【ferret活用 マーケ成功事例】営業兼務の組織が切り拓いたニッチ市場マーケティング(株式会社ニチマイ様)
BtoBマーケティング現場のリアルなお悩みをテーマに具体的な成功事例を紹介する「BtoB Marketing SUCCESS」シリーズ。2025年4月30日開催のセミナーでは、株式会社ニチマイ様をお迎えしました。
営業兼務の組織でありながら早期に成果を出せた秘訣やどのように進めて成功に至ったのか、ニッチ市場のマーケティングならではの工夫ポイントなども交えながら、ディスカッション形式で深堀っていきました。
本レポートでは、セミナーの内容を抜粋してご紹介します。
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セミナーアーカイブ動画
登壇者紹介
パネリスト
株式会社ニチマイ
サービス事業開発部 グループリーダー
石川 清美 氏
ソフトウェア開発、図書館管理システムの導入支援・運用支援、デジタルアーカイブシステムの販促などのキャリアを経て、2010年より株式会社ニチマイに勤務。以来、官公庁の海図のデジタルアーカイブ構築、国立機関の大型デジタル化案件の管理支援、官公庁・自治体・一般企業を対象にした文書管理コンサルティング、海外における資料調査収集などに携わっている。
文書管理コンサルティング事業では、新規顧客開拓に既存のチャネルが使用できなかったため、FerretOneを導入し、初めてWebマーケティングを経験した。その経験を生かし、ニチマイの主力事業となる「デジアカ」のWebマーケティングを推進している。
株式会社ニチマイ様の事業紹介
「わが社の製品は正しき写真技術に基づき人類の進歩に貢献する」との理念のもと、昭和25年に前身の大洋写真工芸社が設立されました。以来、マイクロフィルムの製造からデジタル画像の作成、文書管理コンサルティングまで、文書情報マネジメントの分野で貢献されています。
また、海外においては、米国メリーランド大学でのデジタル化プロジェクトや米国国立公文書館での資料調査収集プロジェクトなどの事業を展開されています。
▼BtoBマーケティングツール「ferret One」で運営している株式会社ニチマイ様のWebサイトhttps://digiaka.nichimy.co.jp/
モデレーター
株式会社ベーシック
SLG事業部 ferret マーケティング部 リーダー
菊池 貴行 氏金融機関、メディア運営会社を経て2018年より株式会社ベーシックへ入社。
ferret Oneカスタマーサクセス部にて、オンボーディングチーム立ち上げメンバーとして活躍し、顧客の「BtoBマーケティング」の立ち上げ支援を行い、
担当社数は累計120社以上。製造業・ITサービス・コンサルティングサービスなど、有形から無形の幅広い業界の企業に対して、各社の事業理解から組織状態など踏まえた顧客に
寄り添った戦略設計や施策の設計などマーケティング支援を行う。現在はマーケティング部にてセミナーの企画から講師を担当し、これまでに支援してきた豊富な経験をもとにした、実務に使えるセミナー内容に定評がある。
株式会社ベーシック
SLG事業部 カスタマーサクセス部
カスタマーエンハンスグループ マネージャー
坂本 伽染 氏ヘルスケア事業などを展開するホールディングス企業にて、経営企画・経営管理・IR業務などに3年間従事。
その後、2022年にベーシックへ入社し、カスタマーサクセス企画・事業企画領域においてCRM整備や事業数値管理などに2年ほど携わったのち、カスタマーサクセスにおける顧客支援を担当。
現在はferret Oneのカスタマーサクセス カスタマーエンハンスグループに在籍し、顧客のBtoBマーケティングの立ち上げ支援から成熟フェーズまで業界・マーケティングフェーズごとの顧客に対して事業・マーケット理解から戦略策定・具体的な施策実行支援まで幅広く支援を実施。
これまでの支援実績は累計150社以上。
株式会社ベーシックのサービス「ferret」のご紹介
「ferret」は、BtoBマーケティングに必要なツールとコンサル・代行支援を提供するサービスです。
課題に合わせて貴社に不足している要素を過不足なく提供。使いやすいツール、Webサイト、伴走サポート、制作代行など、必要な要素をまるっと揃えることができます。ツールだけ、コンサル・代行支援だけ、あるいはその両方。貴社に合ったサービスをご提案いたします。
株式会社ニチマイ様には、マーケティング部門の立ち上げに伴うサイトリニューアル時から「ferret」のサービスとして、BtoBマーケティングツールの「ferret One」と伴走支援サポートをご活用いただいております。
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サマリー
「忙しくて全部は読むのは大変…」という方に向けて、本セミナーの重要なポイントをまとめました。関連する章へのリンクもつけておりますので、気になるところだけでもぜひ詳細をお読みいただき、マーケティング活動にご活用ください!
