SaaSとは?基本知識とビジネスを成功に導く重要ポイント4選
便利なWebサービスを提供する「SaaS」ビジネス。新規参入を目指す企業も数多く存在します。
本記事では、SaaSビジネスに参入し成功させたいと考える方に向け、知っておきたいSaaSの基本知識を解説します。事業を推進する上での重要なポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
■合わせて読みたい資料:ビジネスの現場で使う頻度が高い47用語をまとめてご紹介
→これだけは覚えておきたい!SaaS×マーケティング用語集
SaaSとは? 基本知識をわかりやすく解説
SaaSとは
SaaS(Software as a Service)は「サース(サーズ)」と読み、ソフトウェアによるWebサービス全般を意味します。インターネット上でサービス提供を行うため、リモート環境下で運用・管理できるのが特徴。企業の規模に左右されず、ユーザビリティの高いサービスが選ばれやすいため、中小企業にも成功のチャンスがある市場だとも言えます。
SaaSビジネス市場に参入する企業は多く、市場規模は拡大傾向です。2021年の世界市場規模は1441億7000万ドル(日本円にして約18兆円)、2030年までに毎年18.83%ずつ成長すると予想されています※1。日本国内でも、SaaS市場は約13%の成長率を維持しており、2025年には2020年度実績の約2倍となる1兆5,000億円規模まで成長する見込みです※2。
※1 Saas(サービスとしてのソフトウェア)市場は2030年まで年平均成長率18.83%で成長すると予想される|PRTIMES
※2 『SaaS業界レポート2021』公開 - 国内SaaS市場は2025年1.5兆円規模へ【最新カオスマップ】|BOXIL
SaaSビジネスにおけるメリット・デメリット
SaaSビジネスのメリットとデメリットをご紹介します。
メリット① インターネットさえあればサービス提供できる
SaaSビジネスは、インターネット環境さえあれば顧客企業にサービスを提供できます。時間や場所の制約なしに提供できる点は、サービス提供側にとっての大きなメリットのひとつ。コロナ禍によるリモートの流れも後押しし、Web上で完結するSaaSはより注目されています。
クラウド上で管理するので、ネットを通じて機能アップデートをタイムリーに実装できる点もSaaSビジネスの強みです。
メリット② ソフトウェア管理が不要、ユーザーが導入しやすい
複雑なシステム構築が必要なサービスは、システムの知識がないユーザーには導入が困難です。その点、ボタンひとつで簡単に導入できるSaaSは、ユーザーにとって導入までのハードルが低く魅力的。導入のしやすさは特筆すべきSaaSのメリットと言えるでしょう。
いかに簡単に導入でき、いかに使い勝手がよいか。ユーザーにわかりやすく魅力的に伝えることが、サービスの成約率をアップするのにつながります。
メリット③ サブスクリプション型のモデル構築が可能
提供されるSaaSの多くが、サブスクリプション型のビジネスモデルで運用されています。サブスクリプションは、一定の料金でユーザーに継続利用を促進できるモデル。サービス提供側にとって大きなメリットとなります。
ユーザーを飽きさせない、魅力的なコンテンツや機能アップデートを定期的に実施し、より長く使ってもらえるかが、ビジネスの結果を左右します。
デメリット① 機能アップデートやコンテンツ提供が大変
SaaSはユーザーの継続率により、売上が大きく変動します。機能の追加・改善・向上や、ユーザー視点のコンテンツを常に生み出し続ける必要があるため、社内の提供体制を十分に整えなければなりません。
逆に、常にユーザー視点で、機能アップデートやコンテンツ提供が実現できると、競合に負けない強い地位を確立できます。
デメリット② 初期投資が大きくなりがち
ユーザーの継続利用により利益を拡大していくビジネスモデルであるため、導入当初から爆発的に売上が上がる訳ではありません。キャッシュアウトが大きくなる点は、SaaSビジネスのデメリットとして挙げられる内のひとつ。
初期投資したコストをいかに早期に回収するかを意識し、適切に収支管理する経営者の手腕が問われるでしょう。
SaaSとPaaS・IaaSとの違い
SaaSと似た用語として、「PaaS」「IaaS」というサービスも存在します。それぞれ以下のような違いがあります。
