マーケティング部門からリードを受け取るセールス部門など、社内の適切な部署に相談した上で実践してください。
先に伝えたとおり、BtoBのEFOはマーケティング部門だけでは完結しません。目的や影響を共有し、関連部署が納得している状態でテストしましょう。ご紹介した弊社の事例であれば、「場合によっては氏名/メールアドレス/会社名しかわからないリードが供給される可能性がある」などを事前に伝えておく必要があります。
資料/ホワイトペーパーダウンロードフォームでのEFO
BtoBでよく使われるのが、ホワイトペーパーをダウンロードしてもらってリード情報を手に入れるという手法。そのケースに特化したEFO施策の例です。
1. エントリーフォームページで資料イメージを提示
ファーストビュー(ページを開いたときに最初に表示される画面)にダウンロードできる資料の情報とエントリーフォームが表示されるようにするという施策です。
エントリーフォームがあるページに、資料の中身がわかる情報を提示します。「この資料をダウンロードするとどんなメリットを得られるのか?」を具体的に想像できるようにすることで、フォームへの入力というハードルを飛び越えてもらいやすくなります。
載せるべき情報の例
- ビジュアル的なイメージ:資料の表紙&中身の数ページのスクリーンショット
- 内容のイメージ:目次、どのような課題を持っている人向けの資料なのか
2. ファーストビューに、資料ビジュアルとエントリーフォームを入れる(PC画面の場合)
資料ダウンロードのためのエントリーフォームページを作成する場合、資料の説明をページ上部に、エントリーフォームをページ下部に設置するというパターンも考えられます。しかし、「資料を手に入れるために、エントリーフォームにどれだけの情報を入れればいいのかわからない」状況は閲覧者にとって不安があるでしょう。
それを防ぐために、ページの上部に資料イメージとエントリーフォームの両方を入れ、エントリーフォームは入力の手間がかかるものではないことを印象づけます。資料の魅力とフォーム入力の手軽さを伝え、「こんなに有益な情報が、これくらいの入力項目で手に入るんだ!」と思ってもらえるのが理想的です。
ferret Oneで「資料イメージの提示」と「エントリーフォームの並列表示」をしてから、CVRは1.14倍になりました。
▲資料の表紙、中身のスクリーンショット、どのような人向けの資料なのかを記載
▲ノウハウ紹介資料の場合、目次を箇条書きで示す場合も
スマホユーザー向けのEFO
BtoCよりは少ないですが、BtoBでもスマホからCVするユーザーがいます。一般的にスマホのほうが、フォーム入力を面倒に感じやすく、項目数が多いと離脱しやすいです。
そこでferret Oneでは、スマホからの入力項目は「氏名」と「メールアドレス」だけにしたことがありました。具体的には以下のような流れです。
<スマホからのCVの流れ>
- エントリーフォームでは「氏名」「メールアドレス」のみを記入
- 登録メールアドレスに正式な登録フォームのURLを送付。PCからの情報入力を依頼
- PCからメールを開いてもらい、その他の情報を入力(本登録)
スマホのエントリーフォームを2項目にした結果、CVRは3倍にまで上がりました。
しかしこのやり方にはもちろんデメリットもあります。あまりに簡単にCVできるのでメールを見ても「何のことだっけ?」となってしまうのか、本登録に至るユーザーはそれほど多くはありませんでした。
もちろん、氏名とメールアドレスだけでもナーチャリング対象にはできるので、何を重要視するかで、選択する施策は変わってきます。スマホからのCVについては、引き続き施策を試しながら検証していく予定です。
EFOの注意点
最後に、EFOを実践していく上で理解しておきたい注意点をお伝えします。
1. 施策を開始する前に数値を計測できる環境を整える
EFOの最初の一歩は、データ分析ができる環境づくりです。サイトであれば、Google Analyticsのコンバージョン設定/目標到達プロセスを設定し、ページの遷移率などを見られるようにしておきましょう。
また、CV後の案件化率なども採れるように関連部署と連携体制を築いておくのも重要です。
2. エントリーフォームの入力内容だけで判断しない
エントリーフォームへの入力内容だけで、リードの見込み度の高さや熱さを判断するのは早計です。
例えばferret Oneのエントリーフォームでは「月々の広告費・外注費の目安」という項目を設けていますが、予算がない&非常に少ないという回答だとしても、営業がアプローチすれば受注できるケースがあります。それだけを見て営業対象外にすると、本当は価値提供ができたはずのお客様を見逃してしまうかもしれません。
なぜそういうことが発生するかと言うと、まず一つは「選択式だと、上のほうにあるものを適当に選ぶ人もいる」ことが考えられます。そして何より大きい要因は、必ずしも「正直に入力してくれるとは限らない」こと。予算などは、直接会って商談して、一定上の信頼関係ができてからでなくては教えたくないという人も多いです。
BtoB企業であれば、リードのセグメントに「BANT条件」を使い、見込み度合いを判断しているケースもいるでしょう。
<BANT条件とは>
案件の見込み度合いを測定するための要件。それぞれ以下のセグメント条件を表す。
- B(Budget):予算
- A(Authority):決裁権
- N(Needs):必要性
- T(Timeframe):導入時期
しかし、BANT条件が表す各項目は、基本的には「営業がヒアリングし、案件の確度を判定する」ために使うものであり、マーケティング部門だけで判断するのが難しいとされています。
「問い合わせ後の商談化のために、予算を事前に知りたい」などの要望はあるかもしれません。しかし実際にその回答が商談化にどこまで影響するのかは、改めて検証しなければなりません。エントリーフォームに入力される情報が全てではないということは、肝に銘じておきましょう。
まとめ
今回は、BtoBマーケティングに特化したEFOの手法について、概念から具体的な施策までご紹介しました。
BtoBのEFOの最も特徴的な部分は、Webサイト、マーケティング部門だけで完結しないところです。エントリーフォーム自体のCVRだけを見ても成果には繋がらず、その後の接触タイミングや方法まで設計する必要があります。データの変化を分析する上でも、商談化率、受注率、継続率までを視野にいれなければいけません。これがBtoBのEFOの難しさであり、面白さとも言えます。
ferret Oneは、BtoBに特化したマーケティング支援を行います。自社で運用できるようになる運用支援はもちろん、人材が不足している場合は運用代行も承っております。ぜひ資料をご覧ください。
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