ニチマイ様の成果
2023年6月に「デジアカ」事業のサービスサイトを公開すると同時に本格的にWebマーケティングの取り組みを開始。
全員が営業業務との兼務とリソースが限られる中でのマーケティングを実施されたにもかかわらず、短期間で高い成果を上げられています。
- サイト公開後の約半年間で「60本」以上の記事を公開
- サイト公開から1年後にはオーガニック経由での月間サイト訪問数が約7,700件まで伸長。狙ったキーワードの上位表示にも成功。
- Webマーケティングへの取り組み開始約2年間で、1,000万を超えるWeb経由での受注を実現。
1. Webマーケ取り組み以前の『社内課題』
Webマーケティングを取り組む前の課題
- 既存顧客への訪問営業が中心で、新規開拓に限界を感じていた
- 営業リソースが限られている中で、効率的に売上拡大したい
- 新規事業の取り組みも検討しており、市場のインサイトを把握したい
Webマーケティングを取り組むにあたっての壁
-
成果への不安:マーケティングの専門家でないメンバーでも、成果が出るのか?
→解決策:外部のマーケティング支援サービスの活用(「ferret」の導入) -
リソース不足:専任担当者が用意できない。
→解決策:まずは兼務体制でスタート。 -
社内理解:長年、営業が対応してきたため「Webマーケティングは不要」といった見方も。
→解決策:まずは上層部の理解を得ることに。使用するツールのデモまでしっかり行った。
詳しくはこちら 1. Webマーケ取り組み以前の『社内課題』
2. Webマーケティングの取り組みSTEP
株式会社ニチマイ様がWebマーケティングを進められた手順を時系列で伺った。
-
STEP1 マーケティングの体制の確定
営業組織の管理職を現在の業務との兼務体制でマーケティングを推進することに。 -
STEP2 事業の再整理・一本化
複数サービスあり、「誰の」「何を」「どのように」という訴求の軸が定まらなかったため、サービスを再整理・一本化(デジアカ事業への再編成)。 -
STEP3 サービスサイトの制作
デジアカ事業のリード獲得を目的に、サービスサイトを制作。 -
STEP4 マーケティング実行計画の策定
マーケティングの目標設計や具体的にどのような施策を実行するか、実現可能な計画を策定。
詳しくはこちら 2. Webマーケティングの取り組みSTEP
3. 実際に取り組んだマーケティング施策
株式会社ニチマイ様がマーケティングに取り組んで3年間で、どのような施策に取り組んでこられたのかを伺いました。
- 初年度(2023年):「基盤構築期」
- 2年目(2024年):「リード成果創出期」
- 3年目(2025年):「CV強化期」
そのなかで、特に成果が出た「SEO施策」と「メールマーケティング」について、具体的な施策内容について記事でご紹介します。
詳しくはこちら 3. 実際に取り組んだマーケティング施策
TOPIC 営業兼務のマーケティング組織で安定運用を実現させた仕組み
全員兼務でありながら、マーケティングで成果を出されているニチマイ様。具体的にどのような取り組みでそれを実現しているのか伺いました。
本業の営業活動とマーケ業務の両立のコツ
-
司令塔ポジションを設ける
メンバーの1人が、全体施策の統括や外部コンサルとの連携、タスク割り振りなど細かなマネジメントを行う役割を担った。 -
ノウハウ・リソースは外部コンサルティングを活用
マーケティングのノウハウは外部コンサルティングを活用して補った。 -
プロジェクト管理ツールを活用
ツールを活用してタスクの抜け漏れを防いだ。
マーケティングの優先度が下がらないコツ
-
営業管理職をマーケティング担当に任命
自走力が高い営業管理職がマーケティングも行う形をとった。 -
会議体の時間割り振りを変更
もともと実施していた営業会議の時間の半分を、マーケティング会議に充てた。 -
MUSTタスクの固定で習慣化
記事の執筆などのマーケティングタスクを「MUST(必須)」とすることで責任感アップ。 -
成果共有でモチベーションアップ
少しの成果でも営業部全体や上層部にも共有するように。
詳しくはこちら TOPIC 営業兼務のマーケティング組織で安定運用を実現させた仕組み
1. Webマーケ取り組み以前の『社内課題』
株式会社ニチマイ様では、Webマーケティング取り組み以前、3つの社内課題がありました。
- 既存顧客への訪問営業が中心で、新規開拓に限界を感じていた
- 営業リソースが限られている中で、効率的に売上拡大したい
- 新規事業への取り組みも検討しており、市場のインサイトを把握したい
