ARRとは?SaaSビジネスの重要指標となる要因と計算方法


SaaSビジネスを行う企業の、成長率を測る重要な指標のひとつにARRがあります。
ARRを活用して事業の現状を分析することは、自社の強みや弱みを認知することとなり、今後の戦略に大きな影響をもたらします。

ここでは、ARRの計算方法や重要視される理由について詳しく解説していきます。

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目次[非表示]

  1. 1.ARRとは?
  2. 2.ARRとMRRの違い
  3. 3.なぜARRが重要視されるのか
  4. 4.ARRの注意点
  5. 5.ARRの変動で企業成長が判断できる
  6. 6.SaaS上場企業ARRランキングTOP10
  7. 7.ARRを用いたKPI設定で効率的な事業運営に繋げよう


ARRとは?


ARRとは、Annual Recurring Revenueの略で、毎年決まって得ることができる売り上げのことです。「年間経常収益」や「年間定期収益」とも呼ばれます。

特に年間契約を結ぶことが多いBtoBビジネスではARRが重要視されるケースが多くなっています。

年単位で収益の増減を明確に把握することで、事業がどのくらい成長しているのかを数値化して確認することができます。


ARRとMRRの違い

ARRと同じように、重要な指標とされているものにMRRがあります。

MRRは、Monthly Recurring Revenueの略で、毎月繰り返し得ることのできる売り上げのことです。「月次経常収益」や「月間定期収益」とも呼ばれます。

月単位の契約を結んでいるビジネスではMRR、年間契約が多いビジネスではARRを用いることが多くなります。

しかし、いずれもビジネスが健全に成長しているかを確認する指標となるので、分析したい事柄に合わせて、臨機応変に活用していきましょう。


MRRの計算方法

ARRの数値を求める前に、MRRの種類と計算方法を理解しておきましょう。

MRRは、下記の4種類に分けることができます。

  • New MRR(当月の新規顧客から得られるMRR)
  • Expansion  MRR(前月と比べて商品やサービスをアップグレードされて増加したMRR)
  • Downgrade MRR(前月と比べて商品やサービスをダウングレードされて減少したMRR)
  • Churn MRR(当月に解約をした顧客から得ていたMRR)

各MRRをもとにして、当月のMRRを算出していきます。

MRR=前月MRR+(New MRR+Expansion MRR-Downgrade MRR-Chum MRR)

MRRは、当月に増減した顧客数のデータを利用するため、収益以外の部分で新たな改善点を見つけるきっかけになります。
関連記事:MRRとは? SaaSビジネスの重要指標と計算方法をわかりやすく解説


ARRの計算方法

ARRは先ほどのMRRを使って計算していきます。

ARR=MRR×12

シンプルな計算方法ですが、MRRが大きくなれば、それに比例してARRも増加していくということです。

事業を始めたばかりの企業は、MRRの変動が大きいためARRを算出するタイミングを見極めて利用しましょう。


なぜARRが重要視されるのか


冒頭よりARRは、SaaSビジネスにおいて重要な指標のひとつとお伝えしてきました。しかし、ARRは収益予測をたてるだけの指標ではありません。

ここでは、なぜARRが重要視されているのか、どんな効果があるのかを解説します。


①SaaSビジネスにおけるKPIを設定できる

ビジネスには必ず目的があり、その途中でどの程度KPIが達成できているのかを把握することは、とても重要になります。

KPIはKey Performance Indicatorの略で、目的までの達成度を測る定量的な指標のことです。

定額制のSaaSビジネスでは、安定的な収益がどのくらい見込めるのかを予測しておくことが重要なため、KPIとしてARRを設定している企業も数多くあります。

ARRで具体的な数値を共有することで、社内の目的相違を防ぎ、業務の円滑化にも繋がるのです。


②企業の時価総額(バリュエーション)を算定する

ARRは、投資家にとっても貴重な判断材料のひとつです。

投資家は、事業の成長性、効率性、継続性を総合的に判断し投資を決定したいと考えています。そのため、成長率や、将来の収益予測を数値化できるARRは、企業の時価総額を算定する際によく利用されるのです。

資金調達が必要なSaaSビジネスでは、社内の指標としてだけではなく、投資家からの判断基準となることも理解しておきましょう。


ARRの注意点

ARRの活用をしていくにあたり、知っておくべき注意点があります。

ARRは、あくまで年間経常収益であり、毎年決まって得ることができる収益を予測したものです。

12ヶ月続く収益を算出しているので、初期費用や追加購入費用など、一時的な収益はARRには含まれません。そのため、予測であるARRと損益計算書上の売上高には差が生じます。

また、どの月を基準とするのかでARRの数値が大きく変わってしまうため、定期的な見直しが必要です。

季節や繁忙期など、月によって売上に変動がある場合は、半期や四半期ごとのMRRからARRを算出し、企業の成長率を確認するように注意しましょう。


ARRの変動で企業成長が判断できる


ARRの数値が大きくなることは企業の成長を表し、小さくなれば事業の改善が必要であると判断することができます。

ここでは、ARRを成長させる施策や減少の原因などを説明していきますので、自社のARRを高める参考にしてください。


ARRの成長要因は?

①  新規顧客獲得

ARRの成長要因として最も重要なのが、新規顧客の獲得です。

顧客の増加は収益にも直結するため、ニーズに合わせた広告訴求やWebサイトの構築など、顧客にストレスを感させずにコンバージョンへ促す施策が大切になります。

しかし、新規顧客獲得にはコストがかかるため、顧客獲得後に得られる収益を上回らないように注意しましょう。


②  既存顧客のアップグレード/アップセル

既存の顧客からの収益アップも、ARR成長要因のひとつです。

既存顧客のアップグレードやオプションの追加購入は、新規顧客獲得よりもコストがかからず、効率的なARR増加に繋がります。

しかし、アップグレードやアップセル後のメリットが伝わらないことには契約には結びつきません。

アップグレードした顧客の体験談や、利用できるオプションの増加など、顧客に特別感を与えて顧客ロイヤリティを高めるような施策が必要です。


ARRを減少させる要因は何?

