ABMとは?BtoBマーケティングで役立つ理由と成功事例
ABM(Account・ Based・ Marketing)は既存のBtoBマーケティングをより加速させる手法です。欧米企業でもトレンドになっており、マーケティング戦略として近年国内でも注目されつつあります。
MA(マーケティングオートメーション)やSFA(セールスフォースオートメーション)のようなマーケティングツールが普及したことが、ABMが注目され始めている背景となっているのです。
この記事では、ABMがBtoBマーケティングで重要視されている理由やMAやSFAとの関係性の解説に加え、具体的な導入手順や成功事例も紹介します。
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目次[非表示]
ABMとは?簡単に解説
ABMとは、選定された顧客に対して訴求を行うマーケティング戦略です。
従来のマーケティングは、ペルソナ設計後に訴求を広く行い成約を取る手法でした。それに対してABMは、既存の顧客リスト情報を元に、自社製品の成約につながりそうな顧客を選定します。自社にとってより価値の高い顧客だけに絞り込み、業務効率化と生産性の向上を狙うのです。
ABMでもっとも重要なのが、顧客が抱える潜在的な悩みや課題を起点に仮説を立てることです。仮説による効果検証を行いながら、選定した顧客への訴求を最適化して課題解決のための提案を行います。
ABMがBtoBマーケティングで生きる理由
BtoBマーケティングでABMをおすすめする理由は、以下の3つです。
- BtoB向け製品は高額な場合が多いため
- 営業部門とマーケティング部門の連携を取るため
- 顧客との関係性を良好に維持するため
理由①:BtoB向け商品は高額なサービスが多いため
ABMは高額なBtoB向け製品であっても、成約に結びつきそうな顧客リストを選定して成約率を向上させます。
広くリーチして見込み顧客を増やしても成約につながらなければ意味がありません。高額製品なので成約しづらいと考えるのではなく、既存の顧客リストから自社製品がもっとも価値提供できる最適な顧客を絞り込むことで、成約率を向上できるでしょう。
ABMは認知目的の訴求や広く浅い訴求ではなく、セグメントされた顧客ごとにアプローチしてマーケティング効果を最大化するのです。
理由②:営業部門とマーケティング部門の連携を取るため
ABMの導入は営業とマーケティングの連携を最適化して成約率を向上させます。
最近ではインサイドセールスやMAの導入に積極的な企業が増えています。しかし、導入後の関係部門の連携が難しいと課題を感じる企業も多いのも現状です。
ABMは事業目標から顧客選定を行うためターゲット顧客が明確になり、共通のKPIを部門間で共有しやすくなります。その結果、営業部門とマーケティング部門などの関係部門の連携が取りやすくなり業務が効率化され生産性が向上するのです。
理由③:顧客との関係性を良好に維持するため
ABMは自社製品で課題解決ができる顧客をターゲットにするため、信頼が得られやすく良好な関係性を築きやすい特徴があります。
ABMは自社により価値の高い顧客をターゲティングするのが基本ですが、リピーターになりやすい顧客選定も重要です。
顧客が抱える課題に対して継続的なサポートを続ければ、信頼を得られ関係性を良好なまま維持できるので中長期的な成約も可能になります。
ABMとMA・SFA・インサイドセールスの違いを解説
ABMと混同する言葉に「MA(マーケティングオートメーション)」や「SFA(セールスフォースオートメーション)」などがあります。
以下にABMと混同する言葉を表にまとめました。
ABM |
自社にとって価値の高い顧客を選び最適なマーケティング戦略を実行する手法 |
MA |
リード獲得から見込み顧客の育成までを自動化するツール。不特定多数の顧客を一人ひとり管理します |
SFA |
顧客情報や商談化案件を一元管理して営業活動を支援するツール |
インサイド
セールス
|
電話やメールなどを使いアポイント獲得や成約までを行う営業手法
顧客育成も行う
|
フィールド
セールス
|
マーケティング部門からの顧客リストを活用して訪問営業を行う |
※細かい役割は、企業やサービスによっても異なります
それぞれの言葉は、作業工程も異なりますが、全て連動した動きが可能です。
具体的には、まずABMで顧客リストから最適なターゲット顧客を選定。その後インサイドセールスでターゲット顧客にアプローチをかけ商談につなげます。引き続きインサイドセールスが成約まで行う場合もあれば、フィールドセールスに商談を渡して成約獲得も可能でしょう。
業務効率化の面では、MAでターゲット顧客を商談化させるためのリード育成を自動化させつつ、新規のリード獲得も行います。またSFAでインサイドセールスとフィールドセールスの営業活動を一元管理します。ツールを活用して作業工数の削減や効率化を実現させるのです。