これらの課題を抱える中、Webマーケティングに取り組むに至った経緯を詳しく伺いました。
Webマーケ取り組み以前の『社内課題』
石川氏:
課題① 既存顧客への訪問営業が中心で、新規開拓に限界を感じていた
当社の営業活動が既存顧客への訪問に偏っており、新規開拓には限界を感じていたという点があります。
もちろん、既存のお客様からご紹介いただく案件は非常に質の高いものが多く、ありがたい存在です。しかし一方で、自社の能動的な取り組みによって、新たなお客様と継続的に出会える仕組みを構築したいという思いがありました。
課題② 営業リソースが限られている中で、効率的に売上拡大したい
営業のリソースにはどうしても限りがある中で、いかに効率的に売上を拡大できるかという課題でした。
とはいえ、当社は既存のお客様との信頼関係を大切にしたいと思っていますので、そこの時間は削りたくないと考えておりました。
課題③新規事業の取り組みも検討しており、市場のインサイトを把握したい
今後の新規事業への取り組みにも関わる点です。なかなか市場のニーズが明確に見えてこないという課題がありました。
そこでサービスサイトの立ち上げにあたって、顧客ニーズを把握していきたいと思っておりました。
菊池氏:
従来の営業スタイルを維持しつつ、自社で新規開拓もできるような仕組みをつくる必要があるという認識が深まってきた。その結果として、Webマーケティングへの取り組みに舵を切ることになった、ということでしょうか?
石川氏:
そうですね。以前、私が関わった社内の別の新規事業では、既存顧客とのつながりが一切使えないゼロスタートでした。
その際、当社として初めてWebマーケティングを部分的に導入したのですが、一定の成果が得られたんです。
その経験から、今回は既存事業にもWebマーケティングを取り入れようと考えるようになりました。
菊池氏:
そのような経緯の中で実際にWebマーケティングを取り入れることとなったのですね。
Webマーケティングへの取り組み前の壁
菊池氏:
取り組みを進める中で、いくつかの壁に直面されたと伺っています。ぜひ詳しく教えてください。
石川氏:
①成果への不安
やはり「本当に成果が出るのか」という不安がありました。未知の取り組みには慎重になります。
解決策:私たちはマーケティングの専門家ではありませんでした。そこで、外部のマーケティング支援サービス「ferret」のサポートを活用することにしました。
②リソース不足
実務を担う人材の確保です。Webマーケティングを進めるには専任の担当者が必要ですが、限られたリソースの中でどう工面するかが問題でした。
解決策:マーケティング組織を新たに設立するということはできないので、仕方なくではありますが、まずは兼務体制で始めることにしたんです。
③社内理解
社内理解を得るのにも苦労しました。長年、営業が丁寧に対応してきたこともあり、「Webマーケティングは不要」といった見方も一部にはありました。
解決策:
まずは上層部の理解を得ようと使用予定のツールまでを実際に見てもらい、取り組みの必要性をしっかりと伝えるようにしました。
菊池氏:
初めてマーケティングに取り組む場合、どうしても社内の限られた担当者だけでミニマムに進めようとしてしまうケースが多いと思います。
そこを、今回のように「社内だけで完結させない」「何が本当に必要かを広い視点で整理する」という姿勢はとても大切だと感じました。
あえて外部の支援やツールを活用しながら進めていく判断、そしてそれを実現するために、上層部の方々と一緒に「マーケティングをやるとは、どういう状態か」まで理解の解像度を上げていったプロセス。
こうした社内の理解づくりを丁寧に進められたことが、成功の土台になったのだと改めて感じました。
2. Webマーケティングの取り組みSTEP
こうした壁を乗り越えて、株式会社ニチマイ様が具体的にどのようなステップでWebマーケティングを進められたのかを伺いました。
STEP1 マーケティングの体制の確定
石川氏:
リソースの問題もあり、マーケティングは兼務体制で進めることにしました。
ただし、ただの兼務ではなく、部長や課長といった責任者クラスに担当してもらう形を取りました。
菊池氏:
それはなかなかできることではないですよね。非常に勇気のいる決断だったと思います。
多くの場合、マーケティングは現場の担当者がアサインされて、ボトムアップで進めるケースが多いです。
でもニチマイ様の場合は、責任ある立場の方々をしっかりアサインして、いわば精鋭部隊で始められた点はとても印象的です。
実際に現場で伴走されていたCS担当の坂本さんから見て、どう感じられましたか?
