撤退危機のサービスがWebマーケで大逆転! イベント「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方 2021年2月25日回」開催レポート
これから新たにWebマーケティングに取り組むBtoB企業の担当者の皆さまへ、事業の最前線で活躍するマーケターの体験談を通して、知見と実践ノウハウを共有するのがイベント「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」です。
2021年2月25日回では、未経験でマーケ組織を立ち上げ、毎月200件以上のリードを獲得するまでに成長させたNTT西日本・株式会社ランドスキップの佐伯穂高氏をゲストに迎えました。未経験メンバーで立ち上げた組織が事業計画を達成できた秘訣と、楽しみながらマーケティングに取り組むコツは必見です。
このレポートでは、イベントの様子を抜粋してお伝えします。
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登壇者紹介
NTT西日本 新規事業開発
株式会社ランドスキップ取締役
佐伯 穂高(さえき ほたか)氏2009年にNTT西日本に入社。地域事業部にて販売戦略に従事後、本社組織において開発戦略等の組織運営を行う。2017年、ランドスキップ社にレンタル移籍しベンチャー的経営や事業開発を学ぶ。帰任後、事業責任者としてデジタル空間デザイン事業「LOOOK」を8ヶ月という短期間でローンチ。B2Bデジタルマーケティングの仕組みを構築し事業を拡大中。
サービス撤退の危機から大逆転した秘訣
佐伯氏:
私共が2019年にローンチした「LOOOK(ルーク)」は、リアルタイムで情報更新できるデジタルサイネージサービスです。今でこそ事業計画を達成できていますが、ローンチ直後は6カ月連続で月の達成率が20%未満でした。
マーケティングに携わるメンバーは私含め全員未経験。なんとかせねばと独学でWebマーケティングに挑戦したものの、200万かけて獲得したリードは10件。サービス撤退の声も出始めていました。
当時の私は、良いサービスを作れば売れるものだと思っていました。しかし今思えば、サービスを広げるには力学が必要なのです。どんなに良いサービスでも、広げ方を知らなければ広がりようがありませんでした。
今回は、上記のような危機的状況からマーケティング体制を見直し、毎月200件以上のリードを獲得、上期事業計画達成/下期事業計画達成見通しに至るまでの体験談をお話しします。
「マーケティングって手間もかかるし大変だけど、楽しいよ!」ということが伝わると嬉しいです。
マーケを釣りに見立て、魚が獲れる仕組みを考える
佐伯氏:
ferret Oneに出会い、BtoBマーケのセミナーにも参加し、サービスの広げ方のヒントを得た私たちが行ったのは次のような方法です。
マーケティングを、魚(リード)を獲るための釣りだとイメージします。どの釣り堀(セグメント)にどんな仕掛け(LP)と餌(Web広告)をたらしたら魚(リード)が獲れるかを考えたのです。
効率のよさそうな釣り堀はどこか:セグメントの切り分け
これまでの受注実績や顧客インタビューを元にターゲットのセグメントを切りました。分け方は、業種業態、エリア、性別、年収、役職、担当業務などさまざまです。
魚の気を惹く仕掛けづくり:ターゲットごとのLP制作
切り分けたのターゲットごとにメッセージや画像を変えたLPを準備します。釣りの仕掛けのように、ターゲットの特性を踏まえてどのような仕掛けが有効かを考えます。
いよいよ餌をたらして魚を獲る:Web広告の運用
準備したLPへ誘導するWeb広告を運用します。代理店に任せるのではなく、小さく始めて自分達でPDCAを回しました。
PDCAを回していくうちに、筋の良いセグメントがどこか分かってきます。そうしたら、そこに大きく投資すればよいのです。
月に10件だったリードが、この方法で次第に100件200件と取れるようになってきました。現在はWeb広告から自然流入にシフトし、月に300件近いリードを獲得できています。
今、もう一度ゼロからWebマーケを始めるならこうする
佐伯氏:
これからBtoBマーケティングを新たに始める、リード獲得のためにまず何をしたらよいか分からない、という方のために、「私がもう一度ゼロからWebマーケティングを始めるならばこうする」というやり方をお話しします。
まず、目標リード獲得数は50件程度にします。初心者がいきなり数百件、数千件を目指すのはしんどいと思います。
目標数から1件あたりのリード獲得コストを算出
目標リード獲得数から割り戻して、必要な商談数や受注数を算出します。投入可能なマーケティング予算と紐づけると、許容できるCPAを算出できます。次のような表を作るとやりやすいでしょう。数値はすべて仮説で構いません。
