「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」イベントレポート【後編】


2021年12月8日に開催した『BtoB Marketing Summit 2021』では、「経験者が語る、必ず押さえるべき3つのポイント」をテーマに、マーケ組織の立ち上げ方について現役マーケターにお話しいただきました。

本記事では、SATORI株式会社の徳井氏とラクスル株式会社の中野氏による、セッション3〜4の内容の一部をご紹介します。

■セッション1〜2については、イベントレポート【前編】をご覧ください。
>「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」イベントレポート【前編】

目次[非表示]

  1. 1.【セッション3】はじめてのマーケティング組織立ち上げからセールス改革のすべて ~商談化率15倍へ引き上げたデータ活用の秘訣~
  2. 2.【セッション4】売上30億→67億!ノバセルのBtoBマーケ組織開発の裏側
  3. 3.まとめ


【セッション3】はじめてのマーケティング組織立ち上げからセールス改革のすべて ~商談化率15倍へ引き上げたデータ活用の秘訣~

【登壇者プロフィール】
SATORI株式会社
営業部 営業企画グループ グループ長 徳井 ちひろ 氏

大学卒業後、Webマーケティングを取り扱う広告代理店に入社し、マーケティング部署を立ち上げる。メディアの運営や、展示会・セミナーの企画運営、インターネット広告の運用、インサイドセールス部隊の立ち上げ、SFAの導入・運用、MAを使ったナーチャリングなどのマーケティング分野に尽力。現在はSATORIで営業企画を担当している。


新卒入社してマーケティング組織を立ち上げた理由

徳井氏:
本日は、私の苦労話を少しさせていただければと思います。


私は23歳の時、新卒として広告代理店に入社しました。
紙媒体の広告からWeb媒体の広告までかなり手広く取り扱う中小企業だったのですが、私はSEOやコンテンツマーケティングなど、Webマーケティングサービスの部署で新規営業のチームに配属されました。

当時、外部リンクを使った成果報酬型のSEOサービスから、内部施策のSEOサービスへシフトするタイミングで、今まで安価な成果報酬型のサービスを売っていたところから月額モデルのコンサル型のSEOへと切り替わったため、営業は軽いパニック状態でした。

そんな中、負けず嫌いだった私はさまざまな施策を実施し、2年目ではかなりの売上を上げてトップセールスになることができたのです。


しかし、私個人の成績が良くても部署の売り上げは低迷を続けており、「これは個人の努力の問題ではなく、組織がマーケティングから変えていく必要がある」と感じてマーケティング部を立ち上げました。


最初はたった1人で、営業を続けながら1人マーケをするというスタートでした。

オウンドメディアの立ち上げや、広告運用、展示会、セミナーのイベント企画、SFA、MAの導入など、片っ端からやれることに挑戦をしていき、リードの獲得数10倍以上という大きな成果を出しました。その後、獲得したリードをさばいていくためにインサイドセールス部隊の立ち上げもマーケティング部主導で行いました。ここでも、商談獲得率15倍という成果を出しています。

いわゆる「THE MODEL」式の組織に変わり、商談が増え、売り上げが増え、成果のレンジを上げていき、最終的には成果を認められて、1部署の営業兼務のマーケ担当から、全社のマーケへと組織拡大をしていきました。最終的には私を含め、マーケ組織は8名まで増員しています。


成果を出すために必要なデータと活用方法

徳井氏:
ここからは、成果を出すために必要なデータと活用方法についてお話ししたいと思います。

私がマーケティングの見直しにおいてまず行ったのが、自社のマーケティングフローの整理です。BtoBの企業だと、リードを獲得して育成して、商談を作って受注をするというフローの企業が多いのではないでしょうか。

まずこのマーケティングフローの中で、自社が何をやっているのか状況を整理しました。

実は整理してみると、すでにしっかりとマーケティング活動をやっていたことが判明したのです。
オンラインでは、集客のためにリスティング広告を出稿したりオウンドメディアを運営したり、オフラインでは展示会に出展したり。メルマガやセミナーなどを顧客のコミュニケーション施策もやっていました。

「ちゃんとできてるじゃん」と思うかもしれないのですが、この中に課題がたくさんあったのです。

  • Webマーケティング施策を行っているものの、Web集客がいまいちできていない
  • リードがないので鬼のようにテレアポが必要で、闇雲に行動していて効率が悪い
  • 顧客情報がバラバラに管理をされていて情報資産が貯まらない
  • 営業人数に対して商談が少ない
  • 失注リストが放置されて、マメな営業じゃなければ休眠リストになっている

