注目ベンチャー企業『カケハシ』の成長を加速させるマーケ組織の内側とは? ~イベント「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方 2022年11月10日回」開催レポート
オンライン化やデジタル化の流れが加速する中、デジタルマーケティングに取り組み始める企業が増えています。何からどのようにデジタルマーケティングを始めればよいのか、具体例を交えた実践ノウハウをお届けするのが、本イベント「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」です。
今回の登壇者は、株式会社カケハシ(以下、カケハシ)で調剤薬局向けのクラウドシステムのマーケティングチームを一から立ち上げた髙田達也氏と、アドビ株式会社(以下、アドビ)でIS部門の立ち上げ後にCSを担当している村上樹氏。司会は株式会社ベーシックの元木雄介が務めました。
前半では髙田氏のマーケ組織立ち上げ体験を紹介し、後半は村上氏と元木を交えた3名によるパネルディスカッションでカケハシのマーケ施策を深掘りします。
目次[非表示]
登壇者紹介
株式会社カケハシ
マーケティングマネージャー
髙田 達也(たかだ たつや)氏前職にて、同じ営業所で共に仕事をしたカケハシの現社長・中尾豊氏に誘われ、2018年に入社。大手薬局チェーンの法人営業や、営業からCSまでを担うチームのチームディレクターを担当。
2019年The Model組織へ営業体制を移行するに伴い、マーケティングチームの立ち上げに従事し、現在もマーケティングチームのマネージャーを務める。薬局体験アシスタント「Musubi」
https://musubi.kakehashi.life/
カケハシが提供する、薬局の経営者に向けたDX支援サービス。薬局の業務効率化や経営改善だけではなく、患者フォロー・満足度UPの機能がある。
アドビ株式会社
デジタルエクスペリエンス事業本部カスタマーサクセス部
ソリューションアカウントマネージャー
村上 樹(むらかみ たつる)氏前職では、広告及びメディア事業の営業を経て、2019年SaaS事業立ち上げ参画、インサイドセールス部門の立ち上げ責任者として戦略立案〜運用まで担当後、カスタマーサクセス担当として導入支援から契約交渉、追加提案営業を経験。2021年8月アドビ株式会社に入社し、Adobe Marketo Engageのカスタマーサクセス担当として既存顧客の活用支援、契約交渉、追加提案営業に従事している。
マーケティングオートメーションツール「Adobe Marketo Engage」
https://business.adobe.com/jp/products/marketo/adobe-marketo.html
アドビが提供する、顧客と中長期的な関係を築き上げていく「エンゲージメント」の考え方を根本に持ったMAツール。オンラインでの行動データやオフラインでのやり取り履歴を蓄積し、顧客1人1人に合わせたコンテンツを届けることで態度変容を促し、関係性を構築することができる。
マーケティング組織立ち上げ期に直面した3つの課題
カケハシでは2019年9月に営業組織の体制をThe Model型に移行することになり、それに伴いマーケティングチームを新設することになりました。チーム立ち上げに携わった髙田氏は当時、マーケティングに関する知識はあったものの、BtoBマーケティングやWebマーケティングは未経験の状態からのスタートだったといいます。
髙田氏:
マーケティング組織の立ち上げ期に直面した課題は3つ。「過去リードの管理不足」「ホットリードをたくさん求められる」「予算・リソース不足」でした。
まず、それまでマーケ組織がなかったので適切なリード管理がされておらず、一度商談化した案件のアフターフォローもされていませんでした。これではバケツに穴が空いているような状態で、どんどんリードが不足してしまいます。
The Model型への体制移行に伴い、IS・営業チームも新チームとして立ち上がったので、一刻も早く成果を出したいという思いがあったのでしょう。既にニーズが顕在化したホットリードを数多く求められました。
これらの課題に対応したくても、立ち上げたばかりの組織には当然予算もリソースもありません。このように、最初の数か月〜半年の間は非常に大変な時期でした。