ABM導入による3つのメリット
ABMの導入には以下の3つのメリットがあります。
- 営業とマーケティング部門の連携を円滑にする
- マーケティングのリソースを効率的に活用できる
- PDCAを効果的に回せる
営業とマーケティング部門の連携を円滑にする
ABMによるターゲット顧客の明確化は、事業目標に対するKPIを共有しやすくなるため、マーケティング部門と営業部門のコミュニケーションが円滑になります。
ABMはターゲティングから成約につながるまでを事業目標として考えなければならないため、関係する部門すべてが成約までのセールスについて思考する必要があるのです。
各部門が共通して顧客のターゲティングからセールスまでを考えられる体制を作れると、コミュニケーションが円滑になり、業務効率化とともに成約率の向上につながります。
マーケティングのリソースを効率的に活用できる
ABMによる効果的なターゲティングによって、たとえリソースが限られていても生産性を向上することが可能になります。
社内の人材や資金は限られているため、成約の見込めない顧客に積極的にセールスするのは避けなければいけません。成約の見込める顧客に集中してマーケティングとセールスを行えば、リソースを削減しながらも成約数向上が可能になるのです。
ABMを効果的に活用すれば、コスト削減と成約率アップによる利益率向上に貢献できるでしょう。
PDCAを効果的に回せる
ABMを活用すれば分析するターゲットの母数を限定できるため、効果測定しやすくなります。効果測定による分析をスピーディに行えるようになるとPDCAも高速で回せるため、成果に結びつきやすくなるのです。
また、成果としてROI(Return On Investment)が明確に数値化されるため、マーケティングやセールスの分析に活用できます。
ROIとは投資利益率のことで、広告費に対して売上からコストを差し引いた利益がどれくらいの割合で発生したかを算出する指標です。ROIのようなコストを用いた指標はPDCAを回すために不可欠な要素なので、成約への施策を講じる際は必ず設定しておきましょう。
ABM導入による2つのデメリット
ABM導入のデメリットは以下の2つです。
ABM導入から体制を整えるまでに時間がかかる
組織内の連携が取れていない状態であれば、ABM導入から連携できる体制を整えるまでに時間がかかります。ABMで効果を上げるためにはマーケティング部門と営業部門の連携が必要不可欠です。
ABMは成約までのKPIを各部門で共有し合い、より効率的に業務工程をこなせるよう協働する意識付けが必要です。各部門の連携が取れていない場合は、体制構築に時間をかけすぎないようマネジメントできる人材の配置が求められます。
顧客リストが少ないとターゲティングできない
そもそも顧客リストが少なく商談までのデータが蓄積されていない場合は、ABMを有効に活用できない可能性があります。顧客データが少ないとターゲティングの指標を定めにくくなるからです。
ABMは膨大な顧客リストの中からより価値の高い顧客を選定することで成約率や利益率の向上につなげる戦略です。顧客情報が少ない企業や営業データを蓄積できていない企業は、まずデータ蓄積に注力するべきでしょう。リード獲得からリード育成を行い、商談獲得や案件成約につなげる工程のなかで顧客情報を蓄積させていきましょう。
ABMの導入が効果的な企業とは?
ABMは性質上、導入に向き不向きがあり、大企業をターゲットにマーケティングを実施する企業に向いています。
ABMは、自社に利益のある特定の顧客に絞ってアピールするマーケティング戦略です。そのため、国内に多数ある中小企業をターゲットにすると、マーケティングに対するリソースが削減できるというメリットが活かせません。
また、選抜したターゲットには最大の利益を求めるため、継続的な売上が必要となります。そのため、契約数は少なくても、サービスの単価が高く、アップセルやクロスセルで長くサービスを提供することで利益を得るビジネスモデルの企業にはおすすめの戦略です。
一方、新規顧客の獲得をメインとしたマーケティングや、商談期間が短く、単価が低いサービスを提供している企業では、高い効果を期待できない可能性があります。
ABMをBtoBマーケティングで実施するための進め方
ABMを実践するためには以下の手順で進めるのが良いでしょう。
- 事業目標を元に導入検討
- LTVを重視したABM戦略を練る
- チーム編成と各部門の連携
- LTVの高い顧客を洗い出す
- 自社コンテンツでの訴求軸の決定
- 最適なチャネルを決定
- キャンペーンの実施
- 効果測定と改善
ABMは憶測や感覚でターゲティングすると期待する効果は得られません。正しい手順でABMを導入して効果を得るために、以下の手順を参考にしてみてください。
①:事業目標を元に導入検討
いきなり導入するのではなく、そもそも自社にABMが必要であるかを検討しましょう。事業目標を元に現在の組織体制や業務工程を踏まえて、売上増加などのメリットを感じる場合は導入をおすすめします。