坂本氏:
ニチマイ様は、施策の実行力やスピード感がとても高いと、日ごろから感じています。
その背景には、選りすぐりのメンバーが集まっているという点が、大きな成功要因のひとつだと思いますね。
菊池氏:
やはり管理職の方々は、マーケティングに取り組むことに対して強い当事者意識や責任感を持っていらっしゃいますよね。
他にもやるべきことが多い中で、マーケティングにもきちんと向き合っていく。その姿勢がチーム全体の推進力にもつながっていたのだと思います。
「誰が旗を振って進めていくのか」は、非常に重要なポイントだと感じました。
STEP2 事業の再整理・一本化
菊池氏:
このフェーズでは、事業の再整理と一本化に取り組まれたというお話でしたね。
実際にこのプロセスを進める中で、社内ではどのような状況だったのか、どんな変化や工夫があったのかをぜひお聞かせください。
石川氏:
マーケティングというと「誰の」「何を」「どのように」と商材の訴求を整理することが必要になりますよね。
ただ、当社の場合はマイクロフィルム関連やデジタル化に関する事業が複数存在していて、案件ごとに対応していました。
つまり、「誰向けの何のサービスか」外からわかりやすい状態ではありませんでした。
結果的にアピール力が問題になっており、そこを整理して見込み顧客にわかりやすく伝えられるように、デジタルアーカイブの課題を解決するサービスとして「デジアカ」事業という1つのサービスとして一本化しました。
菊池氏:
一本化したことで生まれた新しい事業「デジアカ」。
そのターゲット設定を進めていくプロセスについて、どのように取り組まれたのですか?
坂本氏:
Webマーケティングを始めるうえで欠かせない初期戦略として、私たちferretは「訴求設計」と呼んでいるプロセスがあります。
それがまさに「誰の」「何を」「どのように」と商材の訴求を整理する工程です。
「訴求設計」では、ニチマイ様からお客様のリアルなお声や現場感を丁寧に伺いながら、ターゲット分析や3C分析などを中心に進めました。
その上で、「こういった整理の仕方が良いのではないか」といった提案も交えつつ、ディスカッションを重ねながら、双方で協力して設計を進めていきました。
▼「戦略設計」の一部
菊池氏:
戦略設計は、普段マーケティングをやっていない企業様からすると、難しそうと印象があるのではないかと思います。実際石川さんが進めていかれた中ではいかがでしたか?
