セグメンテーションとは?BtoBにおけるやり方や具体例を解説
マーケティングでは、自社の製品やサービスについて需要のあるターゲットを特定することが重要です。そのためには、市場を細分化し分類する「セグメンテーション」が役立ちます。
この記事では、セグメンテーションの特徴や、セグメンテーションを行う際のポイントを紹介します。
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セグメンテーションとは?STP分析の要素のひとつ
セグメンテーション(segmentation)とは、日本語に訳すと「区分け・分割・区分」を意味する英単語です。マーケティングにおいては「市場に存在する不特定多数の顧客を、ニーズや性質などさまざまな観点で分類し、特定の属性ごとにセグメント(グループ)を作ること」と定義されます。
マーケティング戦略の枠組みのひとつに「STP分析」があります。この「STP」の「S」の部分がセグメンテーションです。
セグメンテーションで市場を分類した後には、その中で自社が狙う領域を絞っていきます(「T」=ターゲティング)。さらに、ターゲティングした領域にいる競合他社の中で、自社の立ち位置を決めます(「P」=ポジショニング)。この一連の枠組みがSTP分析です。
マーケティングをする上でSTP分析は多くの企業が導入しており、その欠かせない要素のひとつにセグメンテーションがあります。
▼STP分析については、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。
→STP分析とは?BtoBでの分析方法と便利なワークシート
BtoBでセグメンテーションをする理由とは?
マーケティングにおいてセグメンテーションをする理由には、以下のようなものが挙げられます。
企業の多様化に対応する
昔のマーケティング活動は、不特定多数の企業に向けて行う画一的なもの(マスマーケティング)が主流でした。しかし、現在では会社の規模はもちろん、社風や取り組みなど企業自体の特徴・価値観の多様化が顕著になっています。そのため、どのような会社に自社の製品やサービスが求められているか、見定める必要があります。
また、企業が製品やサービスを購入しようと思う動機にも着目することが大切です。同じような製品やサービスを過去に購入したことがある企業と、初めて購入を考えている企業では、求めているニーズが異なる場合があります。
企業自体の多様化や、企業のニーズの多様化に対してセグメンテーションを行い、自社に適した効率の良いマーケティングが求められています。
効果的なマーケティングを行う
セグメンテーションを行い、企業の性質やニーズごとにグループ分けをすると、グループごとにマーケティング方法を変えることが可能です。
性質やニーズに応じたマーケティングを行うことができると、コストカットや利益率の向上につながります。
ITの進化が続いている現在、効果的なマーケティングを行うことは企業にとって必須です。競合他社との差別化を明確にし、またターゲットも明確にすることは、成約率の向上にも関わります。
セグメンテーションを活用して、常に市場のニーズを把握し対応していくことは、企業にとって必要不可欠な取り組みとなっています。
セグメンテーションのポイント①セグメンテーション変数
セグメンテーションを行う際は、どのような観点で市場を分類していくかが重要です。
その観点・基準は「セグメンテーション変数」と呼ばれ、セグメンテーション変数は大きく以下の4つに分類されます。
地理的変数(ジオグラフィック変数)
地理的な条件・要素を基準とするセグメンテーション変数です。地理的変数には、以下のような項目(切り口)があります。
- 世界の各国・地域(ヨーロッパ・アジア・アメリカ・日本など)
- 日本の地域・都道府県(西日本・関東地方・東京都・沖縄県など)
- 気候(温暖・寒冷・気温・湿度・降水量など)
- 人口密度(都市部・過疎地域など)
- 都市化の進展度(都市として発展している・再開発が進むなど)
- 文化・生活習慣・宗教
人口動態変数(デモグラフィック変数)
客観的な条件・要素を基準とするセグメンテーション変数です。人口動態変数は、以下のような項目(切り口)です。
- 性別(女性・男性など)
- 年齢(20代・30~40代・60代以上など)
- 家族構成(既婚・独身・子どもの有無など)
- 職業(製造業・IT系・自営業など)
- 所得(年収300万円未満・500~600万円・1000万円以上など)
- 学歴(高校・大学・大学院など)
心理的変数(サイコグラフィック変数)
心理的な要素を基準とするセグメンテーション変数です。心理的変数には、以下のような項目(切り口)があります。
- ライフスタイル(アウトドア派・趣味を大事にしたい・仕事優先など)
- パーソナリティ(内向的・社交的・神経質など)
行動変数(ビヘイビアル)
消費者の行動パターン(特に製品やサービスに対するもの)を基準とするセグメンテーション変数です。行動変数は、以下のような項目(切り口)です。
- 使用頻度(ライトユーザー・ミドルユーザー・ヘビーユーザーなど)
- ベネフィット(品質・機能性・経済性など)
- 使用場面(毎日使用する・休日に使用する・夏に使用するなど)
- 購買心理・知識(認知していない・関心がある・購入意図があるなど)
セグメンテーションのポイント②4Rの原則
セグメンテーションのポイントには、セグメンテーション変数のほかに「4R」と呼ばれる判断基準があります。
以下の4つの「R」を意識することが、効果的なセグメンテーションにつながります。
Rank(優先順位)
分類したセグメントに優先順位をつけます。「自社の事業戦略に沿っているか」「重要度が高いか」「自社の強みを生かし、他社よりも有利になれるか」が観点です。