しかし、各関係部門ごとの連携があまりにも難しそうな場合や顧客リストの絞り込みが効果的でない場合は、導入しない選択も検討するべきです。
ABMを活用して、既存顧客の見直しや新規顧客の獲得で売上増加が見込めそうであれば、社内の合意を得つつ積極的に検討すると良いでしょう。
②:LTVを重視したABM戦略を練る
LTV(Life Time Value)とは顧客生涯価値と呼ばれ、取引を終えるまでに顧客がどれほどの価値や利益を生んでくれるかを数値化した指標です。
LTVを重視した戦略では商品やサービスを単発で販売するのではなく、継続的に顧客との関係性を視野に入れることが重要です。いかにして顧客に継続的に価値を生み出してもらうかを考えたとき、こちらも顧客に対して継続的に価値提供を続ける必要があります。
そのためには成約後のリターゲティングやメルマガ配信を行うなど、顧客へのフォローアップが重要になります。このように一貫した顧客体験を提供できるようABM戦略を練る必要があるのです。
③:チーム編成と各部門の連携
ターゲットに対して一貫した顧客体験を提供するためには、各関係部門との連携が重要です。特に営業部門とマーケティング部門の円滑な連携は必須なため、協力体制が取れるチーム作りには双方の理解や合意が必要になります。
ビジネスにおいて共通のゴールを設定し、KPIを共有させることで連携しやすい関係性を構築します。具体的には優先的にアプローチする顧客定義や成約率の目標、エンゲージメントの指標などを共通認識として持たせるのがおすすめです。
また各部門のメリットも併せて説明すると、より連携体制が整いやすくなるでしょう。
■営業とマーケティング部門の連携のコツは、こちらの記事でご紹介しています
④:LTVの高い顧客を洗い出す
ABMにおいてもっとも重要な手順が、LTVの高い顧客の洗い出しです。洗い出しは中長期的な施策として考え、一つの判断基準ではなく複数の視点を持って総合的に顧客を選定しましょう。
主に価値の高いとされる顧客基準は以下の4パターンです。
- もたらす利益の大きな顧客
- 市場での影響力が高い顧客
- リピーターの可能性が高い顧客
- 高いROIが見込める顧客
また顧客のターゲティングには、自社の商品やサービスが市場規模でどのくらいの顧客を獲得できるのかも分析しておくと、成約率や売上の予測が立てられます。設定した事業目標に対して予測収益が見込めない場合は、ターゲティングの条件を見直す必要があるでしょう。
⑤:自社コンテンツでの訴求軸の決定
自社の商品やサービスを見直して、ターゲティングした顧客に対してどのような課題解決を提供できるのかを考えます。顧客が自社コンテンツに対してどこに価値を感じているのかを分析し、効果的なキャッチコピーやセールスライティングを作成します。
また成約後のフォローアップ施策も考えておきましょう。メルマガ配信や商品やサービスのサポートなど、成約が継続するために必要な施策をピックアップしておいてください。
訴求軸の切り口は複数用意しておき、それぞれに効果検証しつつより効果的な訴求を見つけ出せるようにしておきましょう。
⑥:最適なチャネルを決定
ターゲティングした顧客がどのチャネルに属しているのかを分析し、もっとも高い効果が見込めるチャネルを選びましょう。Webサイトやメール、SNSなどさまざまな種類があるため、チャネルを明確に絞り込んで効率的なマーケティングを実施します。
チャネルを絞り込まなければ管理が煩雑になり、限られたリソースを効率的に活用できないので注意しましょう。
⑦:キャンペーンの実施
ターゲティングした顧客に最適なコンテンツと最適なメッセージ、最適なチャネルが決定したら、実際にキャンペーンを打っていきます。広告費が限られているので適切なKPI設定と効果測定による分析レポートの作成を行いましょう。
KPI設定とレポート作成を行えば、その後の効果検証もやりやすくなり、PDCAを高速且つ効果的に回せるようになります。
⑧:効果測定と改善
キャンペーン結果を元に、効果測定と改善案の策定を行います。キャンペーンでもっとも重要なのは効果測定と新たな仮説検証です。PDCAを繰り返すうちにキャンペーンは最適化されていき、短期間でABMの効果を最大化してくれるでしょう。
効果測定で特に見るべき指標はCV数とROIです。策定した施策が事業目標やKPIに到達しているのかどうかを重要視しておく必要があります。
ABMツールを選ぶときのポイント
ABMツールには、さまざまな特徴があり、自社に最適なツール選定をする必要があります。ツール導入に失敗しないために、確認しておくべき主なポイントは以下の4つです。
①保有するデータ件数
ABMツールは独自の企業データを所有しています。データ数が多ければ選択肢の幅は広がり、自社にとって収益性の高いターゲットを選定できます。
