顧客を知るにはセールスに聞け! イベント「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方 2021年3月18日回」開催レポート
これから新たにWebマーケティングに取り組むBtoB企業の担当者の皆さまへ、事業の最前線で活躍するマーケターの体験談を通して、知見と実践ノウハウを共有するのがイベント「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」です。
2021年3月18日回では「成果が飛躍的に伸びたターニングポイントは『お客様の解像度』」と題して、9ヶ月でリード獲得数を6倍に成長させた株式会社LIFULLの柳沼寿茂氏をゲストに招きました。
柳沼氏の言う「お客様の解像度」とは「顧客が抱える課題をどれだけ明確に把握できているか」のこと。解像度を上げる方法やポイントについてお話しいただきました。
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登壇者紹介
株式会社LIFULL
LIFULL HOME'S事業本部 カスタマーソリューション部
アカウントマーケティングユニット
企画2グループ グループ長
柳沼 寿茂(やぎぬま ひさしげ)氏2008年に同社入社。デザイナー職を経て企画職へ転身。旧注文住宅ユニットでBtoBマーケティング全般を担当し、工務店向けオウンドメディア「LIFULL HOME'S Business 注文・分譲一戸建て(旧:LIFULL HOME’S 注文住宅 Business)」を立ち上げる。顧客にAmazingな情報を提供すべくサービス開発・集客に奔走中。
KPIを「どう達成するか」の前に「どう設定するか」
柳沼氏:
弊社は「LIFULL HOME'S Business 注文・分譲一戸建て」という工務店・ハウスメーカー向けサイトを運営しており、私が担当しているのはtoBのサイトです。
このサイトは元々、工務店向けの外部サービスを掲載することで、工務店から掲載料をいただくのをメインの目的として運営していたサイトでした。当時はサイトの「PV」をKPIとしていました。
しかし、その後の社内体制の変更により、以前の「サービス掲載料で直接利益を得るサイト」から、「工務店やビルダーからの認知や興味・関心を得て、掲載可能性がある潜在層を獲得するサイト」に大きく位置付けを変えることとなったのです。
この役割変化に合わせて、KPIもPVから「ウェビナー参加申し込み数」と「ホワイトペーパー(WP)ダウンロード数」を合わせた「リード獲得数」に変更しました。
今思えば、この変更がサービスを大きく成長させた転換点でした。KPIをどう達成するかの前に、KPIの設定自体もサービスの成長に大きく影響することを思い知りました。
リード獲得に重要なのは顧客の課題を深く知ること
柳沼氏:
KPIを「リード獲得数」としたのに伴い、達成のための行動方針も決定しました。リード獲得のポイントは「顧客にとって価値ある情報を、しっかり届く手段で提供すること」だと我々は考えました。
どんな情報が顧客にとって価値のある情報なのかを見極めるには、顧客が抱えている課題を明らかにする必要があります。このプロセスがすなわち、本セッションのタイトルにもある「顧客の解像度を上げる」という作業です。
たとえば、顧客が「集客した後、成約が伸びない」という課題を抱えているのに「施工管理をしっかりしよう」とアプローチしても刺さるはずがありませんよね。顧客の課題を把握し、それを解決できるウェビナーやWPを用意しなくてはなりません。
合わせて、情報をしっかり届けるための手段も用意する必要があります。以前はSEO中心に集客をしていましたが、効果が出るまでに時間がかかりますし、SEOだけでは限界があります。リスティング広告やメールマーケティングなど、その他のプロモーション方法も検討しました。
顧客の解像度を上げるには営業へのヒアリングが有効
それでは、顧客の解像度を上げるにはどうすればよいのでしょうか。
我々が行ったのは、顧客に対する知見の高い人へのヒアリングです。たとえば、普段から顧客と接する機会が多いフィールドセールスのメンバーに、顧客がどんなことに困っていたかを聞けば、課題特定の糸口になります。
弊社は比較的他部署との連携が取れており、気軽に相談できる協力体制があります。チャットツールを導入しているので、時間を合わせて直接話さなくても相談できるのも良い環境です。
マーケから営業にヒアリング時のポイントは以下の3つです。
下記の例は、実際にあった課題特定の会話例です。SNSを集客ツールとして使い始める顧客が多いという話から会話を続け、実はSNSの運用に課題を抱えていることを特定しました。
A「今度、工務店向けにウェビナーするんだけど、そもそも彼らにはどんな課題があるんだろう?」
B「集客がうまくいってないっていう話は聞いてるけど、最近はSNSを集客ツールとして使い始めている会社が多いみたいよ」
A「能動的に新しいことに取り組むのは素晴らしいね。SNS活用してどうなったんだろう?」
B「アカウントは開設しても、その後の運用が上手くいっていないみたいね」
このようにして課題が明らかになったら、それを解決できるようなウェビナー企画やWPを作成すればよいのです。上記の例ならば「SNS運用を継続するコツ」「SNS運用の成功事例」などがそれにあたります。
顧客の解像度を上げたことで、リード獲得数が6倍に成長!