広告による業界内認知向上でホットリードを獲得
髙田氏:
限られたリソースの中で最速でリードを増やすために私たちがまずやったのは、広告による認知向上でした。
私たちが提供する「Musubi」はバーティカルSaaS(※)のため、業界内での認知向上が重要です。特に顕在層の認知向上がホットリードの獲得につながるという仮説のもと、人的リソースが少なくても実施できる広告施策から始めました。
※バーティカルSaaS……特定の業界における課題解決に特化したSaaSサービスのこと。
薬局・薬剤師業界には、専門誌で情報収集をする層が少なからずいます。そこで、薬剤師の会員が多く、Webと紙両方のメディアを持つ媒体への広告出稿を強化しました。
その結果、リード獲得数が増え、アンケート調査による業界内の認知も約1年で8割を超えました。「〇〇(媒体名)を見て気になっていた」というお声をいただくことも増え、定量/定性の両面で成果をあげることができました。
同時に、メルマガでのリードナーチャリングも始めました。獲得したリードへの継続的な情報提供とタッチポイントづくりにより、バケツの穴をふさぐためです。
成長フェーズは他チームとの連動を強く意識
上記をはじめとする主要な施策を実施していき、立ち上げから約1年半が経過したカケハシのマーケティング組織は、より生産性の高いチームを目指すフェーズに入りました。
「Adobe Marketo Engage」や「ferret One」を利用し始めたのもこの頃です。各ツールの活用事例はそれぞれのサービスサイトで紹介されています。
▼参考:CV数が前年比176%に!秘訣は「マーケチームだけ」でWeb施策が完結する環境
髙田氏:
この頃になると、チームとして安定したパフォーマンスを発揮できるようになり、組織の中での信頼も獲得できてきました。同時に、さらなる成長を求められるフェーズでもあります。
スペシャリティのある人材を採用して施策の精度を高めつつ、組織全体での連動性をより強く意識していました。特に連動性の向上に大きく貢献してくれた取り組みが、「各チャネル施策の見える化」と「コンテンツや施策の社内周知」です。
実施している施策をカレンダー上で管理し、どのチャネルでいつどんな施策が行われているかが一目でわかるようにしました。これにより、連動する施策をいつまでにスタートさせる必要があるのか、他のチャネルで何かできることがないか等を議論しやすくなりました。
また、マーケチームで行っている施策が他のチームになかなか伝わらないという課題をお持ちの方も多いと思います。弊社では、コンテンツや施策の狙いや内容を簡単に紹介・解説したドキュメントを用意し、Slackやチーム交流会、マネージャー会議等で積極的に情報共有しています。
こうすることで、社内での認知や信頼も徐々に高まり、ISや営業から「こういうコンテンツはどうか」というフィードバックももらえるようになりました。
新メンバーを迎えオンボーディングを強化、さらなる飛躍へ
髙田氏:
今年はさらなる飛躍のために新メンバーを5人迎え、組織の体制を変化させながら高い目標に向かって挑戦しているところです。
社内の組織を動かすためには、マーケ組織自身が良いコンディションを保っていることが必須となります。新メンバーを迎えるにあたっては、社員のオンボーディング改善の重要性を感じました。
チームのコンディションを良くするためには、以下の4つのポイントを心がけています。
- マネージャーが採用活動へコミットする
- 毎日短時間でもいいので、1on1等でこまめに新メンバーの疑問を解消する
- メンバーが自走するために必要な情報をしっかり伝達し、情報の対称性を保つ
- 毎日のコミュニケーションの中で心理的安全性を担保する
要素だけを抽出するとありきたりに見えますが、一般的に「大事だ」と言われていることをどれだけ徹底できるかが重要なのだと、立ち上げから現在までを振り返って実感しています。
パネルディスカッション:具体的なマーケ施策を深掘り
カケハシのマーケティング組織が各フェーズで行った具体的な施策を、リード獲得の観点からベーシックの元木が、リードナーチャリングの観点からアドビの村上氏が深掘りしました。やり取りの一部を抜粋してお届けします。
リード獲得施策を深掘り!