保有しているデータがどのような経路で収集・蓄積されているか、無効データは削除しているか、データ件数だけではなく管理もしっかりしているか確認しておきましょう。
②実績
導入しようとしているツールは、どのような業種で実績があるのかが選定のポイントです。
自社と同じような業種で実績があれば、ターゲット層が自社と被るため、高い効果が見込めます。業界ならではの課題解決もサポート可能です。
どのような業種が導入しているかは、公式ホームページで確認したり、お問い合わせや商談時に自社と似た事例がないか確認するといいでしょう。
③他ツールとの連携性
MAやSFA、CRMといった、顧客管理ツールとの連携性が重要です。
ABMはマーケティングと営業の連携が必要です。ABMツールと顧客管理ツールを組み合わせて使うことで、戦略を立てやすくなり、より効果を高められます。
既存のツールと連携すれば、すでにあるデータを有効活用できます。
④操作性
ABMツールは長期にわたり、マーケティングの多くの場面で活躍するため、操作性が重要です。複雑で使いにくいものはストレスになってしまい、定着せず、導入費用が無駄になりかねません。
担当者がスムーズに使えるかどうか、無料トライアルを利用するのがおすすめです。
BtoBマーケティングにおすすめなABMツール3選
ABMツールは、さまざまなマーケティングツールをリリースしているMarketo、また、国内ではFORCASが専用プラットフォームをリリースするなど、徐々に増えてきています。
以下では3つのABMツールをご紹介します。自社で扱っている既存のMAやSalesforceと連携してマーケティングに役立てましょう。
①5000社への導入実績「Marketo Engage」:アドビ株式会社
サイトURL:https://jp.marketo.com/software/account-based-marketing/
Marketo Engageは世界で5000社以上の導入実績のあるアドビが運営するマーケティングツールです。
Marketoの特徴は、ABMだけでなくMAやSalesforceなどのマーケティングツールも扱えるので複数ツールの連携も簡単に行えるのが魅力です。そのため新しく別のMAツールやSFAツールを探す必要もありません。
MarketoではSFAやMAとの自動同期により各取引先の担当者を一覧化しリストを作成。重点的にアプローチしたい顧客にリードを自動的に振り分けるなどABMの動きをほぼ自動化してマーケティングを効率化してくれます。
全工程のマーケティングを一気に効率化させたい企業におすすめのABMツールです。
②国内唯一のABMプラットフォーム「FORCAS」:株式会社FORCAS
サイトURL:https://www.forcas.com/
FORCASは、LINEや凸版印刷など大手企業への導入実績もある国内唯一のABM専用のプラットフォームです。
FORCASの特徴はBtoBマーケティングに特化している点です。自社が保有する企業データとFORCASが持つ145万社のデータから精度の高い顧客リストを自動作成してくれます。
また現在使用しているCMSやMAツールとの自動連携も可能です。自社製品とマッチした企業だけをピックアップするなどABM戦略を効率的に進められます。
③日本最大企業データLBC活用「uSonar」:株式会社ランドスケイプ
サイトURL:https://www.landscape.co.jp/service/usonar/
uSonarはABM専用のツールではありませんが、日本最大の企業データ「LBC」を活用したABM戦略が可能になるツールです。LBCは国内の事業所820万拠点の方人企業データを保有しているため、高精度の顧客データ統合が可能になります。
名刺を撮影して企業情報を入れ込むとLBCと連携してマーケティングの優先度が高い企業を選定してくれる機能もあります。さらにLBCは、自社の取引データとリード情報を読み込むことで新規営業のターゲットを割り出し企業アプローチの優先順位まで付けてくれるのです。
他企業のMAやCMSツールとも連携できるため、圧倒的な企業データを活用したマーケティングを行う企業はuSonarがおすすめと言えます。
BtoB向けサービスはABMでLTVを向上させよう
ABMはBtoBマーケティングの効率化と生産性向上に大きく貢献する手法です。従来のリード獲得では広く網を張り母数を増やして成約数を増やしていました。
しかしABMでは、あえてLTVの高い顧客に絞り込み、限られたリソースを集中させることで成約率を高める役割を持っています。また、MAやSFAなどのマーケティングツールと連携すれば、顧客選定から成約までの全行程を自動化でき効率的な施策を講じられるでしょう。
企業のマーケティング戦略にうまく活用できれば、これまで以上の成約率増加と売上向上が見込める手法です。
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