広報について知りたい!【前編】ー 広報ってどんな仕事?マーケターが知らない広報の実態
多くのマーケティング担当にとって、近くて遠い存在と言えば広報担当かもしれません。もちろん、広報と足並みを揃えたマーケティングを行っている企業もありますが、近しい職種にもかかわらずマーケと広報の交流がない企業は多いものです。
そこで、今回は、「ferret One」を運営する株式会社ベーシックの広報担当に話を聞いてみました。
ぶっちゃけ、広報って何してるの? 広報に必要な資質って? などなど、赤裸々なトークをお届けします。
話を聞いたのはこの人!
奧田陽子(おくだようこ)
株式会社ベーシック 社長室 広報グループ
2018年、新卒で株式会社ベーシックに入社。「ferret One」のインサイドセールスに配属された後、入社1年目にして広報担当に抜擢される。現在は、社外・社内広報を一手に担う。マーケティング部との共闘体制を構築中。
そもそも、広報ってどんな仕事?
─営業やカスタマーサポート等と比べて、広報は何をしているのか実態が見えにくい職種だと思いますが、どんなお仕事なんですか?
広報はPRとも呼ばれますが、これは「Public Relations」の略。つまり、広く社会に向けて関係を構築していくのが仕事です。「メディアを通じて認知を得ることで企業価値を最大化する」という使命を負っています。
広告と混同されることもありますが、私は、「広告=枠を買って、伝えたいメッセージを自由に伝える手段」、「広報・PR=メディアという第三者の視点を通じて、メッセージを伝えてもらう手段」だと考えています。
広告 | 広報(PR) |
有料 | 無料 |
広告主(企業)が原稿を書く | 媒体の記者・編集者が原稿を書く |
主観的 | 客観的 |
広告主(企業)がコントロールできる | 企業はコントロールできない |
と言っても、広報と広告は、どちらも大切なマーケティングコミュニケーションの一環であることに変わりありません。
それぞれのメッセージに矛盾があってはいけないので、現在、私が広報として取り組んでいる課題のひとつが、「広報担当とマーケティング担当の共闘」です。こちらについては長くなるので、マーケ担当も含めた場で別途お話ししますね。
話を広報の仕事内容に戻すと、広報・PRの仕事は、大きく次の2つに分けられます。
- 各メディアを通じて企業情報を発信する「社外広報」
- 社員に情報を共有して行動を促す「社内広報」
私が関わっているのは、主に社外広報です。
社外広報のメイン業務は、「企業としての情報発信」、「メディアの取材対応」、「危機管理対応」の3つですが、実は会社や担当者によって広報の仕事内容は全然違うんです。
─そうなんですか? 例えば、どんな感じなんでしょう?
大手企業になると広報部に複数名所属しているので、役割分担されていることが多いんです。例えば
- 企業(コーポレート)担当
- 事業(プロダクト)担当
といった具合に。その場合、プロダクト担当が発信するプレスリリースは、新商品の案内など、直接事業に関する内容のみになります。
実際に知り合うことが多いのは、弊社と同じような100~300名規模のベンチャー企業の広報担当者なので、私のまわりは広報業務全般をひとりで担っている方ばかりですけど。
・メディアを通じて認知を得ることで、企業価値を最大化する
・マーケティングコミュニケーションのひとつ
・会社や担当者によって広報の仕事内容は全く異なる
─奧田さんは、具体的にどんな仕事をしているんですか?
主に社外広報として、採用およびコーポレートとプロダクトの広報を担当しています。プレスリリースの作成とメディアの取材対応がメイン業務です。
私が今課されている目標は、狙った意図通りの月間掲載数を増やして行くこと。そのためには、プレスリリースのネタ作りが欠かせません。広報担当は情報を発信することはできますが、情報を作り出す部署ではないので、社内との連携は必須。日々、社内の各部署の動きを見ながら、プレスリリースのネタを考えています。
(▼今年に入ってからの、ferret Oneについてのプレスリリース)
また、大きな課題になっているのが、各媒体の記者さんとの関係作りです。記者さんが取り上げたいと思っている話題は、読者の皆さんにとっても関心がある話題。記者さんの興味関心に合わせたネタをタイムリーに提供するためには、気軽にコミュニケーションを取れる関係構築が欠かせません。
そこで、記者の方との交流会には積極的に出席します。その場でどんな良いネタを提供できるかによって掲載数が左右されるので、交流会の前には数時間かけてネタを考えます。
・社内の各部署と連携して、発信できる情報を探しだす
・記者さんが取り上げたいと思うネタを、タイムリーに提供する
・そのために、日ごろから社内の各部署、社外の記者さんとの関係作りは欠かせない
新卒入社1年目広報が誕生した事情とは?
─新卒入社1年目で広報に抜擢されたということですが、元々はどんな仕事をしていたんですか?
2018年4月に入社して、「ferret One」のインサイドセールスに配属されました。弊社が掲げる「問題解決」というキーワードに惹かれて入社したので、お客様の問題解決に当たれる仕事はやりがいがありました。
─広報へ異動したのはいつですか? 戸惑いませんでしたか?