など。


マーケティング施策はやっていても、こういった細かい課題がたくさんありました。同じような悩みを抱える企業さんも多いのではないでしょうか。

同じような状況の方に、私は定期的なデータの棚卸しをおすすめしています。

SEOをやっているが、サイトの流入は増えていない。流入は増えているが、問い合わせや資料請求が増えていない。リードはたくさんあるが、きちんとコミュニケーションが取れていない、など。
今やっている施策をきちんと整理をして、その数値から見える課題がないかを見ることが重要です。

データ活用というと難しく捉えられがちですが、単純にこれだけでも成果が出る施策を考えることができるかと思います。

弊社でもそれぞれの数字を整理し、メディアの改善、展示会の改善、デジタル接点の強化、セミナーの見直しと、ひとつずつ改善を行ました。

「マーケティング施策はたくさんあるが、何からやっていいかわからない」という方は、まず整理から始めてみることをおすすめします。


MAを中心としたマーケティング改革

徳井氏:
ここからは、どんな改善をしていったか、施策ベースのお話です。前段でお話した課題に対して、こんな改善を試みました。


まずは新規リードがほしいということで、毎月数件しかこない問い合わせを増やそうと思いました。そして、オウンドメディアのSEOの見直し、UIの変更、コンテンツ改善をしていきました。

また、展示会には出続けていたので、企画に関わらせてもらい、展示会でたくさんのリードを集める体制を整え、鬼のようにテレアポをするフォローをやめ、メルマガなどを活用した
フォローのデジタル化に挑戦しました。

次に、デジタル接点を強化しようということで、問い合わせ増加ともつながるのですが、ホワイトペーパーや事例コンテンツの量産、オウンドメディアの更新情報などをお伝えする、定期購読のメルマガを用意しました。また、セミナーの見直しもしました。

これによって、サイトのセッションがすごく増えたり、ホワイトペーパーの請求が増えたり、セミナーからの受注がでたり、きちんとマーケティング成果が出るようになっていきました。

しかし、ここまでいいことばかり話しているのですが、挫折も経験します。「顧客育成」の必要性にぶつかったのです。それを解決してくれたのは、マーケティングオートメーションでした。


SEOやコンテンツマーケティングなどの施策をするだけでは、問い合わせがそこまで増えなかったのですが、マーケティングオートメーションを使ってオウンドメディアの問い合わせを10倍に増やしました。

そして、マーケティングオートメーションを軸に、顧客情報を集約。展示会やホワイトペーパーからの新規リードも、まずはマーケティングオートメーションを使って効率的にフォローをして、優先度の高い顧客からアプローチができるよう、優先順位付けをしていきます。そして、商談ニーズがあれば、セールスが商談獲得をしていく。

すぐに商談につながらない顧客もマーケティングオートメーションからコミュニケーションの自動化をしていきます。失注ももちろん育成リストとして管理。そして、サイトやセミナーも育成コンテンツとして活用しながら、顧客との接点を切らさない。

私がしてきたマーケティング活動は、それぞれが間違いではなかったのですが、施策が点の状態で、つながりがなかったため、成果がうまく出せていませんでした。マーケティングオートメーションを導入することで、点だった施策がうまく線になり、マーケティングオートメーションが核となって、さらなる成果が出るようになってきたのです。

まとめると、マーケティング組織立ち上げのために、まずはマーケティングフローを整理する。そして、組織立ち上げにこだわらず、まずは自分の部門ができることから取り組んでいきます。私は役割が部署をつくると考えます。まずは小さな成果を出すことからはじめていきましょう。

そして、私はマーケティング組織のスモールスタートに、マーケティングオートメーションをおすすめいたします。営業活動をしながら、まずは成果を出すという第一ステップを作れるからです。


■マーケティングオートメーションツール「SATORI」
https://satori.marketing/


【セッション4】売上30億→67億!ノバセルのBtoBマーケ組織開発の裏側

【登壇者プロフィール】
ラクスル株式会社 
ノバセル事業本部 マーケティング部 部長 中野 竜太郎 氏

2017年、楽天株式会社に入社後ECコンサルタントとして200社以上を担当。その後、個人事業主でメディア運営、占い師、広告運用、マーケティング支援を行う。2019年よりSaaSのマーケティング部門立ち上げを経て、2021年1月よりラクスルに参画。ノバセル事業のマーケティングを担当している。

Twitterアカウント:@qtaro_marketing


ノバセルのマーケティング組織について

中野氏:
ノバセルは大きく2つの組織に分かれています。


「グロースパートナー事業部」という運用型テレビCM、タクシーCM、エレベータCMを中心にマーケティング戦略企画、制作、放映、分析を通じて、クライアントの事業成長に伴走させていただく事業と、テレビCMの効果分析ツール「ノバセル アナリティクス」というSaaSを販売している事業の2つです。

そして、「マーケティング&インサイドセールス」は2つの事業部に対して横断で関わっており、リード獲得から商談獲得までの領域を担当しています。獲得した商談から案件化、受注までを担当しているのが、「フィールドセールス&ストラテジックプランナー&クリエイティブ」です。

