「マーケティングDX時代の、BtoBマーケティングの取り組み方」イベントレポート【後編】


スマートデバイスの普及、労働生産人口の減少、 SaaSに代表されるクラウド型業務システムの普及、新型コロナウイルスの蔓延等により、BtoBマーケティングを取り巻く環境が大きく変わりつつあります。

2021年6月9日に開催した『BtoB Marketing Summit 2021』では、マーケティングDX時代におけるBtoBマーケティングの取り組み方について、「顧客接点」「データ」「組織・人材」「経営」の4つの観点で取り組むべき事を整理しながら、それぞれの分野の第一人者に最新のトレンド・トピックスを語っていただきました。
※今回のイベントでは「経営」のセッションはありません。


2週間でお申し込み数が定員に達し、増席した本イベント。当日は747名のお客様にご参加いただき、満足度4.08(5段階中)の大盛況にて幕を閉じました。

本記事では、先日公開した第1部〜第3部のイベントレポートに引き続き、「組織・人材」について触れた第4部〜第5部の様子やセッション内容の一部をご紹介します。


■第1部〜第3部については、イベントレポート【前編】をご覧ください
「マーケティングDX時代の、BtoBマーケティングの取り組み方」イベントレポート【前編】


目次[非表示]

  1. 1.【組織・人材❶】トークセッション「キーエンス流」営業の力をデータで強化する方法
  2. 2.【組織・人材❷】BtoB企業のDXを推進するプロジェクト進行術 ~ 組織・人材別の考え方とは?~ 
  3. 3.まとめ:「マーケティングDX」で抑えるべき4つの観点


【組織・人材❶】トークセッション「キーエンス流」営業の力をデータで強化する方法

第4部では「組織・人材」の観点から、株式会社キーエンスの柘植様にお話いただきました。このセッションは、株式会社ベーシックの川鍋との対談形式でお送りしています。

【登壇者プロフィール】
株式会社キーエンス
データアナリティクス事業グループ マネージャー 柘植 朋紘 氏

新卒でキーエンスに入社後、コンサルティングセールス・人事採用を経て、データをフル活用したマーケティング・営業推進・販促活動に約10年間、従事。 現在は、キーエンスの高収益の源泉である「データ活用ノウハウ」を基に社内開発した「データ分析ソフトウェアKI」を、新規事業として立ち上げ中。

【モデレータープロフィール】
株式会社ベーシック
ferret One事業部 マーケティング部長 川鍋 裕輔

リクルートにて採用広告の営業→株式会社SpeeeにてSEOコンサルタントを経て2010年に株式会社ベーシックに入社。アプリ関連事業や広告関連事業の新規事業開発を行った後、2019年より「ferret One」のマーケティング責任者を務める。


データの活用方法


川鍋:
まずは、どんなデータをどのような順番で蓄積/活用しているかを伺いたいと思います。

柘植氏:
20年以上前の弊社にはマーケティング系のデータは少なく、SFAのデータもきちんと整理されている状態ではありませんでした。そこで初期に使っていたのは、顧客マスタの基本的な属性データです。
たとえば、役職ごとの成約率や、部署・業種ごとの効率差などを分析し、活用していきました。

その後、売上の履歴情報やSFAの活動情報など「トランザクションデータ(履歴データ)」へと活用するデータの種類を広げるよう、試行錯誤を繰り返していきました。最近では、Web系の情報なども活用を進めています。

単純な属性データだけでセグメントを切っていると、お客様の情報がぼやけ、ターゲティングの精度が上がりません。過去の受注したお客様を分析することで、複数のデータを組み合わせ、精度を上げることを意識しています。


SFA/CRMツールの選び方

川鍋:
SFA/CRMツールは、どのようなツールを活用するとよいでしょうか?

柘植氏:
ツールの「機能による差」がわかるのは、使いこなした後のレベルかと思います。極端な話、ツールが「Excel」でも、きちんとデータ入力のできる組織文化がつくられ、その情報を正しく使えていれば、ツールを半端に使っている状態よりも、良質なデータが取得できます。

ツールは魔法の箱ではありません。ツールで解決すべき課題と、ツールでは解決できない課題の違いを見極めることが重要です。

どのツールを使っても、最終的に「入力」するのは人なので、どのようにデータを入力する習慣をつくっていくかが、ツール選定よりも大事だと感じています。


データをきちんと入力してもらうコツ

川鍋:
データをきちんと入力してもらうために意識していることやコツはありますか?