大切なのは、最初に算出したこのCPAにこだわりすぎないことです。やっていくうちにだんだんと仮説で置いた数値との誤差が出てきますので、随時チューニングしていくとよいでしょう。
ユーザーインタビューでペインやインサイトを探る
ある程度リードが獲得できて受注も取れてきたら、獲得したリードや顧客にインタビューをします。「どんな課題を抱えているか」「商談でどういうところに興味をもってくれたか」を深く聞くと、ペインやインサイトが見えてきます。
インタビューの結果はLPやWeb広告の改善に活かします。こうすることで、前項の釣りのイメージを使ってより効率よくPDCAを回すことができます。
マーケティングに正解はありませんが、これが私の勝ちパターンです。
楽しみながら継続すれば成果に近づける
佐伯氏:
最後に、私がマーケティングチームのリーダーとして意識していることをご紹介します。
特に我々はメンバー全員経験が少なく、本格的にWebマーケティングに取り組むのはチームとして初めての挑戦です。不安に思うこともたくさんあるでしょう。そんな時だからこそ、リーダー自身が動いて背中を見せたり、メンバーが自走できるまで伴走するのが大切です。
広告やWebページのメッセージやテキストは、できるだけ自分達でがんばって書くようにしています。結局顧客のペインやインサイトを知っていて、一番サービスへの想いを持っているのは自分達なのですから。
私達がCPAやCVRも知らないような状態からここまで来られたのは、ベーシックさんを始めしっかり伴走してくださる皆様がいらっしゃるからです。マーケティングで成功した経験がある人達に伴走してもらうのは、登山経験がある人に一緒に山に登ってもらうのに似ています。
マーケティングは答えのない宝探しのようなものです。続けていると自分の能力や知識がアップデートされていくのを感じるので、それを楽しみながらやっていくのも大事です。すぐに成果がでるものではありませんが、楽しみながら継続すれば少しずつ成果に近づけると思います。
質疑応答
イベントでは、Q&A機能を使用して視聴者から登壇者にたくさんの質問が寄せられました。ここでは一部を抜粋してご紹介します。
Q. 筋の良いセグメントを見つけるために、何種類くらいトライした?
佐伯氏:
数十くらいに切り分けました。スライドで紹介した図に書いたのは、かなり大ざっぱな切り方です。細かく切ろうと思えばいくらでも細かくできますし、細かいほど精度も上がります。
Q. 何を取って何を捨てるか判断するための最重要事項は?
佐伯氏:
意思決定に悩んだら、「幹か枝葉か」を考えるようにしています。先程お話ししたCPAなども、実は枝葉の議論です。本質的な論点は「一番良いターゲットをどう集客するか」ですよね。ついつい枝葉の議論に終始してしまいがちなので、何が幹で何が枝葉かは常に意識するようにしています。
Q. Webマーケに挑戦する際、上司や社内の説得に最も気を使った点は? サービス撤退の声もあった中、どのように周囲を納得させた?
佐伯氏:
チャレンジの背中を押してくれる人が周りに多かったので、周囲の説得にはあまり苦労しませんでした。それでも一番有効だったのは、他社で上手くいっている例を出して外からの情報を持ってくることです。反対する人のインサイトは「不安」なので、上手くいっているところがたくさんあるという情報があると納得してもらいやすいのでしょう。
Q. 代理店を使わずに自社で広告を回す方法をどのように学んだ?
佐伯氏:
今は各社で情報を囲い込む時代ではないので、ノウハウもオープンになっています。広告運用の体験記はWeb上でたくさん見つかりますし、ベーシックさんのオウンドメディアにも載っています。私はYouTube動画もよく利用します。有益な情報が惜しみなくたくさん載せられています。
Q. 勝ち筋の見極めポイントは?
佐伯氏:
劇的に「ここだ!」という数値はなかなか出ないものです。「ここじゃないか?」程度のゆらぎが出るくらいです。そこにちょっとだけ強めに投資して、だめだったら引き上げる。そういう押して引いてをくり返しながら、勝ち筋を見つけていきました。
失敗しても、ノウハウを学べば逆転できる
危機的な状況から未経験でマーケティング組織を立ち上げ、目標を達成するまでの体験談は参考になるし勇気づけられると思います。
一度やってみて成果が出なくても、やり方やノウハウを学んで再挑戦すれば逆転可能です。今回ご紹介したノウハウを、自社のBtoBマーケの取り組みに活かしてもらえれば幸いです。
「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」では、今後もマーケターの具体的なマーケ施策の経緯をお伝えできるイベントを心がけているので、ぜひ参加してみてください!
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