カスタマーサクセスとは何か?担当者が注意すべき4つのポイントと実態を語る!
近年耳にすることが増えた「カスタマーサクセス」という言葉。社内にカスタマーサクセスの該当部門がない場合、ちょっと実態がつかみにくいですよね。
そこでこの記事では、カスタマーサクセスとは何なのかを解説したうえで、「ferret One」カスタマーサクセスグループのマネージャーに、カスタマーサクセスについて語ってもらいました。
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カスタマーサクセスとは何か? カスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスとは、クライアントに自社サービスを使いこなしてもらい、ビジネスが成功するよう手助けすることです。能動的に顧客へアプローチし、自社サービスの活用方法を提案します。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートとの違い
カスタマーサポートとは、顧客の要望に対して受動的に対応する職種です。顧客が自社のサービスを活用する中で発生した疑問や問題を解決することにより、顧客満足を得ることが目的です。
一方カスタマーサクセスは、能動的に顧客に働きかけ、顧客のビジネスの成功のために自社のサービスを最大限活用できるよう支援します。自社の製品を活用した顧客の事業の成功が最大の目的です。
カスタマーサクセスの重要性とは?
カスタマーサクセスの役割は、顧客に対し自社サービスの活用具合を確認・フォローすることです。顧客へ積極的にアプローチし、助言や顧客の事業成功への提案を行います。
顧客が自社サービスを活用し結果を出せれば、自社サービスに対する価値が上がるでしょう。費用対効果が高いと判断されれば、結果として自社サービスの長期継続に繋がるため、重要視されているのです。
カスタマーサクセスの仕事内容とは?
カスタマーサクセスの仕事内容を見ていきましょう。
サービスの継続利用獲得
一度導入されたとしても、自社サービスの本領が発揮される前に解約されては意味がありません。
継続的に収益を上げ続けるためには、自社サービスを選び続けてもらうことが必要です。
顧客の事業成功への自社サービスを活用した戦略を積極的に提案し、能動的に顧客へアプローチします。結果に繋がれば、顧客から高く評価され、顧客にとって必要不可欠な存在となり、継続利用獲得へと繋がるのです。
アップセル・クロスセルの促進
アップセル・クロスセルもカスタマーサクセスの重要な仕事の一つです。
アップセルとは、より上位プランへのプランアップ契約。クロスセルは、別の商品を追加で契約してもらうことを指します。
顧客の事業のことを誰よりも理解しているカスタマーサクセス担当だからこそ、顧客にとってプラスとなる商品の追加提案が可能です。顧客にとってプラスの提案になるだけでなく、単価アップは自社の増益に繋がります。
自社サービスの販売促進
カスタマーサクセスの仕事は、間接的に「見込み顧客への販売促進」にも貢献します。見込み顧客へ導入を後押しするのは、既に導入している顧客の導入事例や実績です。
成功している顧客の、自社サービスの活用方法や戦略を理解しているのは、カスタマーサクセス担当です。詳細を熟知しているカスタマーサクセス担当からの話は、見込み顧客にとってリアリティがあるので、高い成約を実現できます。
カスタマーサクセスのKPIはどこに設定すべきか
カスタマーサクセスを追求していくうえで、重要なKPIの指標は以下の通りです。
解約率(チャーンレート)
解約率とは、顧客数から見た解約数を割った数値です。
既存顧客から利用継続してもらうだけで収益が安定するのは、サブスクリプション型サービスの特徴です。解約は、減益に直結します。顧客満足を高め、解約を回避することはカスタマーサクセスの重要な指標です。
- カスタマーチャーンレート=(今月解約されたアカウント数/前月のアカウント数)×100
- レベニューチャーンレート=(サービス単価×今月解約されたアカウント数)/今月の総収益×100
カスタマーチャーンは、単純に顧客数からみた解約率、レベニューチャーンは、売上額からみる解約率です。
上記二つより解約率を算出し、KPIを設定しましょう。
オンボーディング完了率