元木:立ち上げ時のリード獲得施策として、薬剤師の会員が多いペイドメディアへの広告出稿を行ったとお話しいただきました。広告にはリスティング広告等もありますが、ペイドメディアを選んだのには理由があるのでしょうか。
髙田氏:
当時は、わざわざネット検索して薬局内のシステムを入れ替えようとする人がほとんどいなかったんです。「今使っているシステム以外にもこういうものがあるんだ」と知ってもらうためには、プッシュ型でアプローチする必要がありました。そのため、ペイドメディアからスタートしました。
元木:LPやサイトコンテンツの見直しタイミングは、どのように計っていらっしゃいますか。
髙田氏:
明確な基準は特段設けていません。ただ、薬局・薬剤師の業界は国の制度とも関わるので、制度の改編等があった際には専用のLPを設けてSEMをかけたり、連動したSEOのためのブログ記事を書いたり、業界的にホットなトレンド情報にヒットさせにいく動きはしています。
リードナーチャリング施策を深掘り!
村上氏:ナーチャリングの強化はいつ頃から始め、どんなことから着手されたのでしょうか。
髙田氏:
何もしていない状態を避けたかったので、マーケ組織を立ち上げてすぐに始めました。それまではスプレッドシート等でリードを管理していたので、まずメールアドレスを持っているリードの情報をSFAに入れ、メルマガ送信から着手しました。
村上氏:ナーチャリング施策の開始時と現在で、課題や打ち手はどのように変遷してきましたか。
髙田氏:
はじめはとにかくタッチポイントを持つための定期的なコンタクトでしたが、現在はシナリオのフェーズに合わせた1to1のコミュニケーションが非常に重要だと痛感しています。さらに、オンラインのメルマガでコミュニケーションできる方だけではないという顧客特性があるので、オフラインの施策やIS・営業と連動したナーチャリングプログラムも実施するようにしています。
村上氏:ちなみに、ISや営業とはどのような連携をしていらっしゃるのでしょうか。
髙田氏:
バーティカルSaaSはリードの数が限られているので、逐一逃さないよう、送ったメールからサイトへの訪問を検知したら担当ISのSlackのチャンネルに通知が行くようにしています。さらに、決裁者と思われる職位が高い方の訪問には必ずアプローチしようと、ISチームと約束もしています。
質疑応答
イベント中に参加者の皆さまからいただいた質問と、髙田氏の回答をご紹介します。
Q.レガシーな業界ではテレマーケティングやFAXが一般的かと思いますが、Webや反響施策に切り替えるきっかけはどのようなものでしたか?
髙田氏:
実は切り替えたわけではなく、両方を並行して行っています。テレマーケティングはISが担当しており、マーケチームはインバウンドの受け皿の強化に注力するという役割分担です。なお、薬局は業務でFAXを使用しているので、業務の邪魔にならないようFAX施策は重要な内容に絞って行っています。
Q.専門メディアへの広告出稿は中長期的な認知度向上に効きそうなイメージですが、短期的なリード獲得には効果がありましたか?
髙田氏:
Webと紙媒体でそれぞれ特徴が異なりました。Webは掲載するとアクティブな会員の方がすぐに流入してきてくれて、短期的な刈り取りという意味合いでもすごく貢献してくれたと思います。一方、紙媒体はオフラインでコツコツと認知を上げていってくれたという印象です。
Q.薬局・薬剤師をターゲットとするには専門知識が必要だと思いますが、業界外から入社する人が顧客を理解するための対策は行っていますか?
髙田氏:
薬局見学やサービス納入時のオンボーディングセッションへの同席等、業界理解をするための社内のオンボーディングコンテンツを充実させています。弊社には私を含め約20人の薬剤師が在籍しているので、何でも自由に質問していいチャネルを作り、わからないことはそこで質問してもらえる体制も整えています。
最後に:「明日から使える」を目指すイベント
実際に立ち上げに携わったカケハシ髙田氏の実体験をもとに、マーケティング組織立ち上げ期のリアルな話をお届けしました。
イベント「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」では、話を聞くだけで終わるのではなく、「明日から社内でこれをやってみよう」と思える手法や打ち手を何かひとつでも持ち帰っていただくことを目指しています。ご紹介した内容を、御社の施策に展開・反映して活用していただければ幸いです。
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