Realistic(規模の有効性)
セグメントの市場規模を確認します。「充分な売り上げ・利益を見込めるか」が観点です。
市場規模が小さい場合、対象から外す必要があります。また、今後の成長・縮小の可能性も視野に入れておくことが大切です。
Reach(到達可能性)
実際に製品やサービス、その広告・プロモーションを届けることができるかを判断します。届けるための手段や、その難易度についても検討します。
Response(測定可能性)
市場規模やその特徴、購買力などを測定できるか判断します。また、マーケティングを実践した後に、その効果や反応を測定できるかも判断します。
これらの測定ができなければ、セグメンテーションの成果が分かりません。継続すべき部分や改善点など、今後に生かすことも視野に入れることが必要です。
BtoBでのセグメンテーションの特徴
セグメンテーションは、BtoB企業もBtoC企業もマーケティング戦略として行います。しかしBtoBとBtoCでは、その考え方や切り口が異なります。
BtoBにおけるセグメンテーションの特徴は、以下のような点です。
BtoCでのセグメンテーションとの違い
BtoCでのセグメンテーションは、年齢・性別・性格など、消費者の性質を観点に分類することが目的となります。一方BtoBでのセグメンテーションは、企業や業界の性質を観点に分類することが目的です。
個人単位の消費者とは違い、企業・業界のセグメンテーションはより複雑になります
BtoBでのセグメンテーションの要素
BtoBにおけるセグメンテーションの要素として、以下5点が挙げられます。
1.企業規模
どのくらいの企業規模の会社をターゲットにするか、従業員数や売上高などをもとに設定します。また、対象となる会社に自社の提供する製品・サービスの料金プランを設定します。
2.業界
業界によって働き方や市場規模は異なり、求められるニーズやそれに対応できる製品・サービスも異なります。そのため多岐にわたる業界・業種の中で、どこに自社の製品・サービスが求められるか設定します。
3.社風
社風は経営者の価値観があらわれる部分であり、消費者の性質でいうと「性格」のようなものです。「風通しが良い」「実績重視」「伝統を重んじる」など、企業の特徴でセグメンテーションを行います。
4.決裁権限の有無
BtoCの場合、製品やサービスの購入に関する決定は消費者1人で行うことがほとんどです。一方BtoBの場合は、製品やサービス購入の意思決定に関わる人間が複数いることが多くあります。
製品の担当者が対象だと「活用することで期待できる効果を具体的に示す」、決裁者が対象だと「ポイントやメリットを絞った端的に分かる資料を提示する」など、最適なアプローチの方法が異なってきます。
5.購入歴
類似の製品・サービスを既に導入している企業と、これまでに導入したことのない企業ではニーズが異なります。既に導入している企業であれば、類似製品に課題を感じているはずです。これまでに導入したことのない企業であれば、新しいシステムを求めていることが考えられます。
このように購入歴の違いでもセグメンテーションは可能です。購入歴で分類することにより、狙うターゲットやアプローチに違いが生じてきます。
BtoBにおけるセグメンテーションの具体例
BtoBにおけるセグメンテーションの事例を2つ紹介します。
1.Panasonic株式会社:Let’s note
Let’s noteの開発当時、パソコン業界はスペック面で競っていました。この頃は日常生活の場でパソコンを使用することが増え、購入層も生活者が中心。ですがPanasonicはセグメンテーションで「個人利用か法人利用か」「屋内利用か屋外利用か」という分類を行います。そして「法人利用かつ屋外利用」、つまり外回りの営業がいる法人の需要を満たす方針を定めました。
その結果開発された『Let’s note』は、ターゲットのニーズに応えられるよう「軽量」「長時間の駆動」「丈夫さ」「アフターケア」を重視したものになっています。これはビジネスユースのパソコンとして受け入れられ、多くの法人需要を満たしました。
2.株式会社アンドパッド:ANDPAD
さまざまなデジタルデバイスの登場により、クラウドやアプリを利用する「SaaS」型のビジネスが注目されています。多くの業界がこれを取り入れて業務の効率化を図っていますが、建設業はこういったテクノロジーの進化に対応できていない業界のひとつでした。しかし建設業は深刻な人材不足などにより、生産性の向上が喫緊の課題となっています。
そこで株式会社アンドパッドは、セグメンテーションにより「現場管理に困っている建設会社・工務店」「デジタルツールの導入に柔軟な、課題解決意識の高い建設会社」に照準を合わせました。そして施工管理アプリ『ANDPAD』をリリースします。
現場の効率化から経営改善までを一元管理するANDPADにより、これまでアナログでややこしかった現場や協力会社とのコミュニケーションが簡単で円滑に。また、紙での共有が多かった図面や工程表、写真などもスマホやPCなどですぐに最新のものを確認できるようになりました。生産性の向上という課題の大きな助けになり、現在では多くの建設・建築関係者に導入されています。
セグメンテーションを活用して、効果的なマーケティングを
ニーズが多様化し、ITが常に進化していく現在、セグメンテーションを活用したマーケティングはとても有効です。製品やサービスによってニーズは異なり、企業のセグメンテーションも多岐にわたります。
まずは提供する製品やサービスの内容、自社の強みを理解して、適切なセグメンテーションに取り組んでみましょう。
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