元々「マーケティング&インサイドセールス」は、2名体制で運営をしていました。私がマーケティングで、もう1名がインサイドセールスという状態です。

この組織体制を踏まえて、ノバセルのマーケティング部の組織開発の裏側についてお話しできればと思います。


ノバセル流「THE MODEL」の構築

中野氏:
まずは「THE MODEL」の構築についてお話しします。

元々弊社では、スプレッドシートで顧客管理をしていました。
各フィールドセールスがスプレッドシートでリードや商談管理をやっていたのですが、仕組化を進めるためにSalesforceを導入し、同社が提唱する「THE MODEL」の設計を行いました。

しかし、最初の壁として起こったのが、Salesforceのデータが入力がされなかったり、導入したのに使われず定着しないという問題でした。
そこで「THE MODEL」の体制をつくるために、データをSalesforceにしっかりと入力していきましょう、入力されているデータが正として評価するという意思決定を行いました。

その上でフェーズの再定義をし、ノバセルとしてのセールスフローに合わせたカスタマイズをしました。第3段階として、Salesforceに入れたデータをダッシュボード化し、パイプライン指標の「見える化」を行いました。


これまでも有効リードの定義付けはしていましたが、その粒度をさらに精緻化をしていくという取り組みを行いました。

パイプラインの観点でいうと、総広告費に対してリード1件当たりCPAはいくらで何件取れているのかを、完全に「見える化」しています。

マスターの数字は、Salesforceでリードクオリティケーションを行ったところから出ており、きちんと入力がされていないと、そもそも成果として出しているレポーティングが機能しなくなるため、すべてを数値化しました。

これをやったことによって、Slackのチャンネルで日々「どのパイプラインの数値が足りていなくて、そのネックは何なのか」という議論をマーケ&セールスで活発に行うことができています。

ユニークな部分としてお伝えしたい部分は、ノバセルのマーケティング部にはインサイドセールスが含まれているというところです。

人が少ないからマーケティング部にインサイドセールスが含まれているわけではなく、マーケティング部として商談の質まで責任をちゃんと持ちましょうという観点から、このような体制になっています。

インサイドセールスで何を行っているかというと、入ってきたリードが「ノバセル」のターゲットとしている企業なのかなど、質を精査するための「ターゲットクオリフィケーション」を行っています。


ポイントとしては、”リードの価値”を明確に計算をしていて、「このリードであれば、”リード価値”何円だよね」というところまで出してCPAのコントロールをしている点です。

リードの定義は一度決めたものをずっと使うのではなく、毎週「これは失敗した」「これは良かった」というPDCAを回しています。

BtoBだと、リードによって価値が100倍以上変わることが見えているので、リードの見極めと、そのリードを見極めた基準が本当に正しいのか、マーケティングとして「THE MODEL」に取り組んでいます。


BtoBマーケティング組織の成長

中野氏:
2番目のポイントは、BtoBマーケティング組織の成長です。

現状2名から3名体制に変化をしましたが、生産性高く取り組むことが一番のテーマになっており、「仕組み化」を常に意識しています。


まずは効果が見えるようにする。そして、仕組みを作った上で、高速PDCAのオペレーションを回せる体制を作ることがポイントです。

最後に、マーケティングという観点で、オンライン・オフラインなどの区別をせずに統合的に見た上で、目指す方向を「売上」に統一すること。それにより、リードだけを取ればいいマーケティング組織ではなく、価値のある商談をどれだけ創出できるのか、そしてどれだけ受注を生み出せるのかを一番重要視しています。


■運用型テレビCM「ノバセル」
https://novasell.com/


まとめ

イベントレポート後編では、マーケ組織の立ち上げ方について、SATORI株式会社の徳井氏とラクスル株式会社の中野氏のセッション内容をご紹介しました。

各社の発表を通じて、改めてチーム間の連携やKPIの設計、データ活用の重要性を感じられた方も多いのではないでしょうか。

ferret Oneでは、引き続きみなさまのBtoBマーケティングの疑問にお答えしていきます。開催テーマも随時更新しているので、ご興味のある方はぜひ下記のセミナー情報をご覧ください。

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■セッション1〜2については、イベントレポート【前編】をご覧ください
「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」イベントレポート【前編】

  「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」イベントレポート【前編】 2021年12月8日に開催した『BtoB Marketing Summit 2021』では、「経験者が語る、必ず押さえるべき3つのポイント」をテーマに、マーケ組織の立ち上げ方について現役マーケターにお話しいただきました。本記事では、Baseconnect株式会社の菅野氏と株式会社BLAMの宮本氏による、セッション1〜2の内容の一部をご紹介します。 Webマーケティングツール『ferret One』




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ferret(One Tip編集部)
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