石川氏:
既存事業では、こうした形でマーケティングを進めたことがほとんどありませんでした。
だからこそ、「項目ごとに整理して考える」というプロセス自体が、とても大事だったと感じています。
例えば、本を読めば自分たちだけでもある程度できたかもしれませんが、今回はフィードバックをもらいながら進められたことで、実践を通じて学びが深まりましたね。
坂本氏:
ターゲットの設定や、どんな価値を届けるかといった部分を丁寧に整理できたことは、後のサイト制作にも活かされました。
さらに今でも、新しい施策を検討する際の「軸」として機能しています。そうした立ち返る「軸」を、一緒に作れたのではないかと思っています。
STEP3 サービスサイトの制作
石川氏:
サービスサイトは「ferret」のサイト制作チームとともに進め、CMS機能もあるマーケティングツール「ferret One」で実装いただきました。
当社からコンセプトをお伝えしつつ、都度話し合いを重ねながら進めていったことで、非常にスムーズに進行できたと感じています。
仕上がりもイメージにしっかりマッチしており、これまで当社にはなかったような、洗練されたデザインを実現していただけたことを大変ありがたく思っています。
菊池氏:
ありがとうございます。
戦略設計の段階で商材の訴求ポイントをしっかりと言語化できたとしても、そこで終わってしまうケースは少なくありません。
しかしニチマイ様の場合は、その分析結果を活かして、サービスサイトに訪れるお客様に対して「どのようなメッセージを届けるべきか」といった点まで一貫して設計されていたのが印象的でした。
STEP4 マーケティング実行計画の策定
菊池氏:
サービスサイトが完成し、いよいよマーケティングの実行計画のフェーズに入られたわけですね。
ニチマイ様ご自身でコンテンツを作成し、施策を実行していくタイミングだったかと思います。
ここでぜひ、坂本さんが進行にあたって意識されていたポイントがあれば教えてください。
坂本氏:
サービスサイトの完成を待ってから施策を設計し始めると、実行のタイミングがどうしても遅れてしまいます。
ですので、サイト制作と並行して施策の設計も進めることをご提案させていただきました。
菊池氏:
なるほど。実際にその流れでご一緒に進めていく中で、石川さんご自身は当時どう感じていらっしゃいましたか?
石川氏:
スケジュールを先に提示していただけたのが、とても助かりました。
自分たちだけだったら、途中で一息ついてしまって、そのまま立ち消えていたかもしれません。
でも、あらかじめ先を見据えたスケジュールに沿って動くことで、息切れしながらも前に進むことができましたし、結果的にスピード感を持って取り組めたのはすごく良かったと感じています。
菊池氏:
今のお話、とても興味深いです。もう少し深掘りさせてください。
坂本さんにぜひ伺いたいのですが、ニチマイ様に限らず、日頃からさまざまな企業の伴走支援をされていると思います。
その中で、ニッチな市場を狙う企業が施策の実行計画を立てる際、特に意識しておくべきポイントがあれば、教えていただけますか?
坂本氏:
そうですね、少し私見も入りますが——
やはり「活用できる資産がどれだけあるか」、そして「ターゲットがどこにいるのか」を見極めることが非常に重要だと思っています。
ニッチな商材の場合、手当たり次第に思いついた施策を全部やっても、効果が出ないケースが多いんです。
だからこそ、やみくもに打つのではなく、「効果が期待できそうな施策を絞り込む」ことが大切になります。
ニチマイ様の場合は、すでに商材のターゲットとなるリードとのつながりが一定数ありました。
そのため、有効なリストを資産として活かし、メールマーケティングを中心にコンテンツを届けるような施策を一緒に進めさせていただきました。
菊池氏:
なるほど。つまり、企業ごとに保有している資産、例えば顧客リストの量・質によって、進めるべき施策の優先順位も変わってくるということですね。
すでに見込み顧客との接点が豊富にあるなら、既存の接点を活かす施策の方が、成功に近づきやすい。そういった判断ができるかどうかが、マーケティング戦略の鍵になるんですね。
3. 実際に取り組んだマーケティング施策
株式会社ニチマイ様が実際に取り組んだマーケティング施策の中でも「成果につながった施策」について、詳しく伺いました。
マーケティングの施策取り組みの軌跡
石川氏:
初年度(2023年):「基盤構築期」
まずはサービスサイトを立ち上げ、コンバージョンが発生する状態をつくることが最大の目標でした。