広報への異動の話をもらったのは、入社して半年後の10月です。チャンスをもらって嬉しい反面、まだまだインサイドセールスとして未熟だという自覚があったので、当初は、「営業でしっかり結果を出してから、次のフェーズに行きたい」という気持ちもありました。
でも、その一方で、「自分で価値を生み出すこと」に憧れてもいたんです。広報は、まさに0を1にする仕事。目の前にチャンスが巡ってきたのに、ここで跳び込まなかったら永遠にやらないと思いました。異動の2週間前に告知されたんですが、もらった機会は最大限に使おうと早々に覚悟を決めました。
─2週間で異動とは、急な話だったんですね。
前任の広報担当の退職が決まったタイミングだったようです。
異動後は、直属の上司となったベテラン広報担当の下で4ヶ月間、引継ぎを兼ねたOJTを受けました。今思えば、目指すべき広報の姿を間近で見ることができたのは、とても幸運でした。
「広報の仕事は、企業価値を最大化すること」と教えてもらったのも、その上司からです。ひとり広報となった今も、あの4ヶ月間のOJTが広報としての基盤になっています。
─独り立ちした今、広報として心がけていることはありますか? できれば、具体的に教えてください。
もっとネタを考えられるように日頃からトレーニングしています。広報はプレスリリースを含めて、常にネタを探しているような仕事なので、ネタが考えられるかどうかはとても重要なんです。
以前の上司がネタ興しモンスターなんじゃないかというくらい、どんどんネタを考えられる人だったので、「どうして、そんなに次々とネタを考えられるんですか?」と聞いたところ、「他社のニュースをチェックするときは常に、うちの会社やプロダクトだったらどういう切り口で展開できるかを考えている」と教えてくれました。
それ以来ニュースをチェックするときは、うちの会社やプロダクトに置き換えた場合どう魅せるかを考えながらインプットしています。
また、記者さんとの人間関係の構築も重要課題のひとつ。新米広報の場合、記者さんのアポイントを取るのにも一苦労します。そこでまずは、媒体カラーや記者さんの興味に合わせた情報提供ができるように、ネタの数だけではなくネタの質も追求するように心がけています。
─広報として独り立ちして数ヶ月が経ちましたが、どうですか?
独り立ちする少し前の話になりますが、「これからは、全部ひとりでやらないといけないんだ」と気づいたところから、情報収集の姿勢が変わりました。「どんな切り口だと関心を持ってもらえるんだろう?」、「競合他社はこんな打ち出し方をしているのか」など、必死に読むようになりましたね。
でも、そうやって必死で読んでいると、「情報収集ひとつとっても自分の経験になっている」という手応えを感じるので、インプットを続けて広報としての引き出しを増やして行きたいです。
─最初に配属されたインサイドセールスのときの経験で、広報担当になってから役立ったことはありますか?
お客様とコミュニケーションを取るという意味では、営業も広報も同じ。営業が電話やメールを使ってお客様に連絡する代わりに、広報はメディアを介してお客様や世間に発信します。
自社に対してお客様が何を求めるのかを知っておくことは、広報にとっても大切なことなので、営業としてお客様の声に直に触れられたのは良い経験になりました。
・企業価値を最大化するためのネタを、常に探す
・媒体や記者さんの興味に合わせた情報提供ができるように、ネタの質も追求する
広報担当者に必要な資質とは?
─インサイドセールスから広報への異動は珍しいと思いますが、奥田さんのどんなところが「広報向き」だと評価されたんでしょうか?
当時、私が広報に異動になった理由として聞いたのは、次の4つでした。
- エネルギーがある
- 好奇心旺盛
- 冷静な視点を持っている
- 敵を作らない
─最後の「敵を作らない」って、なかなか難しいですよね。何か気を付けていることはあるんですか?
これについては、学生時代に敵を作りまくった黒歴史がやっと役に立ったと言いますか…。
以前は白黒つけたがる性格で、他人に対して凄く厳しかったんです。95%の完成度でもダメで、5%の妥協もできずに切り捨ててしまっていました。
でも、そんな風だとどんどん人が離れていきますよね。味方が誰もいないような状況になって、そこで初めて学んだんです。人にはそれぞれ役割があるから、共闘できるようにならないといけないなと。
昔は95%あってもそれを無にしてしまっていましたが、今は最初の5%があるだけでも、次の10%、20%に繋げていけるので、ありがたいなと思います。
自分は何者でもなく、ひとりでは何もできないという自覚があるから、関わってくれる人みんなをリスペクトしています。その気持ちが相手に伝わるから、敵を作りにくいのかもしれません。
─自分自身で広報に向いているなと思うポイントがあれば、教えてください。
自社への愛が強い割に物事を冷静に見られるタイプ、というところでしょうか。
会社や商品への愛があるかどうかは、大切なポイントだと思っています。私は、会社のことも商品のことも好きで価値があると思っているから、絶対に伝えたい。それがブレないから、広報を続けていられるんだと思います。
会社や商品を好きじゃなかったら、広報という仕事が好きでも、きっとどこかで、「あれ? 私は何をしているんだろう?」と思う気がします。
奧田さん、ありがとうございました!
後編では、「マーケと広報の共闘」というテーマで、マーケティング部門責任者と広報担当者が対談します。後編もお見逃しなく!
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