柘植氏:
中途半端に入力されているという状態が、最も非効率なので、とにかく避けるよう心がけています。
たとえばある項目を入力しはじめても、人によって入力したりしなかったりの差がでてくることはよくあります。そうなると、結果的にデータは中途半端で、分析で使おうと思っても、使えません。

その状態が続いてしまうと、真面目な営業担当者の入力データが溜まるだけで、時間の無駄です。「この項目を入力する」と決めたら、一定期間経過したのちに、ちゃんと入力できそうかどうかを、きちんと振り返りをして、難しそうであれば、早いタイミングで入力をあきらめる判断をするようにしています。


データを元にした優先順位の考え方


川鍋:
データをもとに、どのように優先順位を決めていますか。

柘植氏:
主な使い方はターゲティングです。どこに行くと受注確率が高くなるか。たとえば、同じお客様でも、Aという商品では受注確率が高いが、Bという商品では受注確率が低いというように、商品別でターゲティングをして、確率を上げるというのがひとつの使い方です。


組織の動かし方


川鍋:
データを活用するために、組織を動かすためのポイントはありますか?

柘植氏:
現場に細かい内容を伝えても、コミュニケーションが複雑になってしまうので、できるだけ単純化してわかりやすく、「これは受注確率が高い。理由はこうだ。」と伝えるようにしています。

また、キーエンスで大事にしているのは、「まずは小さく始める」ことです。
今あるデータで小さく試してみて、並行して、今は無いデータも貯めていく。大きく始めようとしたり、計画ばかり立てているより、小さく始めて失敗しながら試行回数を増やし、試行錯誤していく進め方がおすすめです。


川鍋:
ターゲットリストの名前すらコダワリがあると伺いました。詳しくお聞かせいただけますか?

柘植氏:
はい。先ほどお伝えした受注確率が高いターゲットリストの表記ですが、たとえばSaaS系の企業でよく使われるような「Tier1・Tier2・Tier3」などは、キーエンスの営業現場ではイメージがしにくい言葉です。

そこで、例えば「A・B・C」「松・竹・梅」のように、3段階の表記方法を、各チームで自由に変えられるようにしていたりします。
小さなことに見えますが、どういう言葉を使うかを工夫することでも、現場への浸透度は大きく変わってきます。


経験でやっていることをデータ化する

柘植氏:
データ分析の結果を営業に見せた時に、「その結果は、データ分析の結果を見なくても、最初からわかってるよ」と言われることがあります。
しかし、その「結果をわかっている」人は、既に日頃から成果を出しているような営業力が高い人であることが多いです。逆にいうと、若手も含めたすべての営業が、その結果をわかっているわけではありません。もちろん、その通りに行動実践できているわけでもありません。
営業力がある人の感覚をデータ分析でクリアにして、新人や他のメンバーでも再現できるようにし、営業力を底上げする。それこそが、データ分析の大きな役割だと考えています。


第4部 まとめ

第4部では、株式会社キーエンスの柘植様に「トークセッション「キーエンス流」営業の力をデータで強化する方法 〜データの溜め方、使い方、動かし方〜」についてお話しいただきました。

優れた営業担当者の勘や感覚でわれているアプローチ方法を「データ化」して、組織全体の再現性を高めるため、データを活用されています。

皆さまも、まずはキーエンス様のように、今あるデータで、「小さく試す」ところから、はじめてみてはいかがでしょうか。


【組織・人材❷】BtoB企業のDXを推進するプロジェクト進行術 ~ 組織・人材別の考え方とは?~ 

第5部では「組織・人材」の観点から、株式会社WACULの垣内様にお話いただきました。

【登壇者プロフィール

株式会社WACUL
取締役CIO 垣内 勇威 氏

東京大学卒。株式会社ビービットから、2013年に株式会社WACUL入社。改善提案から効果検証までマーケティングのPDCAをサポートするツール「AIアナリスト」を立ち上げ。2019年に産学連携型の研究所「WACULテクノロジー&マーケティングラボ」を設立し、所長に就任。現在、 研究所所長および取締役CIO(Cheif Incubation Officer)として、新規事業や新機能の企画・開発およびDXコンサルティング、大企業とのPoCなど、社内外問わず長期目線での事業開発の責任者を務める。

Twitterアカウント:@yuikakiuchi


BtoBでリードを増やすのは簡単

垣内氏:
BtoBで単純にリードを増やしたいだけなら簡単です。リードを増やしたいなら、質を落とせばいいからです。


結局、リードを増やすのは質とトレードオフだと考えています。
なぜならデジタルは「セルフサービス」チャネルなので、営業担当のように説得はできないからです。

営業であれば、お客様の反応を見ながらニーズに合わせて説得を行うことができます。
しかしデジタルの場合1人で使うものなので、ユーザーが望んでいない説得を強要されると、大切なお客様は離脱してしまうのです。