名称 |
SaaS |
PaaS |
IaaS |
Software as a Service |
Platform as a Service |
infrastructure as a Service |
|
提供するもの |
アプリやソフトウェアを提供する |
OSやプラットフォームを提供する |
ネットワークやサーバシステムを提供する |
価値 |
ユーザーが直接利用できる |
ソフトウェアを稼働させるシステム環境が構築できる |
インフラまわりを整える |
ユーザーが直接利用するアプリやソフトウェアを提供するSaaSに対し、アプリやソフトウェアが稼働するシステム環境を提供するのがPaaSやIaaSです。PaaSはOSやプラットフォーム、IaaSはネットワークやサーバシステムと、提供するものが違う点をおさえるとよいでしょう。
■合わせて読みたい資料:ビジネスの現場で使う頻度が高い47用語をまとめてご紹介
→これだけは覚えておきたい!SaaS×マーケティング用語集
SaaSビジネスの事例
kintone(サイボウズ)
サイボウズ社が提供している「kintone」は、会社内でのデータベース管理やコミュニケーション、情報連携を一括で対応するソフトウェアサービスです。職場の環境に合わせて機能をカスタマイズできるため、大企業から中小企業まで、さまざまな企業の悩みを解消します。リモートワークが常態化しても業務が機能するよう、必要な情報共有やコミュニケーションがオンラインで簡易に済むのも魅力です。
Sansan(Sansan)
顧客企業や営業・商談の情報を体系的にデータベース化した営業支援ツール「Sansan」。新規顧客の開拓から既存顧客のアップセル・クロスセル戦略設計、デジタルマーケティングの強化に至るまでを一貫してサポート。個人と組織の営業力向上に貢献します。業種を問わず8,000社以上の導入実績を誇るSaaSの代表的事例のひとつです。
ferret One(ベーシック)
弊社が提供しているBtoBマーケティングツール「ferret One」もSaaSのひとつ。サイト更新・メール配信・リード獲得の戦略設計まで、BtoBマーケティングで成果を出すための機能を、ひとつのツールにまるっとパッケージ化しています。サイトの見た目を維持したまま編集可能な管理画面で、初心者でも扱いやすい点も特徴です。
SaaSビジネスを成功に導く4つのポイント
現在も成長を続けているSaaSビジネス市場で結果を残すには、どの点に気をつければよいのでしょうか。
ビジネスを軌道に乗せるために、どのような点に気を付けて運用するとよいか、4つのポイントに絞ってご紹介します。
①ユーザーの「継続利用」と「母数」を重視する
SaaSビジネスは、ソフトウェアの契約期間中、継続して利益が発生するモデルです。収益を伸ばしていくためには、ユーザーに「長く」使ってもらうこと、また「たくさんの」ユーザーに利用してもらうことが重要になります。SaaSビジネスを成功させるには、ユーザーの「継続利用」と「母数」を常に重視し、ターゲットとなる顧客企業へアプローチする必要があります。
ユーザーの継続利用促進で重視されるのが「カスタマーサクセス」です。カスタマーサクセスとは、自社からユーザーにアプローチし、価値ある体験を提供すること。
ユーザーの視点に立ち、自社サービスの利用価値をどう高めるか、検討しアプローチしていく必要があると言えるでしょう。企業によっては、アンケートによるユーザーの声を施策に活用するケースもあります。
継続率を促進するのに加えて、新規のサービス利用者数を増やすために、サービス自体の認知向上や広告による獲得施策も並行して実施することが求められます。やみくもに獲得しようとせず、ターゲットのペルソナ設定を明確にし、より長期に利用してくれそうなユーザーに響く訴求を実施することがポイントです。
関連記事:BtoBマーケティングのペルソナ設定で、押さえるべきポイントとは
②ユーザー自身がコンテンツをどう使うかを意識する
SaaSはビジネスモデル上、ユーザーがサービスをどのように利用しているかを把握し、高い価値を感じるように改善していくことで、継続利用を促進できます。例えば、オフィス内で使える掲示板機能をSaaSで提供するのであれば、実際にユーザーが掲示板に投稿するイメージを持ち、投稿画面の利便性や表示内容の見え方を検討することがポイントになります。