そのために、事業の再整理・統合を行い、初期戦略の設計を実施。サイト公開後は、SEO記事やホワイトペーパーの作成を通じて、コンテンツの仕込みに注力しました。
2年目(2024年):「リード成果創出期」
一定のCV(コンバージョン)を得られるようになった段階で、継続的な成果創出のために施策を強化していきました。
具体的には、SEO記事の継続的な制作やリライト、小さな改善も含めたサイト改善を進めました。さらに、ホワイトペーパーの導入事例も増やし、コンテンツ資産の幅を広げていきました。
3年目(2025年):「CV強化期」
現在は、CV(コンバージョン)をさらに伸ばし、成果をより強固なものにしていくフェーズに入っています。
これまで通り記事制作やリライトは継続しつつ、新たにセミナーの実施も予定しています。
菊池氏:
多岐にわたる施策を着実に進められていて、しかも新しい施策も次々に加わっているのは本当にすごいですね。
本セッションでは、ニチマイ様が実際に取り組まれた施策の中で特に成果につながった施策についてお教えいただきました。 本レポートでは、その中でもSEO施策とメールマーケティングについて抜粋してご紹介します。(そのほか、内部リンク対策やCTAボタンの改善などについてもお話しいただきました。詳細はセミナーアーカイブ動画をご覧ください。) |
成果につながった施策 SEO記事制作による流入獲得
公開から半年で60本以上の記事を公開。オーガニック流入は初年度(2023年)で約25,000セッションを獲得したSEO施策について伺いました。
SEO記事制作に注力した理由
菊池氏:
SEO施策として、半年間で60本以上の記事を書くというのは、並大抵のことではありませんよね。
CS担当の坂本さんにお聞きしたいのですが、ニチマイ様はサイト立ち上げ直後から、「記事に注力する」という戦略に大きく振り切っていましたよね。
あれだけ早い段階で明確に方針を打ち出されたのには、何か理由があったのでしょうか?
坂本氏:
施策の選択肢はいろいろあったとは思いますが、今回は記事施策にしっかり注力しようという判断をしました。
主な理由は、ニチマイ様のサービスがニッチで、提供対象が比較的明確だった点です。
ニーズが限定的で、検索されるキーワードもある程度絞り込まれるため、SEO施策との相性が良いと考えました。
また、ニチマイ様は「新規顧客の開拓」を大きな目的として掲げており、記事コンテンツを通じてその実現が十分可能だと思ったんです。
さらに、既存のお客様とのコミュニケーションを深めたり、新たな商談につなげたりする上でも、コンテンツは資産として活用しやすいです。
そうした観点から、記事に注力するというお話を、初期段階でさせていただきました。
SEOキーワード選定の流れ
坂本氏:
記事執筆前のキーワード選定についてはスライド記載の流れで進めていきました。
ニチマイ様の場合、マーケティングチームのメンバーが営業と兼務されていたこともあり、お客様の解像度が非常に高かったんです。
そのため、「ターゲットの方がどんなことで悩んでいるのか」といった知見をしっかりと言語化することができました。
そして、それぞれの悩みに対して「どんなキーワードで検索されるか」を想定し、サジェストツールなどを使ってキーワードを洗い出していきました。
そのうえで、競合サイトの対策状況や検索ボリュームを確認し、「このキーワードなら成果が見込めるかどうか」という観点から優先順位を決めて、記事を制作していく形で進めましたね。
SEO記事制作のコツ
菊池氏:
半年で60本の記事を仕上げるって、やっぱり大変なことだと思います。
何かうまく進めるコツのようなものはあったのでしょうか?
石川氏:
記事はマーケティングチームで持ち回りで執筆していきました。各メンバーが時間を確保して、使命感を持って取り組んでくれたことが大きかったですね。
一部の記事はferretさんに外注もお願いしましたが、単に丸投げするのではなく、納品された記事に対しても全員でしっかりチェックを入れました。
執筆担当者がコメントを付けたり、修正案を出し合ったりしながら、丁寧に仕上げていったんです。
かなりの労力がかかりましたが、それだけに協力してくれたメンバーには本当に感謝しています。
菊池氏:
なるほど。ポイントは社内の皆さんの協力も得ながら、チーム全体で力を合わせて進めてこられたことなのですね。
成果につながった施策 メールマーケティング
開封率20%、クリック率10%と高いパフォーマンスを発揮しているメルマガを週1回配信し続けられている秘訣について伺いました。
メールマーケティングのポイント
菊池氏:
メールマーケティングを実施する上でのポイントは何でしょうか?