そのため、デジタルのみの施策では質をあげることは難しく、あくまで量をとるものだと考えています。
質については、下記のように後から見極めれば問題ありません。


リードを増やす4つのステップ

垣内氏:
リードを増やすには次の4つのステップがあります。


まずは一つ目は、「CV障壁を下げる」ことです。

例えば「問い合わせ」は、非常に質が高いものの数は期待できません。それに対し「資料請求」は、数も質もある程度見込める施策です。もっと質を下げて良いのであれば、ホワイトペーパーやセミナーのようなノウハウを提供する方法で数を増やすことができます。リストの量を担保してから先程の「質の見極め」をするとよいでしょう。


次に、「全ページゴール直行」です。
セルフサービスチャネルではお客様を説得できないため、全ページでわざわざ説明する必要はありません。弊社のサイトの例はこちらです。


受け皿ができたら、あとは「広告と記事SEO」で集客を開始します。

さらにリストが取れてきたら、メール等の通知で継続接触を図ります。


やはりメールのみでお客様をナーチャリングすることは難しいため、顧客のニーズを検知して営業をかけ、失注した場合は再度継続接触をはかるという流れを繰り返します。


簡単なことが実行できない理由は?

垣内氏:
リード獲得は簡単であるにもかかわらず実行できない理由は、営業の気持ちにより添えていないからです。


営業からすると、全てのマーケ施策が、昔から続けてきた仕事を邪魔するようにしか見えないのです。
その結果、獲得したリードが電話されず放置されてしまったり、マーケチームが自分たちだけでできる小さな改善に逃げてしまったりという問題が起こります。


「Quick Win」の考え方

垣内氏:
そこで、デジタルマーケティングを始める時に最初に考えるべきなのが、「Web経由で質の高い案件を1件でも営業に渡すこと」です。

弊社ではそれを「Quick Win」と呼んでおり、次の5つの必勝ステップで運用しています。

Quick Winができたら、次にリード拡張を行い、その後全社展開。さらにいくつかの事業部で成功してきたら、マーケの統括化という話が挙がってきます。


マーケターの役割の変化

垣内氏:
マーケターの役割は変わってきており、最初から「ザ・モデル」のような分業は難しいものです。最初はまず、マーケターが営業まで踏み込みながら、段階に合わせて役割を変えていく必要があります。


マーケティングDXに求められる力

垣内氏:
これらを踏まえ、弊社では「マーケティングDXは営業経験がないと推進できない」と考えています。
マーケティングのDXは「営業」と「社内調整」です。自分で営業するか、営業担当を動かすかのどちらかができれば、後は進めていけるはずです。

そのためには、次のようなメンバーがDXを推進すると、上手く回りやすくなります。


なお、デジタル業務は外注からスタートしても問題ありません。その代わりに、外注した施策が「売上につながっているか」を営業目線できちんと判断しましょう。
マーケティングは見込み顧客をとって終わりではなく、マーケとセールスが一体になっての「顧客の獲得」がミッションだという意識を持ちましょう。


第5部 まとめ

第5部では、株式会社WACULの垣内様に「BtoB企業のDXを推進するプロジェクト進行術 ~ 組織・人材別の考え方~」についてお話しいただきました。

BtoBでは、リードの「質」を落とすことでリードの「量」を増やすことができます。
WACUL様では「リードを増やすステップ」として、次の4つをあげられていました。

【CV障壁を下げる→全ページゴール直行→運用広告&SEO→リストニーズの検知】

しかしながら、営業の気持ちに寄り添った上でマーケ施策を打たなくては、リード獲得はうまくいきません。

これから社内でマーケティングDXを進めたいと考えているマーケターの方は、WACUL様のセッションを参考に「営業側の役割」に踏み込んで連携を進めていくことをおすすめします。


まとめ:「マーケティングDX」で抑えるべき4つの観点

今回は、「BtoB Marketing Summit 2021~マーケティングDX時代のBtoBマーケティングの取り組み方~」の内容をご紹介しました。


4つの観点を踏まえ、ぜひ皆さまも自社の状況を振り返りながら「マーケティングDX」に取り組んでみてください。

ferret Oneでは、引き続きみなさまのBtoBマーケティングの疑問にお答えしていきます。開催テーマも随時更新しているので、ご興味のある方はぜひ下記のセミナー情報をご覧ください。

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One Tip編集部
One Tip編集部
One Tipは、Webマーケティングツール「ferret One」から生まれた、「リード獲得の打ち手が見つかるメディア」です。 BtoBマーケティングにかかわる人にとって、価値あるコンテンツをお届けしていきます。 Twitter:@ferret_One_

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登録番号 IA180169 適用規格 ISO/IEC 27001:2013 / JIS Q 27001:2014