あらゆる事業において、顧客視点の重要性が語られています。SaaSビジネスにおいても同様です。ユーザーの継続利用が売上に直結するSaaSビジネスは、より厳しく顧客視点の姿勢を追求し、サービスを改善していくことが大切だと言えるでしょう。
マーケティングの戦略に「UGC」の視点を活用するのもオススメです。UGCとは、一般のユーザーによってつくられたコンテンツのこと。具体的には、掲示板やレビューサイトでの口コミ、SNSでの投稿が該当します。UGCによる戦略設計が、強固な顧客視点のサービス提供につながります。
③投資したコストを早期に回収する
すべてのビジネスモデルにおいて共通しますが、費用対効果を重視し、投資したコストを早期に回収することは事業運営で必須です。どのくらいのコストで、どのくらいの成果が出せたかを数値で見極め、適切に次の打ち手を判断することが求められます。
一般的に、スタートアップ企業の投資回収目安として、理想的には3ヶ月、遅くとも半年回収を目指して事業設計していくべきと言われています。早期にコストを回収し、利益を増大させましょう。
SaaSビジネスにおける収支把握の考え方として有名なのが、「Payback Period」です。Payback Periodは、顧客企業 1件を獲得するのにかかった単価(CAC)と、月次の収益(MRR)を用いて算出される、投資回収期間のこと。どのくらいの期間で初期投資が回収できる見込みなのかを知り、事業の健全性を図るのに役立ちます。
ユーザーひとりあたりの採算性を示す「Unit Economics」という指標も存在します。ユーザー単位での収益を指標におき、顧客獲得に費やしたコストをいつごろ回収できる見込みなのかを把握できる指標です。SaaSビジネスを推進する上で、投資回収に関する指標を適切に設定し、コストを利益に変換することが求められます。
④現時点での確約された収益を見極める
SaaSビジネスは、一度買ってもらったら終わりになる売り切り型ではありません。ユーザーの契約期間中、定期的に収益が発生するビジネスモデルです。逆に、ユーザーがサービスを解約したり、グレードを下げたりすると、定期的な収益が減退します。
ユーザーの契約状況の変動を注視し、現時点でどの程度の収益が確約されているのか、正確に把握しておくとよいでしょう。収支の実情に対しどの施策を講じていくべきなのか、判断・実行のスピードもその後の結果を左右します。
SaaSビジネス用語として頻出するのが「MRR」。Monthly Recurring Revenueの略で、「月次経常収益」や「月間定期収益」の意味です。平たく言えば”毎月の売り上げ”を示す指標で、新規に獲得した顧客のMRR、サービスをアップグレードないしダウングレードした分のMRRなど、いくつか種類があります。
MRRを用いて算出されるのが「Quick Ratio」。一定期間の内に得られるMRRと失うMRRとの比率を示す指標です。Quick Ratioを把握することで、顧客の数だけでなく顧客の契約状況が収益に与える影響値をいちはやくキャッチできるので、SaaSビジネスを運用する上で重要な指標だとされています。
SaaSの独特な専門用語を学ぶには?
SaaSビジネスで用いる専門用語は、ビジネスモデルの違いから、通常のBtoBマーケティングで耳なじみがない用語も多くあります。
独特な言い回しが多いSaaSの専門用語をいち早く使いこなせるよう、ビジネスの現場でよく使う47つに絞り、「用語集」としてリリースしました。勉強用にぜひご活用ください。
SaaSのポイントをマスターしよう
市場規模を拡大しているSaaSビジネスでは、ビジネスモデルや顧客心理の深い理解が成功の秘訣です。SaaSの基本事項や運用ポイントをおさえ、事業で結果を出せるよう、第一歩を踏み出しましょう。
SaaSビジネスにおける必須47用語をまとめて解説した、「SaaS×マーケティング用語集」もございます。合わせてご覧ください。
弊社「ferret」はBtoBマーケティングを総合的にサポート。マーケティングツールやコンサル・代行支援など、幅広いサービスの中から貴社に最適な解決策を柔軟にご提案します。
CMSやMAなどのツール、戦略設計、Webサイト制作、コンテンツ制作など、BtoBマーケティングにお困りごとがある方はぜひ資料をご覧ください。