イベント「博報堂アイ・スタジオが語る!クリエイティブ改善からはじめるBtoBマーケ」開催レポート

​​​​​​​


最前線で活躍するマーケターのノウハウを紹介し、BtoBマーケティングの知見を深めてもらうためのイベント「BtoBマーケティングセッション」。「クリエイティブ改善からはじめるBtoBマーケ」をテーマにした2022年11月24日回の登壇者は、株式会社博報堂アイ・スタジオの田中 剛氏と株式会社ベーシックの菊池 貴行です。

大手BtoB企業でのDXコンサル実績を多数持つ「デジタルクリエイティブのプロ」田中氏と、BtoBマーケの実行支援を約120社行った「BtoBマーケのプロ」菊池が、BtoBマーケにおけるクリエイティブ改善に関するさまざまな疑問にそれぞれの視点からお答えします。

目次[非表示]

  1. 1.登壇者紹介
  2. 2.「クリエイティブ」の定義とは
  3. 3.特別対談1:クリエイティブ改善のつまづきポイント
  4. 4.特別対談2:クリエイティブ改善で見るべきポイント
  5. 5.特別対談3:成果を出すために必要な体制
  6. 6.質疑応答
  7. 7.クリエイティブ改善のノウハウを、ぜひ明日から活かしてください!


登壇者紹介

株式会社 博報堂アイ・スタジオ
バリュープランニングセンター デジタルマーケティングコンサルティングユニット
デジタルコンサルタント
田中 剛(たなか たけし)氏

博報堂アイ・スタジオ DMCにて、 マーケティングDXなどのコンサルタントを担当。
1999年よりECサイトの構築・運用を200社程度行い、2001年より大手広告会社のデジタルエージェンシーにて、数多くのナショナルクライアントのデジタルマーケティング施策のエンジニア、ディレクション、プロデュース業務を行う。2005年にクロスフェーダーを設立し独立。2019年より博報堂アイ・スタジオに参画し現在に至る。

株式会社ベーシック
ferret One事業部 マーケティング部
マーケター
菊池 貴行(きくち たかゆき)

金融機関、メディア運営会社を経て、2018年より株式会社ベーシックへ入社。ferret Oneカスタマーサクセス部にて、オンボーディングチーム立ち上げメンバーとして活躍。戦略立案からサイト運用まで、顧客の「BtoBマーケティング」の立ち上げ支援を行う。累計担当社数は120社以上。これまでの豊富な経験をもとにした、実務に使えるセミナー内容に定評がある。


「クリエイティブ」の定義とは

本イベントでは、クリエイティブ=「誰の・何を・どのように伝えるかのメッセージングのこと」と定義しています。単純なデザインや見た目だけではなく、言葉選びや伝え方、見た人にどういう状態になってもらいたいかの設計まで含めた概念です。

BtoBマーケティングにおける各フェーズでは、認知から獲得・追客まで幅広いフェーズの施策にクリエイティブが関係しています。下図のピンクの部分が、クリエイティブが関係する領域です。


クリエイティブを改善することにより、これだけ幅広い部分が改善される可能性があるので、効果はかなり大きいといえるでしょう。


特別対談1:クリエイティブ改善のつまづきポイント

第1部では、クリエイティブ改善の際にありがちなつまづきポイントに関する質問に対し、お二人にお答えいただきました。


──Q.どの施策のクリエイティブ改善から優先して行うべきですか?

菊池:
改善のインパクトが大きいところから取り組むのが大原則です。Webサイトをマーケティングの基軸としているのならば、どこから流入するユーザーが多いのか、現在どのくらいの成果が出ているのかを確認し、その結果をもとに、どこを改善するとその後の成果に響きやすいかという観点で選ぶとよいでしょう。

一般的には、広告バナーやLPの内容などが見直すべきポイントであり、かつ改善インパクトが大きいことが多いと思います。


──Q.確認した結果、現在の流入数やCVRが同程度の施策が複数ある場合、どこから優先して改善するべきですか?

菊池:
BtoBマーケのゴールは受注なので、受注への期待値が高いところを改善すると成果につながりやすくなります。

日頃から顧客に接しているセールスチームにヒアリングすれば、どういうターゲットの受注確度が高いかを教えてもらえます。例えばLPの改善をするなら、受注確度の高い属性のターゲット向けのLPから手を付けるとよいでしょう。


──Q.ターゲットに刺さるクリエイティブはどうしたら作れますか?