オンボーディング完了率とは、顧客が自社サービスを理解し、定着した状態になるまでの期間のことです。
自社サービスが定着した状態(=オンボーディング)とは、「自社サービスの基本的な操作方法を理解し、初期設定が完了後、運用が開始された」状態をさします。
長期間オンボーディングが未完了状態の顧客は、解約される可能性が高いのです。まず最初に達成すべき優先度の高い課題となるため、オンボーディング率は重要視されます。
- オンボーディング完了率=(完了した企業/オンボーディング期間の全企業)×100
社内でオンボーディング完了の定義付けを行った後、オンボーディング完了率を算出し、KPIを設定しましょう。
アップセル/クロスセル率
アップセル率とは、自社サービスが複数ある場合に上位プランへ移行できた割合です。クロスセル率とは、関連サービスの追加発注の割合のことを指します。
継続契約による収益がベースとなるサービスの場合、顧客単価アップが増益の要となるため、重要度が高いのです。
アップセル率とクロスセル率は、全顧客に占める割合を見るのが一般的です。売上で見る場合は、顧客単価を算出します。
しかし、むやみにアップセル/クロスセルを提案すると、解約に直結します。アップセル/クロスセルを成功させるためには、顧客への的確な理解と提案が必要です。アップセル/クロスセル率のKPI設定は、慎重に行いましょう。
顧客推奨度(NPS)
NPSとは、「企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるか」を数値化する指標で、顧客ロイヤルティを把握できます。
顧客ロイヤリティとは、自社サービスに対する顧客の信頼度・愛着度のことです。
「〇〇を知人にお薦めしますか? 0~10の11段階でお答えください」
「その理由を教えてください」
上記のように、他者への推奨度を聞くことで、NPSを算出します。NPSは、業績と非常に相関関係が高いことが特徴です。NPSを高めることが、業績向上に直結するため重要視されています。
- NPS算出方法
9~10点を付けた顧客を「推奨者」、7~8点を「中立者」、0~6点を「批判者」と分類
回答者全体に占める推奨者の割合(%) ー 批判者の割合(%)=NPSスコア
推奨者の割合が多く、批判者の割合が低いほどNPSスコアが高いと判断されます。
NPSは世界共通の指標であるため、競合サービスと自社サービスの比較が可能なので、KPIも設定しやすいでしょう。
なお、KPIの設定方法は、プロダクトや事業フェーズによってもさまざまです。今回は代表的な例をご紹介しましたが、自社の事業にあった指標は何か、随時見直しをはかることも大切です。
今、「カスタマーサクセス」が注目される理由とは?
カスタマーサクセスとはどのようなものなのか、概要はつかめてきたと思います。さらに理解を深めるため、「ferret One」カスタマーサクセスグループのマネージャーにより詳しく語ってもらいました。
塚本雄介(つかもとゆうすけ)
株式会社ベーシック SaaS事業部 カスタマーサクセス部
カスタマーサクセスグループ マネージャーコンシューマー向けインターネットサービスプロバイダの営業、サービス企画を経て、リテンションマーケティング、データ分析に取り組む。2017年に株式会社ベーシックに入社し、Webマーケティングツール「ferret One」の導入支援や活用支援を担当後、カスタマーサクセスグループのマネージャーに就任。現在は2拠点に分かれたチームの意思をまとめるべく、チーム作りに奔走中。
Twitterアカウントは@kakusatellite
─最近、スタートアップ企業を中心にカスタマーサクセス部門が急増した印象がありますが、なぜでしょうか?
この背景には、サブスクリプションサービスの普及があると考えています。
サブスクリプションサービスが一般的でなかった頃のIT業界では、システムやアプリケーションの納品がゴールでした。
しかし、月契約が主になるサブスクリプションサービスのゴールは、契約の一歩先にあります。サービスを利用するクライアントが求めるのはシステムやアプリケーションの機能ではなく、「サービスを利用することで得られる、ビジネス上の成果」だからです。
カスタマーサクセス部門は、そうしたクライアントのニーズに応えるために生まれた部門なんです。
─ferret Oneのカスタマーサクセス部は、どんな体制なんですか?