柳沼氏:
2020年4月~12月の期間で、サイトからのリード獲得数は約6倍に成長しました。これは我々の中でも驚愕の成果です。
最も大きな要因は、今回ご紹介した「顧客の解像度の向上」でしたが、以下のような要因も少なからず関係していると思います。
・SEOだけでなくメールマーケティングも行った
・セミナーからウェビナーになったことでエリアの縛りがなくなった
・課題を解決できるコンテンツを配信し続けることで、次回作への期待が高まった
事業のスピードを最優先にしていると、顧客の課題調査はおろそかになりがちです。しかし最初に時間をとって調査しておくと、成功要因がしっかり見えるのでおすすめです。
もしリード獲得や課題調査でお悩みなら、今回紹介したのと全く同じ手法を取れない場合でも、最低限、業界紙やニュースから対象顧客像を明確にすることは必要だと思います。
次の課題も見えてきているので、弊社も引き続き尽力してまいります。
質疑応答
イベントでは、Q&A機能を利用して、視聴者からの質問をリアルタイムで受け付けています。柳沼氏に寄せられた質問の中から、一部を抜粋して回答と共にご紹介します。
Q. どのくらいのペースでWPを作成している?
柳沼氏:
変動はありますが、平均すると月1本のペースです。課題がないのに無理に作るよりは、課題をしっかり特定してから作ることを心がけています。
Q. 今後のウェビナーやWPのテーマは、どのようなものを考えている?
柳沼氏:
工務店は、広告で使用する写真などのクオリティに課題があります。これがより魅力的になれば、施主からの問い合わせも増えるはずです。たとえば新築分譲の業者のサイトならば、プロの写真家が入って非常にきれいな画像やパースを用意しています。そこまでコストがかけられなくてもクオリティを上げられるよう、写真の撮り方や魅力的な見せ方をテーマにしたいと考えています。
Q. オフライン志向のユーザーへの対応はどのようにしている?
柳沼氏:
Web上ではなくリアルでしっかり刈り取り型の営業をしていく、というのが今の回答になってしまいます。ただ、そういう方たちも徐々にデジタルシフトはしてきているので、できる限りしっかり届けるようにできればと考えています。
Q. ニーズが低迷していたときはありますか?あればそのときにどのような施策をしていましたか?
柳沼氏:
SEOだけで集客をしていたときは、伸び悩んだ時期がありました。そのときは「次はどういうコンテンツを用意すれば期待にこたえられるか」を考えて、WPの準備などをしていました。活動を続けつつ、新しいコンテンツの作成に注力するのがよいと思います。
Q. BtoBは購買プロセスに複数の人が関わり、それぞれが異なる課題を抱えている。どこかにフォーカスして解像度を上げるべき? それとも、幅広く個別にコンテンツを用意するべき?
柳沼氏:
弊社のビジネスのペルソナとして、現場の部長くらいを設定しているので、彼らにフォーカスして解像度を上げています。ただ、課題の種類によってはアプローチ対象が、ペルソナとは異なる場合もあります。たとえば「広告写真のクオリティに課題がある」場合、コンテンツを届ける対象は広告担当者です。ペルソナにフォーカスして解像度を上げ、且つ届けるべき対象へ向けて個別にコンテンツを展開している、というところです。
セールスとの連携はマーケにとって必須事項
セールスと連携して顧客の課題をしっかり把握することで、柳沼氏はリード獲得数6倍という驚くべき成果をあげることができました。ヒアリングのポイントは非常に参考になります。
セールスとの連携は、リード獲得だけではなくアポイントや商談時、さらには成約後まで、マーケティング活動全般でとても重要です。日頃から相談しやすい環境や関係性を整えておくと、さまざまな場面で役立つのではないでしょうか。
イベント「デジタル化時代のマーケ組織の立ち上げ方」では、今後もマーケターの具体的なマーケ施策の経緯をお伝えしていきます。マーケ組織を立ち上げようとしている方、立ち上げたばかりの方はぜひ参加してみてください!
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