石川氏:
まず大事なのは、「ネタをしっかり用意すること」だと思います。
たとえば、SEO記事が公開されたらそれを紹介する。イベントがあれば、その告知をする。
このような流れです。
菊池氏:
何かしら紹介できるコンテンツを継続的に生み出すことで、メルマガ配信のネタ切れを防ぎつつ、定期的に届ける体制をつくっていったわけですね。
メールマーケティングの改善施策の例
菊池氏:
続いて、坂本さんにお伺いしたいのですが、メールマーケティングを運用する中で取り組まれた改善施策について、具体的な事例があれば教えてください。
坂本氏:
ニチマイ様が発信される記事は、顧客理解が非常に深く、内容もターゲットにしっかり刺さっていました。
そのため、メールの開封率は常に20%前後と非常に良好な状態を維持できており、クリック率も10%以上と、高いパフォーマンスをキープされていました。
菊池氏:
かなりの高パフォーマンスですね!
坂本氏:
そうなんですよね。ただ、メールの開封率が少し下がって来たことがありました。
そのタイミングで当時ご提案したのは、「メールタイトルの見せ方を見直すこと」。
具体的には、タイトルの前に入れていた【】を外し、全体をより短く、シンプルにする形に変更しました。
その結果、開封率が3〜5%ほど改善したんです。
もちろん、お客様の特性も影響しているとは思いますが、非常に効果の大きい改善施策だったと感じています。
菊池氏:
今は、毎日何十通ものメールが届く時代ですからね。
タイトルを短く・シンプルにすることは、それだけで「目に留まるかどうか」に大きく影響してくるのかもしれません。
メルマガについての顧客の反響
菊池氏:
メール配信について、既存のお客様から反響があったと伺いました。どのようなお声があったのでしょうか?
石川氏:
はい、既存のお客様から「メルマガ読んでますよ」とか「毎回楽しみにしています」と声をかけていただくことが増えてきました。
そう言ってもらえるのは本当にありがたいですし、続けてきてよかったなと感じますね。
TOPIC 営業兼務のマーケティング組織で安定運用を実現させた仕組み
多くの企業では、マーケティングチーム自体はあっても「リソースが潤沢にある」というケースはまれで、「余っている人材がいる」なんて話はほとんど聞きません。
今いるメンバーだけでどうやって回していくか。まさに現場の皆さんが直面している課題だと思います。
株式会社ニチマイ様は、兼務のメンバーのみでありながら、しっかり成果を出されています。
▼株式会社ニチマイ様の成果
「そうした兼務しながらも確実に進められる仕組みって、一体どんな仕組みなんだろう?」と、多くの方が気になっているのではないでしょうか。
そこで、「営業兼務のマーケティング組織で安定運用を実現させた仕組み」の裏側について、お話を伺いました。
本業の営業活動とマーケ業務の両立のコツ
菊池氏:
本業である営業活動と、兼務でのマーケティング業務。
実際には、どのようにバランスを取りながら進めてこられたのでしょうか?
石川氏:
司令塔ポジションを設ける
まず、マーケティングチームは5名体制なのですが、「司令塔ポジション」をしっかり立てたことが大きかったと思います。
誰かが全体を見ていないと、どうしても施策が進みにくくなります。
私はその司令塔として、チームメンバーが動きやすいように環境を整える役割を担っています。
具体的には、全体施策の統括やferretさんとの橋渡し、タスクの割り振りやスケジュール管理、「締切が近いですよ」といったリマインドなど、細かなマネジメントを通じてチームがスムーズに動けるよう意識しています。
ノウハウ・リソースは外部コンサルティングを活用
当社にはマーケティングの専門家がいないため、ノウハウ面は外部のコンサルティング(ferret)をしっかり活用させていただいています。
会議でも積極的に質問しながら、サポートを受けつつ進めているのが実情です。
プロジェクト管理ツールを活用
「ferret One」以外のツールでは、「Redmine」というプロジェクト管理ツールも活用しています。
週に1回の定例ミーティングをより効率的に進めるため、事前にRedmine上で課題を共有したり、意見を募ったりしています。
実際の「Redmine」のこちらの画面がこのスライドです。
左側に各チケット(案件)、右側にその詳細情報が表示されていて、案件ごとにグルーピングしながらタスクを振り分けています。
菊池氏:
こうしたツールを活用することで、タスクの抜け・漏れを防ぎつつ、確実に進行できる体制が整えているんですね。とても参考になります。
マーケティングの優先度が下がらないコツ
菊池氏:
マーケティングの優先度が下がらないようにしたコツはあったのですか?