ARRを減少させる要因は、主に以下の2つです。


①既存顧客のダウングレード

既存顧客のダウングレードは、ARRの減少要因となります。

商品が使いこなせない、ニーズとサービスが一致していないなど、さまざまな要因がありますが、まずは顧客がなぜダウングレードを行ったのか原因を追求しなくてはいけません。

プラン内容や料金の改善、アフターフォロー体制の構築などを行い、顧客が解約に至ってしまう前に対策しておくのことが重要です。


②既存顧客の解約

ARRの減少要因として、最も避けたいのが顧客の解約です。顧客が解約することは、ARRの減少はもちろん企業収入のマイナスを意味します。

解約する顧客が一定数いることは仕方がないですが、新規顧客やアップグレード顧客を上回っている場合は、顧客ニーズや事業自体の見直しが必要です。

ダウングレード同様、解約された原因を明確にして、早急に解約防止の施策を検討しましょう。


SaaS上場企業ARRランキングTOP10

ここからは、SaaS上場企業のARRランキングTOP10を紹介していきます。
※2021年12月データ


第1位 Sansan ARR171.0億円/成長率23.9%

2007年に創立されたSansan株式会社は、「出会いからイノベーションを生み出す」をテーマに法人向け名刺管理サービスや請求書受領サービスを手掛けている企業です。

名刺管理サービスにおいては7000社の企業実績があり、契約件数と契約ごとの売上高に力を入れ、顧客数を伸ばし続けています。


第2位 サイボウズ ARR157.4億円/成長率26.3%

1997年に創立されたサイボウズ株式会社は、企業内のベータベース、情報共有が行えるソフトウェアを提供する企業です。

企業規模に合わせたソフトウェアが用意されており、導入前の相談や、導入後の運用サポート、定期的なセミナー開催など、手厚いフォローで新規顧客を増やしています。


第3位 ラクス ARR145.9億円/成長率38.0%

2000年に創立された株式会社ラクスは、クラウド事業やIT人材事業を行っている企業です。

中小企業をターゲットに、請求書や勤怠管理システムなど複数のサービスがあり、社内の効率化を測りたい業務に合わせてシステムの導入が行え、低コストで手軽に利用することができます。


第4位 フリー ARR120.0億円/成長率42.7%

2012年に創立されたフリー株式会社は、「スモールビジネスを、世界の主役に」をミッションに掲げ、全自動のクラウド会計ソフトを開発・提供している企業です。

経理や税務申告書作成など、手間のかかるバックオフィス業務の効率化を目的とし、人手に限りがある中小企業を中心に、新規顧客を獲得しています。


第5位 インフォマート ARR93.5億円/成長率11.7%

1998年に創立された株式会社インフォマートは、BtoB向けのプラットフォームの運営を行っています。

企画書や請求書などの経理業務以外にも、外食産業の受発注の電子データ化を行っていたことから、特にフード業界からは強い支持を受けています。


第6位 マネーフォワード ARR85.4億円/成長率35.3%

2012年に創立された株式会社マネーフォワードは、個人・法人向けに金融系のウェブサービスを提供しています。

法人や個人事業主向けのサービスとして、請求書や給料計算、確定申告などの会計から人事労務まで幅広い効率化が可能です。


第7位 ユーザベース ARR85.2億円/成長率28.0%

2008年に創立された株式会社ユーザベースは、ソーシャル経済メディアのNewsPicksや経済情報サービスのSPEEDAなどを提供している企業です。

「経済情報で、世界を変える」をミッションに掲げており、市場分析や競合調査など経済情報のプラットフォームを提供。
時間のかかる市場リサーチが気軽に行えるとシェアを拡大しています。


第8位 エス・エム・エス ARR69.8億円/成長率25.0%

2003年に創立された株式会社エス・エム・エスは、医療・介護分野に特化したサービスを提供している企業です。

「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」というミッションのもと、40以上のサービスを提供しています。
事業者の経営、人材紹介など、総合的なフォロー体制から海外でも顧客を増やしています。


第9位 プラスアルファ・コンサルティング ARR58.7億円/成長率32.1%

2006年に創立された株式会社プラスアルファ・コンサルティングは、マーケティングソリューション事業、CRMソリューション事業、HRプラットフォーム事業を展開する会社です。

ビックデータを可視化する「見える化プラットフォーム」を提供し、企業のプラスアルファの価値を創造しています。


第10位 プレイド ARR58.1億円/成長率32.3%

2011年に創立された株式会社プライドは、カスタマー・エクスペリエンスのプラットフォーム「KARTE」を提供する会社です。

「KARTE」は、顧客の行動データを蓄積し、リアルタイムに解析、顧客に合わせた最適なコミュニーケーションの実行まで行えるツールです。
マーケティング担当者が少数でも運用が可能となるので人材不足に悩まされている企業に利用されています。

参照:【2021年12月更新】上場SaaS KPI公表の全て


ARRを用いたKPI設定で効率的な事業運営に繋げよう

SaaSビジネスにおいて、企業の成長率を測るARRは企業にも、投資家にとっても重要な指標となります。ARRを多角的に分析・活用することができれば、企業戦略や施策の立案など大きなメリットを得ることができます。

具体的なKPI設定を行い、効率的に企業を成長させていきましょう。

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また、ARRをはじめ、SaaSビジネスにおける必須47用語をまとめて解説した「SaaS×マーケティング用語集」もございます。合わせてご覧ください。
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