2019年4月現在、カスタマーサクセス部には26名が在籍しています。
その中で、オンボーディング(導入支援)を行うグループや、コンテンツの制作を行うグループなどに分かれており、導入後のサポートやリテンション(顧客との関係を維持していく活動)を行うカスタマーサクセスグループは、私を含めて5名。東京と宮崎に拠点があります。
ただ、社内の所属も名刺の肩書も、「カスタマーサクセスグループ」なんですが、対クライアント向けには、「カスタマーサポート」という名前で活動しているんです。対外的にわかりやすい名前にしています。
─ferret Oneのカスタマーサクセスグループの業務を具体的に教えてください。
弊社のWebマーケティングツール「ferret One」は、導入決定から実際の運用まで約4ヶ月かかるサービス。最初の4ヶ月間のオンボーディングを担当するのは導入支援グループです。
私たちカスタマーサクセスグループの役割は、オンボーディングが終わった後のお客様のフォローアップ。アクティベーション(活用)率を見ながら、もっと活用していただける方法がないかを考えます。
そのために定期的にヒアリングを行っていますが、お聞きする内容はクライアントによって千差万別。課題が明確になっているお客様の場合はご相談にのりますし、オンボーディング時に決めた目標やフローで問題がないか、こちらから進捗を確認することもあります。
SaaSあるある!?「導入したもののどうすれば良いのかわからない」
─ferret Oneにはどんなクライアントや担当者が多いのでしょうか?
最近は従業員数100名以上のBtoB企業が増えています。業種でいくと、情報通信やコンサルティングでしょうか。
時代の流れもあり、「Webでの問題を解決したい」という意識を持ってferret Oneを導入いただくんですが、「導入したものの、次にどうすれば良いのか…」というお悩みをお持ちのご担当者が多いですね。
これまでの業務と兼務でWeb担当やマーケティング担当になった方が多く、「マーケティングに関わるのは初めて」というケースも珍しくありません。そこで、「セッション」、「PV(ページビュー)」、「CV(コンバージョン)」などの基本的な用語説明から入ることも多いですね。
─具体的には、どんなケースがあるんでしょう?
いろいろありますが、「成果が出ない」というクライアントのご相談にのったところ、実は目標が設定されていなかったことがありました。その場合はまず、何に関してどれくらいの数値があれば「成果が出た」と言えるのか整理する必要があります。
また、施策を実行するためには上司の決裁が必要だけれど、それまでに何を用意すべきかわからない、どう検討材料を挙げて良いかわからない、というケースはよくあります。漠然と、「どうすれば良いでしょうか?」と聞かれることもあります。
─漠然としたお悩みには、どう答えているんですか?
まず、いつまでに何をしなければならないのか、どんな関連部署や障害があるのかを確認します。
例えば、インフラ担当のエンジニアなど、社内にどういうプレイヤーがいてリリースまでに何が必要なのか、といったそもそものところからご相談いただけると、さまざまな選択肢をご提案しやすいですね。ferret Oneの機能を使ってボタンひとつで設定できることもあれば、時間が必要な事柄もあるので。
弊社にはサイト公開の実績がたくさんあるので、ざっくばらんにご相談いただければ、「できるものとできないもの、必要なものと不要なもの」のジャッジやタスクの優先順位付けもします。
それも何も、一刻も早くご担当者には施策に集中して欲しいんです。カスタマーサクセスにとっては、そこがゴールかなと思いますね。
初めてWeb担当・マーケ担当になったときに陥りやすい「4つの迷子」とは?
─Web担当・マーケ担当になったばかりの方が陥りがちな失敗や、よくあるお悩みはありますか?
そうですね。カスタマーサクセスとしてご相談にのる中でよく出会うのが、次の「4つの迷子」になるケースでしょうか。普段は仕事のできる人が、気づかないうちに陥る可能性があるトラップです。
1. KPI迷子
よく見かけるのが、KGIと紐づけないままアクセス数をKPIとしてむやみに追い続けるケースです。
仮に、お問い合わせからの受注率が20%のサービスがあるとします。月5件の受注が欲しい場合、必要なリード(お問い合わせ)は月25件ですよね。(25リード×0.2=5件受注)
お問い合わせに繋がるCVRが1%とすると、月2,500件のアクセスがあればOKです。(2,500アクセス×0.01=25リード)
ところが、「Webを作るなら1万アクセスは欲しい」など、脈絡のないKPIを設定して迷走してしまうことがよくあります。
▼KPI迷子については、こちらの記事で詳しく解説しています
教えて!Webマーケ・サイト制作の疑問 第3回「KPI設定の疑問を解決!」
2. デザイン迷子