田中氏:
まず大前提として「刺さるクリエイティブが重要になる場面とはどこなのか」をお話しします。

例えばコンテンツマーケでお客様のお困りごとに答えることが目的のページの場合、そこに必要となるのは刺さるクリエイティブよりも、お困りごとの解決方法やお客様が期待する情報です。

一方YouTube等の動画広告では、ユーザーの閲覧を中断させて広告を強制的に見せることになるため、いかに興味を持ってもらって記憶に定着させるかが重要になります。このような場合に、刺さるクリエイティブが必要となるのです。

では、刺さるクリエイティブとはどういうものでしょうか。答えは当然ひとつではないので、ここでは考え方を紹介します。

「ターゲット」は幅が広く、どんなクリエイティブが刺さるのかイメージしづらいので、「ペルソナ」に刺さるクリエイティブを考えるとアイディアが出やすいと思います。例えば、設定しているペルソナが「うちの会社で言ったらAさんに近いな」という人を見つけます。そして、そのAさんに対して「どういうクリエイティブならばAさんの心が動くか」というのを起点にすると考えやすいでしょう。

もちろんクリエイティブは心に響くだけではなく、商品がイメージとして残らなければ意味がないので、商品やサービスの特徴やベネフィットとリンクさせる必要があります。このような考え方でアイディアを複数出し、さまざまな組み合わせを考えていく流れになります。


──Q.今お話しいただいた「記憶に定着させる」のは認知獲得のための広告クリエイティブの話だと思いますが、リードを獲得するための広告クリエイティブの場合はどのような考え方をするべきですか?

田中氏:
リード獲得を目的とする場合、購買に近いファネルのユーザーをどうやって捕まえるかという考え方になってきます。つまり、買う気のない人にはクリックされたくないわけです。

ですから、関係のない人にはクリックさせず、興味のある人だけにクリックさせるという考え方に変わってきます。


──Q.クリエイティブ改善を行うタイミングの基準はありますか? また、どの数値を見てどのように判断すればよいでしょうか。

田中氏:
認知を目的とした広告クリエイティブの場合、1回見られただけで覚えてもらえるわけではありません。長期スパンで考えていくので、あまり高頻度で改善・更新することはないでしょう。

リード獲得が目的の場合は、短期間にどれだけ受注につながっているかを確認し、CVRやCTR等の指標を見ながら改善ポイントを探していくのがメインになります。

菊池:
弊社は短期的なリード獲得領域でお客様の支援をさせていただくことが多く、基本的にはCVRを見ています。社内で一定の基準を持っていて、その達成率により改善が必要かどうかを判断します。

例えば、リスティング広告とLPの組み合わせならばCVRが1.5〜3%程度、Facebook広告の場合はそれに加えてCTRが0.8%程度を基準としています。これを下回っていれば、打ち出し方を検討して改善する形ですね。


特別対談2:クリエイティブ改善で見るべきポイント

第2部では、クリエイティブ改善を行う際に見ておくべきポイントについて、田中氏にお話しいただきました。

見るべきポイント1:目標の達成状況


田中氏:
クリエイティブを用いた施策を実行したら、流入数やCVR、商談率や成約率など、各指標の目標に対して実績がどうだったかをしっかり検証しなくてはなりません。目標未達のものからクリエイティブ改善の候補に挙げていきます。

改善して次に活かすためには、なぜ未達だったのかを分析・検討する必要があります。そもそも目標が高すぎたケースもあるでしょう。その場合も、なぜ高すぎる目標になってしまったのかを含めて検討する必要があります。また、目標を達成できた場合にも、なぜ達成できたのかを考えると、次に生かすことができます。

そのためには、事前にしっかり目標設定しておくことが重要になります。これは認知型の場合も獲得型の場合も同じです。

目標の決め方の例としては、前期間から110%成長を目標とする、事業計画から逆算して必要な数値目標を求める、等があります。


見るべきポイント2:改善の成果予測と優先順位


田中氏:
改善しても成果が見込めないところに労力をかけるのはもったいないので、成果が見込めないところを見極め、見込みの高いところを優先的に着手するとよいでしょう。

優先順位付けには、Googleアナリティクス4プロパティ(GA4)の探索機能の中にある散布図作成機能が便利です。縦軸と横軸に指標を設定し、自動で散布図を作成してくれる機能です。

例えば、縦軸に流入数、横軸にCVRを設定すると、自社のWebサイト上の各ページが散布図上にプロットされます。


散布図を4つの領域に分けた場合、右上は流入数が多くCVRも高いページです。ここに分類されるページは既に優秀で成果が出ているので、改善しても伸びしろがあまりないといえます。逆に左下は、流入数もCVRも低いページです。これらを改善するには非常にコストがかかりますし、そもそも不要なページかもしれません。

つまり、散布図の左上と右下にプロットされたページから優先的に取り組むと、比較的高い成果が見込めると推測できます。

左上はCVRは低いものの流入数は多いので、クリエイティブを改善してCVRを伸ばすことができれば右に移動していけます。右下は広告や動線の見直しで流入数を増やせるよう改善すれば、高いCVRを活かして上に上がれるでしょう。


