【開催レポート】ユニコーン企業「SmartHR」を支えるマーケ組織とは?


これから新たにWebマーケティングに取り組むBtoB企業の担当者の皆さまへ、事業の最前線で活躍するマーケターの体験談を通して、知見と実践ノウハウを共有するイベント「BtoBマーケティングセッション」

2021年8月25日回では「ユニコーン企業を支えるマーケ組織とは?」と題して、株式会社SmartHRのマーケティンググループマネージャー 鈴木氏を​​ゲストに迎えました。

BtoBマーケティングのモデルケースとして、「SmartHR」がこれまでどのような組織変遷をたどってきたか、またどのようなKPIを設定して施策を行ってきたかなど、具体的にご紹介いただいています。

(イベント当日の様子)

目次[非表示]

  1. 1.登壇者紹介
  2. 2.SmartHRマーケティング組織の変遷
  3. 3.KPI設計について
  4. 4.リードジェネレーション領域の成長
  5. 5.これからのマーケティング組織
  6. 6.まとめ:事業フェーズに応じたユニット編成とKPIがカギ


登壇者紹介

株式会社SmartHR
マーケティンググループ マネージャー
鈴木 良紀(すずき よしのり)氏

大学卒業後、広告会社へ営業として入社。クライアントの事業売上拡大を目的としたダイレクトマーケティングを3年半経験。その後、オンラインゲーム会社DMM GAMESのマーケティングに3年半従事。TVCMやイベントといったオフライン領域の経験を積む。2018年にSmartHRへ入社し、現在はリード獲得領域を担う組織のマネージャーを務める。


SmartHRマーケティング組織の変遷

鈴木氏:

SmartHRのマーケティング組織は、サービスの企画開発からサポートの中で「認知・興味」の獲得を活動領域としています。


 
これまでSmartHRでは、大きく分けて次の三回の組織変更を行いました。


以下では、それぞれの変遷について詳しくお話ししていきます。


2018年→2019年で、ユニット化

鈴木氏:

私が2018年11月に入社しているので、直後の12月の組織状態が次の通りです。




当時は、認知からサービス導入までのファネルを各自が意識しながら活動していました。この頃はそれぞれがゆるやかな役割は持ちつつ、必要なことには柔軟に対応していた時期でもあります。
 
ここから1年後の2019年12月、マーケメンバーは8名から13名に増え、各メンバーの対応している業務内容も明確に分かれ始めました。
そこで、担当していた領域を4つに分けて「ユニット化」することにしました。


2019年→2020年で、ユニット再編成

鈴木氏:

続いて2019年から2020年ですが、個人的には一番大きな組織変更になったと感じている「ユニット再編成」のタイミングとなります。
 
それまでは「オフラインのマーケティング活動」「オンラインのマーケティング活動」など手法によるユニット編成をしていましたが、そこから、「認知を作るブランドマーケティング」「リードを獲得をするリードマネジメント」という、目的を軸にしたユニット編成へと変更をしました。


変更前は、スライド左のようにオフラインユニットの中でも、「認知」を目的としたマス広告などの施策と、「リード獲得」を目的とした展示会・セミナーなどの施策が混在している状況でした。

 
ユニットを再編成したことで、認知を目的とした「ブランドマーケユニット」と、リード獲得目的の活動をする「リードマネジメント」というように、手法にとらわれず「目的」を軸にした体制へと変化しました。
 
さらに延長として2020年1月から12月にかけては、リードジェネレーションユニットを目的別で2つに分け、「新規のリードを獲得するリードジェネレーションユニット」と「獲得したリードを育成するリードナーチャリングユニット」と定義しました。


2020年→2021年で、専門・高度化

鈴木氏:

昨年から今年に変えても変化を続けており、現在は専門・高度化のタイミングに入っています。
 
こちらは、現在のマーケティング領域の各ユニットがどういう役割を担っているかをマッピングした図です。


左にある「広報PR」と「ブランドマーケティング」のユニットは、KPIの1つとして指名検索数を見ており認知・ブランド獲得のための活動をしています。
それらの認知度向上の後押しを受け、リード獲得を目的とした活動を展開しているのが「デジタル」「イベント」のユニットです。
獲得したリードをインサイドセールスへ共有して、商談・受注につなげるという流れになっています。