サイトのUIやデザインにこだわり過ぎて、施策に割く時間がなくなるケースです。KPI迷子と併発することもあり、「アクセス数が伸びないのはサイトのデザインが良くないせいだ」と思い込んで、デザインの改善にのめり込んでしまうんです。
3. シナリオ迷子
「お問い合わせ」にも誘導したいし、「資料請求」にも誘導したい。さらには、こちらの特集ページにも…と、欲張ってしまってシナリオを絞り込めないケースです。サイトを訪れたエンドユーザーの行動シナリオを描けないと、成果を出すのは難しくなります。
4. コンテンツ迷子
SEO用のキーワードを見ても具体的なコンテンツが思いつかない、Webサイト用の記事として何を書いて良いのかわからない、というケースです。
この4つの迷子に共通しているのは、「Webサイトになったとたん、何をすべきかわからなくなる」というトラップです。
- 普段は営業としてKPIを運用しているのにWebサイトになったとたん、捕捉できる数値が多すぎてどれを追いかけて良いかわからなくなる。
- パンフレット制作に際限なく時間をかけることはないのに、Webサイトのデザインは延々と改良し続けてしまう。
- お問い合わせのあったところに資料を送付して、フォローコールを入れて…既に営業フローは出来上がっているのに、Webサイトだとどこに落とし込めば良いのかわからない。
- 普段からセミナーも開催しているし、パンフレットや営業資料などの必要資料は揃っているのに、Webサイトでは何を見せて何をダウンロードしてもらうべきか迷ってしまう。
すべて普段は当たり前に出来ていることが、「Webサイト」という前提に立ったとたんにできなくなる、という現象です。でも、オンラインであってもオフラインであっても、「売りたい相手を想像して、必要な情報を渡していく」ということに変わりはありません。
Webサイト迷子になっているクライアントに、「普段どうやって受注しているんですか」というところからお聞きすると、すんなりとフローやツールが出てくるんです。あとは、それをWeb上に配置するだけ。
Webと向き合うのではなく、エンドユーザーと向き合うことで、自然と答えが出てきます。
カスタマーサクセスの役割は翻訳すること
─オフラインでは当たり前にやっていることが、Webサイトになるとできなくなってしまうのは興味深いですね。
言葉に対するハードルもあるのかもしれません。例えば、「ペルソナ」って聞くだけで固まっちゃう。でも、「この人なら売れるなっていう人がペルソナですよ」と説明すると、納得してもらえます。
Webやマーケティング用語は横文字を使うことが多いので、必要に応じて言い換えることも大切です。状況に合わせて、用語や何をすべきかを翻訳するのがカスタマーサクセスの役割だと思っています。
─カスタマーサクセスとして、クライアントにどんな風にサービスを使って欲しいですか?
「これをやれば売れる」という必勝法がないなかで、劇的に打率を上げるのは難しいですよね。ならば、打席に立つ数を増やす。ferret Oneは、そのためのツールです。
簡単にWebサイトを更新できるのがferret Oneの強み。例えば、ボタンの位置を変える、ボタンの文言を変えるといった作業が5分でできます。
前職では自分自身がWeb担当でした。自分でメルマガは書けても、ページに新しいボタンを設置することが難しかったり、ページを作るたびに1週間かかったり、施策が回らずに悩まされていたので、2年前の自分にferret Oneを教えたいくらいです。そうしたら、今こうやってカスタマーサクセスに携わることはなかったかもしれませんが。
話がそれましたが、前職の経験からも、「最終的にはどれだけ施策を打てるかが、成果を左右する」ということを実感しています。エンドユーザーについてよく知っているのはクライアントなので、どんどん施策を打って、数値を見ながら最適解を見つけて行って欲しいですね。
ferret OneはPDCAを早く回すためのツールなので、PDCAを回さないと意味がないんです。
─今後、カスタマーサクセスとしてどんなサービスを提供していきたいですか?
大事にしているのは、クライアントと一緒にエンドユーザーに向き合うことです。クライアントのためになっているかも大切ですが、サイトデザインひとつとっても、その先のエンドユーザーのためになっているかという視点を忘れないようにしています。
また、サポートをしているなかで自分を指名していただいたときは本当に嬉しいんですが、クライアントだけでferret Oneを使いこなせる状況が理想なので、「サポートがいなくても使えるツール」を目指して、いかに自分たちの存在感を消せるかにチャレンジしていきます!
クライアントの状況に合わせた社内用の調整資料を用意するなど、ツールも拡充したいですね。ferret Oneユーザー交流会やウェビナー形式での勉強会も随時企画中です!
塚本のTwitterアカウントはこちら:@kakusatellite
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