石川氏:
営業管理職をマーケティング担当に任命
マーケティングの担当者は営業管理職です。
現場で営業活動も行っている方々ですが、同時に「マーケティングの重要性」を誰よりも理解しているメンバーでもあることは大きいと思います。
会議体の時間割り振りを変更
次に工夫したのが、営業会議の時間配分の見直しです。
従来の営業会議の一部をマーケティング関連の会議に充てるようにし、かつ、会議中に決定まで持っていけるような場としています。
MUSTタスクの固定で習慣化
記事執筆などのマーケティングタスクは「MUST(必須)」として設定しています。
それぞれが自らのスケジュールを工夫し、責任を持ってやり切ってくれています。
成果共有でモチベーションアップ
さらに、成果が出たときには営業管理職だけでなく、営業部全体や上層部にも共有しています。チーム全体で成果を喜び合うことで、モチベーションを高く維持する工夫をしています。
坂本氏:
「やりましょう」とご提案しても、途中で止まってしまう企業さんは、実は少なくありません。
その点、ニチマイ様は非常に印象的でした。
記事執筆などのタスクが、すでにルーティンとして定着していて、「書くのが当たり前」という意識がきちんと根づいているんです。
このように、業務の中に自然と組み込まれているからこそ、半年間で60本もの記事を公開できたのだと思います。
この運用体制と文化は、本当に素晴らしいと感じています。
社内の意識改革
菊池氏:
ニチマイ様がマーケティングに取り組んでいく中で、社内の意識に変化があった場面はありましたか?
石川氏:
当社では、マーケティング施策の進捗と成果について、四半期ごとの会議で上層部に随時報告しています。
それを継続的に行うことで、社内全体にもマーケティングの感覚みたいなものが少しずつ養われているように感じます。
また、機会があるたびに、上層部だけでなく業務部門にも施策内容を共有するようにしています。
菊池氏:
確かに、上層部へ定期的に成果を報告し続けている企業様は、マーケティング施策が成果につながっているケースが多い印象です。
それに、社内理解がしっかり得られているという点でも、成功企業に共通する特徴かもしれませんね。
ところで、スライドにある「代表取締役からのお声」がとても気になったのですが、よろしければご紹介いただけますか?
石川氏:
マーケティングツール「ferret One」を導入する際、正直なところ、当社にとっては決して安くない投資でした。そのため、社内には反対や不安の声もありました。
そんな中で、代表が言ってくれた言葉が印象に残っています。
「Webマーケティングくんっていう新入社員を採用したと思って、みんなで育てていこうね」と。
この言葉を聞いたとき、私自身も「この基盤をすごく大事にしていきたい。継続的に成果を出していきたい。」と強く思いました。
菊池氏:
ありがとうございます。
「Webマーケティングくん」という人件費としての視点でツール・サービス導入を捉えるという発想。
それだけの価値や意義があるものなんだと、トップから明確なメッセージが出ると、現場の方々も「自分たちがやる意味」を実感できると思います。
営業の皆さんや社内全体にも、その言葉が確実に伝わっているはずですし、こうしたトップダウンでの後押しがあること自体、すごく大きな成功要因だと感じました。
本当に素敵なお話をありがとうございます。
さいごに
最後に石川様から、これからマーケティングを推進しようと考えている企業さんへメッセージをいただきました。
石川氏:
Webマーケティングは、「やること自体」に大きな意味があると、私自身、実感しています。
まずはやれる環境をきちんと整えること。
そして、その環境が整ったら、実際に施策をどんどん実行していくことが何よりも重要だと思います。
これから取り組まれる皆さんも、頑張っていきましょう。
―――石川様、ありがとうございました!
ニチマイ様も使っている「ferret」資料ダウンロード
株式会社ニチマイ様がご活用くださっていた「ferret」は、BtoBマーケティングに必要なツールとコンサル・代行支援を提供するサービスです。
マーケティングの知識がなくても、誰もがカンタンにマーケティングが実行できるように各企業の課題に合わせたサポートを行います。
BtoBマーケティングに関するご相談も受け付けております。ご興味のある方はぜひ資料をご覧ください。