他にも、継続的に興味の育成や獲得を行っていく「ナーチャリングユニット」
認知から受注に至るまでに利用するコンテンツ及び事例記事の制作、オウンドメディアの運営を担っている「サーキュレーションマーケティングユニット」
マーケティング活動の効果をモニタリングして次にどの業界・エリアを狙っていくかを横断で検討していく「データマーケティングユニット」が存在しています。


2020年から変化している3つのポイント

鈴木氏:

SmartHRのマーケティンググループの全体像をお伝えしたので、ここからは「2020年から変化しているポイント」を3つご紹介します。
 
まず1つ目が、手法を問わずリード獲得をするユニットとして存在していた「リードジェネレーションユニット」の変更です。こちらは、施策量の増加と施策内容の高度化によって、再度「イベント」と「デジタル」の手法別で再編成をしなおしました。


2つ目は、元々「ナーチャリングユニット」として興味・育成をしてきたユニットを、「導入前の企業の興味育成」と「導入後の企業に機能を活用していただくためのエクスパンション(アップセル)」という目的別で分けて役割を拡張させた点です。


3つ目は、事例記事の制作やオウンドメディアの運営を担っていた「サーキュレーションユニット」について。こちらは今までの動きに加え、導入後の企業担当者様との継続的な絆作りを目的としたコミュニティイベントなどを運営するユニットを新設して、受注後においても貢献する取り組みをはじめています。


変遷を人数とユニット数で振り返る

鈴木氏:

最後に、これまでの変遷を「人数」と「ユニット数」で振り返ってみましょう。

 
この3年ほど、全社の人数に対しておよそ8〜9%がマーケメンバーという比率で組織を作ってきています。
BtoBマーケ組織のメンバー数という点では、皆さまの参考になるかもしれません。
 

KPI設計について

鈴木氏:

続いて、非常に多くのユニットが存在するSmartHRの「KPI」がどうなっているのかご紹介していきます。


2つのKPIを設定

鈴木氏:

KPIは大きく分けて2つ設定しています。その1つ目がインサイドセールスへの供給リード数です。
新規リードの獲得数と、過去に獲得したリードに再度興味を獲得できた数、これらから構成された目標になっています。

 
また獲得した全てのリードではなく、社内で定義した「SmartHRで解決できる課題を抱えているリード」をカウントの対象としています。
 
2つ目のKPIは、獲得したリードからの商談創出数です。
先ほどお話しした、マーケ活動で獲得してインサイドセールスに共有したリードから、創出される商談数をKPIとして追っています。

 
このKPIは実際にはインサイドセールスの活動によって発生するもので、マーケ側としてはコントロールしづらい指標ではあるのですが、活動の質を評価する上でも組織運営を健全に行う上でも、必要なKPIとして設定しています。


KPIとリード管理の流れ

鈴木氏:

ここからは、KPIとリード管理の流れについてご紹介します。


スライドの一番左からリード獲得がスタートします。
「MAL」と書いている部分が、獲得した全てのリードと考えてください。
 
そのうち、条件に合致してすぐにインサイドセールスに共有すべきと判断されたリードを「ダイレクトリード」、ナーチャリング活動によって興味関心を育成すべきと判断されたリードを「ナーチャリングリード」と定義しています。
 
共有したリードは全て商談に繋がるわけではありません。そのため、未商談リードの再興味を獲得した場合、さらには商談したが導入には至らなかった方を興味育成できた場合に、インサイドセールスの再商談へと繋げるサイクルも作っています。
 
これらの新規リードから再商談までを含め、4つに区分されたリードの合計を「共有リード数」のKPIとして設定しています。
その上で、「共有リードからの商談数」もKPIとして定めています。
 
また、一連の流れを「Webサイト」「外部メディア」「イベント」の、3つリードソース(リードを獲得した場所)ごとに管理している点もポイントです。


リードジェネレーション領域の成長

鈴木氏:

SmartHRでは、昨年からARRを倍に成長させています。




リード数の推移も見ていくと、売り上げと比例するように昨対比で200%近くに成長している状態です。



こちらは「新規リード数」のみのカウントになっているため、「保有リードの再興味の獲得数」を含めると200%を超える成長をしていることになります。
 
では、どうやってこの成長をしてきたのか。ポイントは次の4つです。

 
今日はこの中でも、2つ目の「施策バリエーション量の増加」についてお伝えできればと思います。


デジタルメディアへの展開

鈴木氏:

「施策バリエーション量の増加」について、いかにして効率よくリード獲得目的のデジタルメディアを展開してきたか、メディア各所の考え方をご紹介します。

 
初期は、左上のターゲットの含有率が高く費用対効果が高いと見込まれるメディアでの施策を開始します。
 
この図で言うと、まず媒体Aのメルマガからスタートし、費用対効果が高い場合は類似の媒体Bでもメルマガを配信するという流れです。
 
媒体Bのメルマガの効率が高かった場合、さらに媒体Bの会員へのリーチ率を高めるために、記事広告などの新たな手法でも展開をはかります。その結果記事広告でもメルマガと同等の効果が出た場合は、媒体Aでも接触回数を増やすために記事広告にトライするのです。
 
相性のよい媒体ではどんどん施策を拡張して会員への接触を増やし、効果が出れば他の媒体でも展開をしていきます。
 
また、効果が高いとわかった手法については、他媒体に近しい取り組みができないかゼロベースで提案したり、効果が芳しくない媒体には条件面の交渉を行うなど、求める成果に近づける動きも行ってきました。

 
このように、メディアと手法を組み合わせて拡張することで、効率を一定キープしながら接触面を増やしてきたという流れです。
もちろん新規で制作するコンテンツパワーによっても結果が変わるため、コンテンツとのかけ合わせで施策を最適化しています。
 
結果、以前は10メディアほどへの展開でしたが、現在は30メディア以上へ拡張をしています。
 

イベント施策の強化

鈴木氏:

続いて、イベント施策についても紹介していきます。
こちらの図はSmartHRでのイベント施策の位置付けです。

 
メディア協賛型やタイアップで行う施策については潜在的な新規のリード獲得を行い、自社のセミナーではSmartHRを認知されていない方への啓蒙目的のセミナーや、製品理解を深めていただくための導入企業様との事例セミナー、ユースケースを交えて説明する製品紹介セミナーなどを実施しています。

 
リード獲得だけでなく、理解促進や興味育成に繋がるセミナーも展開をしている点がポイントです。
 
昨年からはオンラインイベントへ切り替えましたが、場所を問わずにご参加いただける点や、一度実施したイベントを収録して放映することでメンバーの人的リソースを最小限に抑えつつ、複数の機会で情報提供できる点など、メリットを感じています。
 
メリットを活かした結果として、2021年の1月〜5月の期間で、134個もの施策実施に至りました。

 
1営業日あたりでは1.35施策と、毎日何かしらの施策を行っている状況です。
昨年と比較しても、103%の施策数に増加しています。


これからのマーケティング組織

鈴木氏:

最後に、今後のマーケティング組織についてお伝えします。

これまではスライド左の図のように、マーケティンググループでは「リード獲得」を目的として活動してきました。



今後については、商談や導入に至りやすくするための「理解を深めるコンテンツづくり」や、導入後のお客様との「継続的な接点構築」など、活動範囲をリード獲得の後工程まで伸ばすことで、会社全体の生産性を高めていきたいです。

また、SmartHR以外にも現在グループ会社が複数立ち上がっているので、これまで蓄積したナレッジやノウハウを活かしてグループ会社への支援をすることで次の柱を作り、貢献できればと考えています。

今後のSmartHRを一緒に作っていきたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡くださいませ!

SmartHR採用情報:マーケティング(展示会/イベント) / 株式会社SmartHR


まとめ:事業フェーズに応じたユニット編成とKPIがカギ

今回のイベントでは、SmartHRの鈴木様をお招きして「ユニコーン企業を支えるマーケ組織」についてお話いただきました。
 
事業フェーズにあわせた人数やユニットの変遷を具体的にご紹介いただいたので、参考になる点が多かったのではないでしょうか。

ferret Oneでは今後も、先輩マーケターをゲストにお招きして具体的なマーケティングの取り組みついて紹介していきます。BtoBマーケティングにお悩みの方や、成果を出している企業の実例を知りたい方はぜひご覧ください。

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ferret(One Tip編集部)
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