特別対談3:成果を出すために必要な体制

第3部では、クリエイティブ改善で成果を出すために必要な体制について、お二人にご回答いただきました。

──Q.クリエイティブ改善のために、社内でどのような連携をとっていくべきでしょうか。

田中氏:
事業部の中にセールス部門とマーケ部門があり、マーケ部門の中にクリエイティブチームがある組織の場合を例にお話しします。


マーケ部門としては、どのような顧客ならば長期的な契約に至れるのかをしっかり分析し、クリエイティブにフィードバックする必要があります。そのためには、リードをセールスに渡した後も、商談内容から成約状況まで情報収集を怠らないことが大切です。

 
──Q.クリエイティブ改善のための人員が足りない時はどうすればよいでしょうか。

田中氏:
弊社もそうですし皆さんもそうだと思いますが、みんな忙しいんですよね。他にもやることは大量にあるので、クリエイティブ改善を継続するのはなかなか難しいのではないでしょうか。

だから、例えば毎週月曜日は必ずミーティングでKPIをチェックして仮説を洗い出すとか、その翌週までに仮説に対する改善策を持ち寄るとか、あらかじめ時間を確保してしまうとよいと思います。そうしないとすぐ後回しになってしまうので。

改善策を持ち寄ったら、実行自体はアウトソーシングしたり便利なツールを使うことも検討し、人員の不足を補うのが重要です。

菊池:
1人または少人数でできることには限界があるので、全部やろうとせず、手を付けられそうなところだけでも試してみるとよいと思います。

例えば、メルマガのタイトルをちょっと変えてみるだけでも開封率は全然変わりますし、LPのキャッチコピーひとつでも反応が違ってきます。他社や業界内の成功事例の情報を集め、良い部分は自社に取り入れていく姿勢もある程度必要でしょう。

また、アイ・スタジオさんのようなプロを頼ったり、ferret Oneのようなツールを導入したり、仕事をなるべくシュリンクさせて時短する工夫も同時並行で行うとよいのではないでしょうか。


質疑応答

イベント中に寄せられた質問にもご回答いただきました。


──Q.広告専用のLPは作るべきでしょうか。作るなら、サービスサイトとどのような差をつければよいでしょうか。

田中氏:
まず、広告用のLPは絶対に作るべきです。

サービスサイトはさまざまなチャネルからユーザーが流入してくるので、ユーザーのお困りごとを絞り込めません。一方、広告用LPはどのような広告を出すかによって流入ユーザーをコントロールできるので、どんな困りごとを抱えたユーザーが訪問しているのかを絞り込むことができます。

そのため、「そういうことでお困りならばこういう解決策・サービスがありますよ」というシナリオを、ページ内に作ることができるのです。ユーザーのお悩みに合わせて、強みをしっかり訴求しながらLPを作ることができるので、広告の効果を上げるためにもLPは絶対に必要だと思います。


──Q.クリエイティブ改善は内製するべきでしょうか、アウトソースするべきでしょうか。

田中氏:
戦略の策定や最初のサイト構築はプロの力を借りるとよいですが、その後の改善は基本的には内製でやるべきだと思っています。費用対効果の面でもすぐれていますし、実際の数字に日々触れている方が改善の目標も見えやすくなります。

ただし、改善を行うにあたって写真を撮影し直しなどのスキルが必要なものがあれば、ピンポイントでアウトソースするのはありだと思います。

菊池:
私も同じく、内製化したほうがよいと思っています。

良いクリエイティブを作るには、どれだけお客様の課題や心情、置かれてる立場を理解しているか、つまり顧客解像度の高さが重要です。そして、それを一番よく知っているのは、お客様に接している自分たちです。

自社の強みは何で、どう見せていくべきなのか、何がお客様に刺さっているのかを理解しているのもまた自分たちです。一部外部の力を借りるにしても、あくまで進んでいくのは自分たちなのだという主体性を持つことが大切だと思います。


クリエイティブ改善のノウハウを、ぜひ明日から活かしてください!

本レポートではBtoBマーケティングにおけるクリエイティブ改善の重要性をお伝えし、つまづきやすいポイントの対処法や成果を出すためのポイントをお話しいただきました。

マーケティングの施策の成功率は3割程度といわれており、どれだけ練った施策でもはずれることはあるので、打ち手の数を増やすことがとても重要です。

本イベントで得たものを自社に持ち帰り、明日からの打ち手に活かしていただければ幸いです。

■ferret Oneの今後のイベント・セミナー情報はこちら
> https://ferret-one.com/seminar

One Tip編集部
One Tip編集部
One Tipは、BtoBマーケティングに特化した支援サービス「ferret」から生まれた、「リード獲得の打ち手が見つかるメディア」です。 BtoBマーケティングにかかわる人にとって、価値あるコンテンツをお届けしていきます。 Twitter:@ferret_One_

記事を探す

リード獲得施策を探す

Webサイト改善方法を探す

マーケティング戦略設計方法を探す

マーケティング組織の作り方を探す

マーケティングツールの活用方法を探す

マーケターへのインタビュー記事を探す

登録番号 IA180169 適用規格 ISO/IEC 27001:2013 / JIS Q 27001:2014